ランツゲマインデから一夜明けて、本日はグラールス州のハンス州議会議長、ハンスイヨルグ州官房長官と会談をさせていただきました。
内容は一部、元気会の公式アカウントでも実況中継していたので、そちらも合わせてご覧くださいませ。
ランツゲマインデの理念や意義、課題についてなど内容は多岐に渡りましたが、特に印象的だったのは若者の投票率について。
ランツゲマインデによって、グラールス州住民の政治に対する意識は他の地域や他国と比べて高くなっていると思いますか?という質問に対して
「ヤー!(もちろん)」
と力強く答えた彼らですが、意外なことに州議員選挙などの投票率は取り立てて高いわけではなく、若者の投票率が低いのは日本とも共通で、特に10代・20代の投票率は30パーセント台に落ち込むことも珍しくないそうです。
ランツゲマインデの会場でも、若年層の姿は相対的に少ないように感じました。
しかし、彼らはそれをほとんど問題だと思っていないようです。
それは一体、なぜなのでしょうか??
「若い人が投票に来ないのは、今の政治を信頼して『委任』している証だ。
今年のランツゲマインデではたまたま若い人向けの議題が少なかったが、
彼らは自分の範疇の問題となれば必ず参加し、大勢が集まってくる」
なるほど、非常にポジティブです。
民主主義制度下では、社会が安定すればするほど投票率は下がると言われています。
実際にスイスの国民投票でも実際の投票率は60%前後で、それほど高いわけではありません。
しかし一方でスイスは、
「政府のことを信頼しているか?」
「自分の意見は政治に反映されていると思うか?」
などの各種アンケート結果において、
非常に自国政府や政治に対する信頼が厚いことが知られています。
低投票率の背景にあるこうした事実が、
「低投票率は問題ではない。選挙に来ないことは、現状への信任だ」
と言い切る、彼らの確たる「自信」につながっているわけです。
参考:WEF世論調査「政府を信頼、メディアは信じない」スイス人
>スイス国民の4人に3人は、直接選挙によって選出された議会は最も重要な国益のために正しく機能していると信じており、民主主義国家でも自国の政治機関に全幅の信頼を置いているのは半数にすぎないという他国とは際立った違いを見せた。
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一方で、我が国はどうでしょうか。
同様のアンケート調査では、自国の政治に対する信頼は先進国中最低を記録することも珍しくありません。
参考:日本人は「政府への信頼」が世界最低だった!
これではとてもではありませんが、「低投票率は社会の安定の証」と胸を張ることはできません。
そしてその「政治(政府)への信頼」を回復するためには、「政治とカネ」のような些末な問題を解決するだけでは不十分です。
「自分たちが未来を決めている」
「私の意見が、変化を生み出している」
その確かな実感こそが当事者意識を取り戻し、信頼を取り戻すことにつながるのではないでしょうか。
ランツゲマインデにゲスト参加していたスイスの厚労大臣は人々に非常に人気があり、どこに行っても大きな拍手で迎えられます。
道行く人にさりげなく尋ねると、
「ずいぶんと大臣は、みなさんに人気があるんですね?」
「私たちが選んだ人だもの、当然じゃない!」
こんな答えがサラリと返ってくるのは、地味に衝撃的でした。
またランツゲマインデ後の会食でも、初対面の人が開口一番、
「日本から来たのか!フクシマは今どうなんだ?原発政策をどう考えてる?」
と議論をふっかけてきて、周りもそれに積極的に乗っかってくるあたり、噂通りの国だなあとしみじみと思ったものです。
(ランツゲマインデの凄さが10秒でわかる動画)
この国の先進性と意識から学べるものは、政治家として大事なことをばかりです。
しっかりと自分の活動に還元できるよう、自分の中に吸収し、また発信していきます。
グラールス州議会の議場にて、議長席に座らせていただきました。
議長・官房長官、本当にありがとうございました!
後ろ髪を引かれながら、明日からはスウェーデンの視察です。
それでは、また明日。
(2015年5月5日 「おときた駿公式ブログ」より転載)