24時間都バス 来月終了 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
東京都が昨年末から渋谷―六本木区間で試験運行していた
「都バスの深夜運行(24時間営業)」の、予定よりも前倒しした
早期打ち切りが決定し、ニュースメディアをそれなりに賑わしております。
舛添都知事が就任直後からネガティブな見解を示しており、
「やっぱりね...」という感じではあったのですが、担当局から
打ち切りに至るまでの経過をヒアリングいたしました。
利用者の減少は、グラフを見ると明らかではありますね。
東京都の早期断念の理由は以下のようなところです。
・乗客数が採算ラインに乗らなかった(平均240名乗らないと赤字)
・他の民間交通機関の連動を期待したが、そうした動きがなかった
・近隣の企業へのアンケートでも、ポジティブな回答が少なかった
・利用者が結局、運行路線付近の近隣住民ばかりだった
・経済波及効果も観測できなかった
一見するともっともなことではありますが、
いくつか突っ込みどころはあります。
まず、独自予算と正確な採算ラインを設定していなかったことから、
この試運転はそもそも赤字覚悟で予定されていたと思われます。
路線バスというのはピストン輸送では効果が薄く、
回遊する「路線」にしなければ利用者が増えないのは仕方がないことです。
近隣住民しか利用しなくなるのは当然といえます。
「他の交通機関が連動しなかった」というのも当たり前の話で、
『試運転』と言い切っている施策に合わせてダイヤ改正する民間会社なんてありません。
ダイヤ変更には、手間もお金も相当かかりますからね。
経済波及効果というのについても、定量的なデータを持っていないようですし、
毎週金曜日のみ×9ヶ月間で経済波及効果を測定するというのは、
ちょっと難しいのではないでしょうか。
■
身もフタもない話ですが、この深夜バスの計画は
猪瀬さんが知事ならまだ確実に継続していただろうし、
舛添知事になったから早々に打ち切られたと言えそうです。
「これ以上の赤字を拡大させないため...」
とのコメントもありましたが、現時点での赤字累計は240万円で、
予定どおり1年間続けたとしても赤字見込み額は340万円程度。
こうした試運転や調査というのは、そもそも投資的な側面があり、
広報をもっと本気でやったり、回遊性を高めれば黒字化する可能性もあったと思うので、
個人的には少々もったいなかった気がしています。
ちなみに政治の世界では、新任者は前任者の色がついた政策を
意図的に引き継がない(縮小・打ち切りする)傾向があります。
仮にその政策が大成功しても、自分の手柄にならないし、
敢えて予算や力を入れたくないわけですね。
まあこれは現代政治に限った話ではなく、
歴史上でも王朝が変わったりすると、宮殿や書物を全部焼き尽くして、
自分たちの独自文明を築きます。為政者の知恵と宿命と言えるのかもしれません。
■
試運転開始と同時に徳洲会事件が起こり、その成功に熱量が向けられることなく、
最悪のタイミングで頓挫してしまった都バス24時間運行。
政策の実現には、その良し悪しはもちろん、
タイミングというのも非常に大事だということが証明される結果となりました。
とはいえ、試運転の結果も赤字は赤字。
こうした数値を参考に、今後の東京都全体の交通機関についても、
次なる政策提言に活かして参りたいと思います。
さらば猪瀬バス!
それでは、また明日。
(2014年9月30日「おときた駿ブログ」より転載)