【パームスプリングス】レトロなデザインを求めて

砂漠地帯にはなにか、時を止める力があるのでしょうか。四季がないからか、雲のない空をゆっくりと移動する太陽のせいか、それとも単に、乾いた灼熱に私たちのペースがどうしてもゆったりだらりとしてしまうからか・・・。

砂漠地帯にはなにか、時を止める力があるのでしょうか。四季がないからか、雲のない空をゆっくりと移動する太陽のせいか、それとも単に、乾いた灼熱に私たちのペースがどうしてもゆったりだらりとしてしまうからか・・・。砂漠の秘密がなんであれ、その独特な世界はロサンゼルスからほんの170kmほどの場所に位置するパームスプリングスでも健在です。最近は、野外音楽フェスティバル、コーチェラの開催地としても有名な、ソノラン砂漠の片隅にあるこのレトロなリゾートタウンには、どこかタイムワープしたかのような印象が。過去にとらわれているというわけではないけれど、古いものがすべてまた新しく再生されるような感覚を覚えるこの町は、近年アメリカでまた注目度を上げているデスティネーションです。

どこに目を向けてもレトロな要素が溢れているおかげで、この町はどこか、天気の良いカリフォルニアに舞台を移した『マッドメン』の世界のよう。でもこれは、パームスプリングスがトレンドを追っているからではなく、反対に、大衆文化(&世界のデザイン関係者)がこの町にヒントを求めることが多いせい。傑作ミッドセンチュリー建築の宝庫として知られるパームスプリングスは、それ以外にも長い間、特筆すべき住宅建築が多いことで有名だった場所。

そんな地元の建築史を、車で訪ねる短時間集中型コースで楽しむなら、「Palm Springs Modern Tours」がお勧め。このツアーを利用すれば、見事に修復されたリチャード・ノイトラのカウフマン邸(Kaufmann Desert House)、この辺りの数多くの住宅を手がけたアレキサンダー・コンストラクション・カンパニーによるラスパルマス(Las Palmas)地区の名作、そして、市民センターの典型的モダニスト建築を、3時間でさらりと訪問することができます。でも、自分のペースでもっとじっくり回りたいというならば、PS ModComこと「Palm Springs Modern Committee」のスマートフォン&タブレット対応アプリをダウンロードしましょう。ミッドセンチュリー建築の名所80件以上を巡るセルフツアー用ガイドのほか、建築家のプロフィールや歴史的写真、建築史の専門家による分析といった情報が搭載されているから、旅の終わりにはかなりの建築デザイン通になれるはず。

邸宅鑑賞ツアーにすっかりインスパイアされたら、やっぱり手に取って自宅に持ち帰ることのできるデザインが欲しくなるもの。目抜き通りとなっているノース・パームキャニオン・ドライブ沿いにある「Modern Way」と「Retrospect」は、どちらもまず最初に覗きたいデザインショップ。前者は鋭い審美眼を持って取り揃えられたビンテージ家具とクラシックモダンのアイテムで評判の店。後者は照明・ランプ類を得意とするリビング風のアンティークショップです。さらに個性派のアイテムをお探しなら、比較的リーズナブルな価格のアンティークが見つかるユーズドショップ「The Estate Sale Co.」へ。ビンテージクチュール・ファッションなら、バレンティノ、ジバンシー、ピエール・カルダンといったブランドの60年代&70年代アイテムを揃えた「Mr. Cox」を忘れずにチェック。

そして、そんな数々の傑作建築と素敵なビンテージショップが溢れるパームスプリングスで、この町特有の過去と現在を最も上手に一体化させているのはほかでもない、宿泊施設です。「コロニー・パームス・ホテル(Colony Palms Hotel)」と「バイスロイ・パームスプリングス(Viceroy Palm Springs)」は、どちらもハリウッドリージェンシー・スタイルの建築が流行していた、30年代からある建物を利用したホテル。バイスロイがまだエストレッラという名で経営されていた頃は、ジョーン・クロフォードやエロール・フリン、米国大統領や他国の皇族までが訪れたのだそう。そして、新世代のLAっ子がこぞってここを訪れるようになった今、またかつてのグラマラスなムードが戻ったよう。それは、コロニアル・ハウスと呼ばれていたクラシカルな旧ホテルを、モロッコ的要素を取り入れたカリフォルニアンスタイルで仕上げたコロニー・パームスに関しても同じこと。館内のレストラン「パープル・パーム(Purple Palm)」は、古いハリウッド・サッパークラブ風のレトロな雰囲気に溢れ、パームスプリングスで最も人気な店のひとつ。一方、「ザ・パーカー・パームスプリングス(The Parker Palm Springs)」は、1959年から営業している正真正銘のミッドセンチュリー・クラシック。でも、ジョナサン・アドラーの手によって隅々まで改装された現在は、1960年代&1970年代だけでなく、ハリウッド黄金期へのオマージュにもなっていて、言い換えれば、まさにレトロがかっこいいとされる現代的空間になっているというわけです。

注目記事