仕事でも私生活でも、ときに自慢したい成果を上げることがあります。
大変なプロジェクトを仕切った、仕事で大きな利益をもたらした、大会やコンテストで優勝した...。しかし同時に、こうした過去の業績を語ることを何処か憚るような風潮があるのも事実。人はこうした実績のことを「過去の栄光」と呼ぶのです。
過去の栄光は過去のこと。
ひっそり心の中にしまって無言実行を果たすのがカッコイイ。
ちょっと待ってください。過去の栄光はそんなに悪者じゃないと思うんです。
■「過去の栄光」とはアイデンティティである
どんな分野であろうと、認めてもらうレベルの事を成し遂げるのは大変。それは人に容易に真似できないという意味で、才能といえると思うのです。驚異的な集中力もエネルギーの瞬発力も、あなただからこそ発揮できたのではないでしょうか?
これって、アイデンティティーだと言えると思うんです。
※この中で「自己同一性」が記事での意味合い
たとえば「出身地」なんかもアイデンティティです。不意に同じ郷土で盛り上がり、仕事に繋がった話はいくらでも聞こえてきます。他にも日本人とか、○○中学校の出身とか、この辺は「帰属意識」に基づいたアイデンティティですね。
過去の栄光と帰属意識とは少々ズレますが、以下の記事に挙げられている「自分の歴史そのもの」に通じますね。
※『アイデンティティは「自分の歴史そのもの」、個性はその一側面』という鋭い洞察です。
つまり、広い括りのアイデンティティの中に「出身中学校」も「過去の栄光」も含まれていると思うんです。
■アイデンティティとして利用しよう
アイデンティティは利用できます。先の例にも挙げた「帰属意識」も、アイデンティティを活用できた例です。同じように過去の栄光も利用できるんですよ。
たとえば「元全日本大会チャンピオン!!」という実績があるとします。そしてこれはアイデンティティです。このタイトルからは「スゴイ人」「(該当種目において)人より優れている」みたいな印象が生まれます。更に、これがそのまま本人の評価に繋がる。
ここから「○○の日本一なら、こんな仕事ができるかも?」「この人と◯◯を一緒にやってみたい!」と言った話に繋がるチャンスが増えます。
上手に利用すれば、過去の栄光はチャンスを呼び込む大切な種なのです。
■「利用する」と「思い出に浸る」の違い
たとえば「23歳以上、教員免許保有者募集」と言う仕事があったとしましょう。もちろん17歳だと募集できない。教員免許を持たない人も応募資格がない。
これと過去の栄光は似ています。
世界チャンピオンが当時の話をするのと、誰とも知らないイチ経験者が話をするのでは意味が違いますよね。50歳の会社員経験者の経営者と、何の経験も無い23歳の若人が同じことを言っても、説得力に大きな違いがあります。
つまり「あなたという人が「言う」「やる」ことに意味がある」という状況において、過去の栄光は大きな利用価値があるのです。
★★
一方、過去の栄光を永遠と語る人って居ますよね?この人は残念ながら過去の栄光を利用できていません。彼は単に思い出に浸り、すがっているだけです。
大抵の場合「過去の栄光」は苦労の末に成し遂げたこと。当時の苦悩や思いを誰かに発射することで、当時の達成感や躍動感、目標に向かって突っ走っていた自身を再投影して満足しているに過ぎません。
活用とは未来に向けて利用すること。思い出にひたるのは「あの頃は良かった」「当時の自分は素晴らしかった」と、過去を追体験して自己満足しているだけです。
■使い惜しみするのは勿体ない!!
過去の栄光は「思い出にひたる」「自慢」といったイメージが先行しています。すると立派な実績であっても口に出すのを憚る風潮になっていく。でもそんな圧力に負けていては勿体ない!!
過去の栄光は実績です。アイデンティティです。自分のオリジナリティです。
せっかく苦労して築き上げたアイデンティティ。これらを過去の栄光だからとマイナスに捉えず、今の仕事や生活に活用してみてはどうでしょうか?
その一歩が、新たなチャンスを運んでくるかもしれません。
(2015年1月31日「なわとび1本で何でもできるのだ」より転載)