随分前から噂されていたYouTubeのテレビサービスYouTubeTVが、米国でようやく先週発表されました。
サービスはまだ始まっていませんが、これまではケーブルと一緒に契約をしてテレビのスクリーンで見ていたABCやNBCといった主要なチャンネルのコンテンツを、スマホやタブレットでどこからでもライブで見られるようになります。
上の写真は、昨日の朝、空港で飛行機を待ちながらCNNでニュースを見ていた時の写真です。その昔、日本でもワンセグというサービスがありましたが、どこでもライブでテレビが見られるというのは結構便利なものです。
YouTubeが「今さらテレビ?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、引き続きテレビのコンテンツは人気があり、類似の先行サービスSling.TVはサービス開始から二年で100万人の有料会員を獲得しています。
最近は、家の中の話題というとAmazon Echoで持ちきりですが、ちょうどFacebookも先週テレビ向けの動画アプリをリリースしたところなので、今回はテレビの周りのトレンドを見てみたいと思います。
YouTube TV:「$35」でテレビ見放題
今回YouTubeが発表したテレビストリーミングサービス YouTubeTVの概要は下記の通りです。
- テレビライブストリーミング
- 月額35ドル
- 家族で6アカウントまで
- 利用可能地域は、LA、NY、Philadelphiaから。全米展開予定。
- ABC、NBC、CBS、Foxなど主要なチャンネルが見られる。
- HBO、ViacomなどTimer Warner傘下のチャンネルは見られない(交渉中)
- 容量無制限クラウドDVR
- Google Home連携
そもそも「テレビは無料(除くNHK)」な日本の方がからすると、「テレビが$35は高い」と感じるかもしれません。ただ、米国ではケーブルテレビなどが主流で、一般的に毎月$80-100支払っているので、値段的には十分に競争力があると言われています。既存のケーブルテレビなどと、費用や機能などで比較してみると下記のようになります。
各テレビ関連サービス比較
Comcast:ケーブルも「ストリーミングシフト」
米国では、一般的にケーブルや衛星でテレビ契約をしています。こちらは米国の11の大手有料テレビプロバイダーの利用者数と、2016年第二四半期の利用者の増減の一覧です。
トータルで9375万世帯と米国の多くの家庭が、ケーブル、衛星、通信会社などいずれかのサービスを利用していることがわかります。私も、自宅ではブロードバンド回線と合わせて、ケーブルテレビのComcastで契約しています。
一方で、ほとんどのサービスが、Netflixなどの新興サービスに押されて、会員数を落としています。こちらのグラフからわかる通り、これは一過性のものではなく、ここ数年続いているトレンドです。
厳しい状況に置かれているケーブルテレビですが、彼らも近年積極的にアプリを提供し、ストリーミングサービスを提供しています。
これはComcastが会員に提供している無料のスマホアプリです。
生放送中の全てのチャンネルが、スマホでどこでも見られます。
LTEの環境だと厳しいこともありますが、WiFiがあればクリアな映像でライブテレビを楽しめます。
Netflixなどに対抗して、オンデマンドのコンテンツも豊富に用意されています。
アプリ自体は決して高機能ではありません(チャンネル選択、再生、オンデマンドコンテンツ購入など)が、ケーブルテレビ契約者でもスマホからストリーミングでライブテレビをみる時代になっています。
ケーブルテレビに対して、YouTube TVは価格だけ見ると優位性がありそうです。一方で、まだ提供できていないチャンネルもある点は、ローンチに向けて課題となりそうです。
Sling.TV:録画はできないが、あとは「ほぼテレビ」
YouTube TV自体はサービス開始前なので、ケーブル契約が必要でない類似のライブテレビストリーミングサービスSling.TVを見て見たいと思います。
これがスマホアプリです。テレビの画面と同様に今ライブでやっている主要チャンネルのリストを見ることができます。
番組自体の画面はComcastと変わりありません。
Comcastのアプリにはありませんでしたが、連携が用意されておりテレビの大画面で視聴することも可能です。
有料サービスですが、ちゃんと広告も放送されます。
Sling TVは、$20からと非常に安価な価格設定をしています。ChromeCastでテレビの大画面に出力できるので、ケーブルを解約して、ドラマはNetflix、ニュースとスポーツはSling TVという使い方をする人はもっと出てきそうです。
YouTube TVとの大きな機能の違いは、DVR機能が提供されていないことでしょう。
YouTube TVは、Google Photoなど他のGoogleのサービスと同様に無制限DVRを提供しているので、録画をして、CMを飛ばしながらタイムシフト視聴が可能であるという点は大きなアドバンテージになりそうです。あとは、Amazonなどと同様にローカルにダウンロードできるようになると、飛行機の中でも観ることができるので利用の幅が広がりそうです。
Facebook TVアプリ:大画面インタラクティブ
そして最後に紹介したいのが、同じタイミングで発表されたFacebookのテレビ向け動画専用アプリです。最近、動画、ライブ動画に力を入れているFacebookが満を時してテレビに参入してきたアプリはどんなものでしょうか。
SamsungのスマートTV向けにも提供されていますが、今回私はApple TVでダウンロードしてみました。
アプリの名前は「f Video」。
AppleTVの中でもfeatureされています。
ログインすると自分のスマホに認証コードが表示され、facebookにログインして使います。友人がシェアした動画が一覧できます。
フォローしているページからの動画も一覧できます。
最近動画に力を入れているプロダクトハンターにもテレビで会えます。
ライブ動画へのコメントはリアルタイムで表示されます。
Facebookは、あくまでユーザがアップした動画が中心でテレビコンテンツは提供していないので、ここで同列に並べるのは適切ではないのかもしれません。とは言え、10億人以上が視聴するYouTubeを猛追する、18億人のプラットフォーム無視をできません。こちらは昨年一年間でFacebookのライブ動画で最も見られたランキングです。
ダントツの1位は、ブログでも紹介したスターウォーズのチューバッカママです。今見ても十分笑えますが、一般の人が笑っているだけの動画が1.6億人以上の人に見られたというのはやはりプラットフォームの力を感じる数字です。
そして半数以上を占めたのが、3位、5位、8位、10位に入った大統領選を中心とした「ニュース」でした。
テレビで放送されているレベルのカバレッジや解説は期待できませんが、速報性、ソーシャルなどニュースにとって重要な特性をFacebook Liveは持っています。
テレビの主要なコンテンツであるニュース、ドラマ、スポーツのうち、ドラマ、映画は完全にNetflixなどのストリーミングプレイヤーに取って代わられつつあります。Netflixの4,900万会員というのは圧倒的な数字で、これにAmazonを合わせるとすでに有料テレビと同等の規模に近づきつつあると言えます。
そして、ニュースと同様、スポーツも速報性、ソーシャルなどソーシャルプラットフォームが強い領域です。
YouTube TVやSling TVが、ケーブルと同じカバレッジを実現できればもやはケーブルでテレビを契約する理由はなくなります。
動画、テレビの世界は、ストリーミングライブテレビ(YouTube)、オンデマンド動画(Netflix / Amazon)、ソーシャル動画(Facebook / Snap)というプレイヤーがそれぞれの強みを活かした新しい競争の時代に突入しそうです。個人的にはまだまだ色々なことができそうなソーシャルプレイヤーの動きに特に注目しています。
いずれにせよ、まずはYouTube TVのサービスインが楽しみです。
テレビの環境が大きく異なる日本ではすぐには同様のことは起きないかもしれません。
とは言え、abemaTV(ダウンロード数1,000万達成)、LINE Live (広瀬すずライブ配信視聴者65万人)、DAZN(ドコモユーザは980円でJリーグ全試合ライブ視聴可能)など大きな変化は生まれ始めているようです。テレビは引き続き視聴率という数字しか公表していませんが、日本においてもこうした新興のストリーミングプレイヤーにユーザが流れていることは間違いないでしょう。
ぜひ、次回のTackle!で日本のテレビの今後などについてもディスカッションして見たいと思います。