バフェットのバークシャー・ハサウェイの年次株主総会は『グレート・ギャツビー』の乱痴気騒ぎを彷彿 凡庸な成績、世襲制を批判しない「羊ちゃん」株主たち

週末にウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイの年次株主総会が開かれました。今年の株主総会は参加者四万人を集める盛大なものでした。バークシャーの株主総会は年々豪勢になるけれど、バフェットのパフォーマンスと反比例している点に僕などはアイロニーを感じざるを得ません。

週末にウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイの年次株主総会が開かれました。今年の株主総会は参加者四万人を集める盛大なものでした。バークシャーの株主総会は年々豪勢になるけれど、バフェットのパフォーマンスと反比例している点に僕などはアイロニーを感じざるを得ません。

下はバークシャー・ハサウェイの簿価がS&P500指数にたいしてどれだけアウトパフォーム、ないしはアンダーパフォームしたかをグラフ化したものです。

ここ5年ほど、バークシャーのパフォーマンスは冴えません。特に2013年は-14.2%と48年に及ぶ同社の歴史のうち、歴代4番目に悪いアンダー・パフォーマンスでした。

それにもかかわらず年次会計報告書の説明は「マーケットが強いときは、バークシャーはアンダーパフォームする傾向がある」というひとことで、オシマイ。

もちろんバークシャーの簿価そのものが過去5年の間に下がったわけではないので、投資家は大目に見ているのだと思うけど、これだけ慢性的に凡庸なパフォーマンスが続いても株主の間から批判が出ないのは、バフェットによる長年の株主教育のたまものでしょう。

普通の会社の株主総会なら、経営者はボコボコにされていると思います。

もうひとつアニュアル・レポートを読んでいて、残念なことがあります。それはHJハインツの買収に関してブラジル系ファンド、3Gキャピタルとの協業について、のっけからダラダラと書かれていることです。

有り体に言えば、この買収はインベストメント・プロセス(=買収先の策定、買収に際する資本政策の決定、買収価格の決定、買収後の投資先のテコ入れとパフォーマンスのモニター、etc.)を3Gキャピタルにアウトソースしています。

バークシャーは受け身(パッシブ)の投資家としてお金だけ出して「相乗り」しているに過ぎないのに、冒頭からこういう風に3Gキャピタルのことばかり説明されて、萎えないのかね? バークシャーの株主は。

それからウォールストリート・ジャーナルのアヌプリータ・ダス記者が「バークシャーの次期会長はウォーレン・バフェットの長男、ハワード・バフェットになる可能性が強い」とする優れた記事を書いています。

ハワード・バフェットは運用の経験は無く、ボランティアで地元の副保安官を務めたりしていた人です。黄色い星形のバッジを描いたパトカーの前でポーズを作り、悦に入っているハワードの写真を見ると、この人で適任なのかな? と不安になります。ちなみに彼は大豆農家、写真家などをやった経験はありますが、投資を生業としたことはありません。

ハワードが会長に就任したあかつきにはバークシャーの会長職は「執行権を伴わない」ポジションになると明記されているものの、30兆円企業にいきなり全く投資経験の無い自分の息子を据える神経は、ちょっとどうかしていると思います。

ウォーレン・バフェットは長期的に見て投資そのものには成功してきたけど、自分のレガシーをしっかりと継承するインベストメント・チームの育成には、お世辞にも成功したとは言えません

過去にバークシャーに関わった優秀なファンドマネージャーは、悉く同社を去っています。

かつてのバークシャーの株主総会はオマハの農場やモーテルなどで開かれる、アメリカ的経営の良い点を象徴した、きわめて質素なものでした。

それに比べると近年のバークシャーの年次株主総会の虚栄に満ちた様子は、まるで『グレート・ギャツビー』のようで「アメリカの、こういうところが腐っている!」と指摘されても仕方ないような、中身の無いお祭りに成り下がっています。

(2014年5月5日「Market Hack」より転載)

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