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2018年04月16日 16時23分 JST | 更新 2018年04月16日 16時23分 JST

DNAパーソナライズ、バイオAWS、Crypto、保険。YC W18 Demo Day

プレゼン企業は141社。

Scrum Ventures

3月19日&20日、半年に一回のシリコンバレーの恒例行事、Y CombinatorのイベントDemo Dayが開催されました。

同じ週の金曜日には、Dropboxが無事「YC初」となるIPOを実現し、2005年の創業以来、Airbnb、Stripeなど多くのユニコーンを産み出して来たY Combinatorにとって、大きな節目となるタイミングでもありました。

今回のポストでは、そのタイミングでの大きなスタートアップのトレンドを理解することに役に立つ、Y Combinatorの今回のバッチ(W18)の特徴と注目企業について取り上げたいと思います。

過去のDemo Dayポストもご参考まで。

  • 2017 S17 「進化するモビリティ、音声、医療」
  • 2017 W17 「AIの一般化」
  • 2016 S16 「老人向けUBER、無人宅配便、農地A/Bテスト」
  • 2016 W16 「Chatbot、創薬、超音速飛行機」

プレゼン企業は141社

3/19-20の二日間で登壇した参加スタートアップはトータルで141社(12社のメディア非公開企業含む。一日目の全リスト / 二日目の全リスト)でした。

前回は124社で、大体100-130社くらいという過去の水準から言うと、今回は少し多めと言う印象でした。

余談ですが、ついに!会場であるComputer History Museumの椅子にクッションがついたので、丸二日プレゼンを聞きっぱなしでもお尻が痛くなりませんでした(笑)

また、今回から明らかに参加をしている投資家の数が激増しており、席が足りずに座れない投資家がたくさんいました。

StanfordのStartXが早々にDemoDayをオンライン化(投資家が見たい時間に見たいテンポで一気にデモを見れる)したように、先週AngelPadもDemoDayの廃止を発表しました。

エコシステムの拡大により投資家の数が増え、代替する資金調達手段も増える中で「Demo Day」というイベントの形態はもはや難しくなって居るのかもしれません。次の次の回から、ついにComputer History Museumから別の大きな場所へ移るようですが、形態自体もまだ進化の余地があるかもしれないですね。

参加企業を「カテゴリー」で分類すると下記のような感じです。

Scrum Ventures

Saas系(31%)、Service系(23%)が過半を占めるというのは、変わらないトレンドですが、過去数回(S17 16% / W17 15%) と比べると、HW系がだいぶ少なかった (8%)というのが一つの特徴です。一時期はHW系の展示が華やかだったのですが、今回は展示も少なく寂しい感じでした。

また今回から、過去数回で明らかに増えているバイオ系を独立したカテゴリーとしました。StartXなど他のアクセラレータでもそうですが、今後バイオ、医療系のスタートアップのプレゼンスはもっと高まると思われます。

次に「業種」で見てみると、今回のバッチで3社以上いた業種は以下の通りとなります。

Scrum Ventures

トップ3は、従来通り「医療」「金融」「HR」。

医療の中のトレンドとしては、Reverie LabsMacromoltekのような従来からある創薬系に加えて、Culture Roboticsのように「バイオのAWS」を謳うような新しいビジネスモデルを取り入れたユニークな会社も出て来ました。遺伝子編集のようなコアなテクノロジーのイノベーションと新しいビジネスモデルの組み合わせによって、今後どんどん魅力的なスタートアップが生まれてきそうな業種です。

金融の中のトレンドは二つ。従来からあるような金融系のサービスに加え、CoinTrackerHexelのようなCrypto系Evry HealthSafetyWingなどの保険系が増えました。特にCrypto系は、今回の勢いからすると、次回以降さらに増えそうな予感がします。また、今回の参加企業の中にもDemo Dayの前にICOをしている会社がありましたが、先ほどのキャパシティの問題も含めて、Crypto/ICOのトレンドは、今後、アクセラレータ、Demo Dayなどの形態そのものに影響を与える大きなトレンドになってきそうです。

また業種ではないですが、今回目立ったもう一つのトレンドは、「パーソナライズ」です。

パーソナライズと言っても、個人の好みに応じて合った商品をレコメンドするという話ではなく、そもそも「データに基づいてパーソナライズした商品を作る」というものです。スキンケアプロテインサプリなど様々な商品を、DNA検査など様々なデータに基づいてパーソナライズして作るというスタートアップが数多くありました。商品のカテゴリーにもよりますが、Subscription化に成功すればOn Demand生産で利益率の高いビジネスになりそうですが、難易度は高いビジネスです。

Scrumが注目する10社のスタートアップ

最後に、今回プレゼンをした141社の中で、注目をしておきたい10社のスタートアップをご紹介します。

1 : Volley(音声ゲーム)

米国ではすでに保有台数4700万台に達し、アプリビジネスも盛り上がっているのが「AIスピーカー」。ゲームはその中でも人気のカテゴリーです。Volleyは、クイズ、トリビア、音楽などAIスピーカー向けに様々なゲームを提供するスタートアップですが、すでに90万MAUに達している人気ゲームもあるそうです。スマホでは巨大市場になったゲーム分野。AIスピーカーのゲームでは誰が勝者になるのでしょうか。

2 : Safety Wing(デジタルノマド保険)

スマホ特化、自動運転対応、シェアリングエコノミー対応など、様々な新しいタイプのスタートアップができているInsure Techの分野ですが、Safety Wingは「デジタルノマド」という新しい生活形態に合わせた新しい保険商品を提供するスタートアップです。世界に2500万人いると言われている、世界中を旅しながら仕事をするデジタルノマド向けに、180カ国で使える健康保険を提供しています。パートナーが日本の大手保険会社だというのは驚きました。

3 : Proven(パーソナライズコスメ)

女性にとって、スキンケアというのは非常に大事な問題であるものの、なかなか自分の肌にあった商品を見つけることは難しく、多くの女性は不満を抱いているようです。Provenは、AIによりオンライン上にある800万以上のレビュー情報、4,000以上の論文、2万以上の成分などを分析し、利用者の肌やニーズにあったパーソナライズスキンケア商品を開発するスタートアップです。まだサービス開始前ですが、近々米国でβテストがスタートするようです。

4 : Culture Robotics(バイオAWS)

2011年のYCの卒業生のScience Exchange(実験機器やリサーチャーのマーケットプレイス)のように、科学や医療の世界に「クラウド」や「シェアリング」の概念を持ち込んで成功するスタートアップは増えています。Culture Roboticsは、遺伝子工学やバイオ研究の現場で必要となるバイオリアクターをクラウド化し、培養が必要な研究機関や企業向けに、代わりに培養や実験を行うスタートアップです。最近日本でよく話題になる実験不正などリスクもあるでしょうが、将来的にはITの世界でクラウドが一般的になったように、研究機関においても実験器具やリサーチャーが全てクラウド化されるという日は近いのかもしれません。

5 : Atrium(AI弁護士事務所)

先日、日本で投資を開始して驚いたのは、「いまだに投資契約書が紙で行われている」ことです。USでは、契約はDosuSignで数分で済み、株券や資本政策などはCartaで全て管理されています。ここにかかる時間やコストが、明らかに日本のスタートアップエコシステムの発展を阻害していることを肌を持って感じました。Atriumは、スタートアップに必要な資金調達、採用など様々な契約書をAIを使って自動で作成、処理できるAI弁護士事務所スタートアップです。

6 : Arrow(ARインスタ)

AR/VR関連も今回ホットだったテーマの一つです。Android / iOS両者がARに力を入れる中、今回デザインツールブラウザMap APIなど様々なAR/VR関連スタートアップが参加をしていました。Arrowは、AR空間の中に写真や動画を置くことができるアプリです。「ある場所に手紙を置いておく」みたいなアプリは非常に古典的なテーマですが、2019年に5億台以上のスマホがAR対応すると言われている今、ヒットするテーマなのかもしれません。

7 : Playbook(学生ソーシャル)

ご存知の通り、Facebookがセキュリティ問題で今大きな岐路に立っています。ユーザの伸び、好決算、死角が全く内容に見えたFacebookですが、この先どうなるか分からない状況です。Playbookは、Zuckerbergと同じようにHarvardの大学生が作った、今いる場所の近くで一緒に遊ぶ人を探せるアプリです。まだベータの段階ですが、栄枯盛衰を繰り返してきたソーシャルの世界に、新しい世代がどんなトレンドを巻き起こすのか注目したいと思います。

8 : Aerones(発電機清掃ドローン)

今回数は少なかったHW系の中で、巨大なドローンを展示して目立っていたのがAeronesです。Aeronesは、現在世界中で増えている風力発電の羽根についた雪や氷を除去するのに使われています。水を高速で吹き付けてもドローンが不安定にならないようにブレードの付け方などに工夫がされています。

9: Callisto(セクハラ防止)

ご存知の通り、昨年巻き行った#Metooの波は、多くのシリコンバレーの著名投資家にも及びました。Callistoは、セクハラにあった女性起業家が通報できるNPOのサイトです。セクハラの被害者はアクションを取らないケースがほとんどだということですが、サイトの利用者は、通常の5倍以上、実際にアクションを起こし、訴訟などに進んでいるということです。シリコンバレーの良さがDiversirtyでありながら、Diversityが進んでいないのが投資家の世界です。大事なプラットフォームになっていくと思います。

10: Nectome(脳みそアップロード)

最後は少しぶっ飛んだ科学的チャレンジに取り組んでいる会社です。Nectomeは、人の脳みそを丸ごと保存しようというスタートアップです。詳しくは、MIT Technology Reviewの記事をご覧いただければと思いますが、仮死状態の患者を人工心肺に接続し、薬品を注入しながら、脳の情報を取り出すという仕組みのようです。Alphabetの子会社で不老不死を研究するCalicoのような会社もありますし、数年後にはこうした分野もビジネスになるのかもしれません。 以上、注目の10社を取り上げました。 このYCの話を中心にシリコンバレーの動向を1時間でキャッチアップする勉強会Tackle!を来週東京で開催します。まだ空席がありますので、もしご興味があればぜひご参加ください。その翌週は、San Franciscoでも開催します。
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