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2018年04月02日 10時13分 JST | 更新 2018年04月02日 10時13分 JST

自民党大会など

華やかさの中にも、少し釈然としない思いの残る党大会でした。

Bloomberg via Getty Images

 石破 茂 です。

 

 25日日曜日に開催された自民党大会は、冒頭の平昌五輪メダリストのスピーチに始まり、最後は谷村新司氏の「昴」「群青」「いい日旅立ち」の熱唱で終わる、エンターテインメント性を重視したものでした。

 それはそれなりに面白くて、何十回も観た映画「連合艦隊」(昭和56年・東宝)の主題曲「群青」を生で聴けた感激は大きかったですし、大型スクリーンに映る全国47都道府県の美しい映像をバックにした「いい日旅立ち」には思わず涙しそうになりました。関係各位はさぞ知恵を絞ったことと思います。

 憲法改正に関する総裁の演説は、その必要性について「彼ら(自衛官)は国民を守るためにその命をかける。しかし、残念ながらいまだに多くの憲法学者は彼らを憲法違反だという。違憲論争が今でもあります。結果、ほとんどの教科書にはその記述があり、自衛官の子供たちもこの教科書で学ばねばならない...自衛隊を憲法に明記し、この状況に終止符を打ち、違憲論争に終止符を打とうではありませんか。これこそが私たち、今を生きる政治家の、そして自民党の責務であります」と述べるのみで、昨年5月3日の憲法記念日、民間団体の集会に寄せられたビデオメッセージの内容とほぼ同じものでした。  

 多くの憲法学者が違憲論を述べていることも、教科書にその記述があることも事実です。しかしそれのみが今回第9条を改正する理由なのだ、というのにはどうにも納得がいきません。第2項との整合性にも、激変する我が国の安全保障環境に対応するために抑止力を高めるという点にも何ら言及がなく、一年近くにわたる自民党内の議論は一体何だったのかと思わずにはいられませんでした。

 かつて小泉政権下の自民党幹事長当時、安倍先生は集団的自衛権も交戦権も憲法上容認する立場を鮮明にしておられましたし、自民党の24年改正草案は概ねその趣旨に沿ったものだったのですが、それがなぜ今のような見解に変わられたのか。

 もし「公明党に賛成してもらえない」というのがその理由なら、緊急事態条項や合区解消の自民党憲法改正案についてはどうなのでしょう。

 誠に畏れ多いことながら、今上陛下のご退位について、国会で自民党が主導して特例法が成立したことに関しても、何ら言及がなかったのも私にとっては残念なことでした。

 今上陛下のご退位と新天皇陛下のご即位は確かに来年ですが、明治大帝以来初となる生前ご退位について、日本の伝統を尊ぶ保守政党である自民党の大会で一言触れて頂きたかったと思いました。「皇室の政治利用」との批判が出ることに配慮したのかもしれませんが、それとは全く別の問題だと思うからです。

 華やかさの中にも、少し釈然としない思いの残る党大会でした。

 佐川前理財局長の証人尋問も、当初の予想通り「本件に関しては現在捜査中であり、刑事訴追の恐れがあるので答弁を差し控える」の連発で、何ら新しい事実は明らかになりませんでした。

 「何人も自己に不利益な供述を強要されない」との憲法第38条の趣旨は、真実の解明よりも基本的人権を重んじた規定であり、これを援用した佐川氏の答弁に非はありません。そもそも裁判でもない国会における証人尋問とはそのようなものであり、初めから過大な期待を抱くべきものではなかったと思います。

 法的にはそれでよいとして、多くの人々の納得感が得られなかったのもまた事実であったと思います。政治において最も必要な「国民の納得と共感」はかえって遠のいてしまったようにも思われ、国会において新たな機関の創設(原発事故にかかる国会事故調類似のものでしょうか)も一部で提唱されていますが、これも含めて立法、司法、行政の各面で真実の究明が急がれます。

 「8億円の値引きの根拠は何か」「国有財産売り払いの事案の中で本件のみ国が瑕疵担保責任を負わないこととされたのは何故か」「公文書改竄の違法性とは何か」等々、本質的なことが何一つ明らかにならないまま、政治ショー的な興味にのみ堕すことは厳に避けなくてはなりません。

 金正恩委員長と習近平国家主席の会談の本質は、金委員長が「南朝鮮と米国が善意を以て我々の努力に応じ、平和実現のために『段階的で同時並行的な措置』をとるならば、非核化問題は解決に至ることが可能になる」と述べ、習主席が「我々は朝鮮半島の非核化実現という目標を堅持する」と応じたことにあると考えるべきです。

 「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」なのであって、当然そこでは在韓米軍の核保有・核持ち込みも対象となり、これが「段階的・同時並行的」に措置されるとはどういうことなのか。あらゆるケースを想定して対応しなくてはなりません。

 

 かねてから申し上げている通り、中国をバックとした北朝鮮と米国との間で行われる様々なディールの内容如何では、日本を取り巻く安全保障環境が激変し、さらなる米国への依存が高まることも十分に予想されます。

 トランプ大統領は22日、日本もその対象国となる鉄鋼とアルミの輸入制限・高関税化の発動に署名する際、「I'll talk to Prime Minister Abe of Japan and others, great guy, friend of mine, and there will be a little smile on their face and the smile is: 'I can't believe we've been able to take advantage of the United States for so long.' So those days are over.」(日本の安倍首相や他のリーダーたちに話をするよ、いいやつで、私の友達だけど、いつも彼らの顔には小さな笑みが浮かんでいて、それは「アメリカにこんなに長い間つけこめるなんて信じられない」っていう意味で、そんな日々はもう終わりだと。)と述べましたが、これこそが同大統領の真骨頂なのかもしれません。

 トランプ氏を知るある経済人が「彼は相手を不安にさせて不安定な心理状況に置き、それを最大限に利用して最も有利な取引を行う『サスペンスとディールの大統領』になるであろう」と予言していたことを思い出しました。

 コメント欄を拝見していると、ネット上に流布している様々な情報に影響されたものが多く見られます。同欄にも指摘のあるとおり、出来れば元の情報にあたっていただきたいものですが、望むべくもありません。情報戦とはそんなものと知りつつも、嘆息を禁じえません。

 伝聞情報やためにする情報に惑わされることの無いよう、自重自戒したいと思っております。

 週末は、4月1日日曜日が鳥取市中核市移行記念式典(午前10時・鳥取市民会館)、円形劇場くらよしフィギュアミュージアム開館式(午後1時・同館)、ふるさとふれあい芸能祭り(午後2時半・倉吉未来中心)、自民党三朝支部総会・懇親会(午後3時・プランナールみささ)という日程です。

 もう4月、皆様の地域の桜の開花状況はいかがでしょうか?どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。

(2018年3月30日石破茂ブログより転載)