真国立競技場計画は3ステップで計画するといいました。
理由は、時間短縮と考える余裕を生み出すためです。
槇文彦先生たちのグループが先日記者会見されましたよね。
世界的建築家・槙文彦氏「日本チームで作る」...新国立設計
http://www.hochi.co.jp/topics/20150606-OHT1T50035.html
ザハ氏の設計案に当初から批判的な立場を貫いてきた世界的建築家の槙文彦氏(86)らのグループがこの日、都内で会見を行い、代替案を発表した上でザハ氏を設計者から外してプロジェクトを見直すことを提言した。
(中略)
「このまま『バンザイ攻撃』をやるんですか? 真剣に話し合わなきゃいけない時期に達している」。まだ回答は来ていないものの、代替案はJSCや東京都にもメールなどで送付しており、今後は五輪組織委や文科省にも提案していくことを検討している。求められれば、意見交換の席に着く考えも明らかにした。
2015年6月6日6時0分 スポーツ報知
いやあ、槇先生、漢だねえ。
ラストサムライですよ。
いえいえ、槇グループが七人の侍です。
「実はな、金にも出世にもならん難しい戦があるのだが・・・ついて来るか?」
「はい」
「人を守ってこそ自分も守れる。己のことばかり考える奴は己をも滅ぼす奴だ。」
槇先生が建築家としてどういった方かは下リンクを参照してください。
槇文彦の建築:東京の森⑦だからこそ主張し続けよう
また、コンペで決まったのに覆していいの?
ザハさんがかわいそう?といった声も聞こえますが、妙な提案や周辺環境やローカルの文化をあまりに無視したデザイン手法に、そこで暮らす方々が異を唱えるのは、世界では至極あたりまえのことです。
コンペ案は覆せる:新国立競技場の建設コンペをめぐる議論について12
さて、真国立競技場計画のほうですが、デザインや配置の前にこの建築にはそもそもどのような用途目的を盛り込めばいいのでしょうか?
新国立競技場コンペ大失敗の原因は、何もザハ・ハディドのデザインや途中で構造設計投げ出したのに、そのこと隠したアラップジャパンや、ザハのデザインを選んだ審査員の先生だけに帰するものではありません。
コンペの募集要項に盛り込まれた用途目的が過大だったからです。
最初の段階、スタートラインから間違っていた。
そのときの有識者会議のメンバーが一番悪いのです。
観客席は8万人必要だ!陸上の公式大会に必須のサブトラックを後回しにして、サッカーは天然芝じゃなきゃいけないのに、コンサート会場として使える日数を増やすために、雨が降ってもチケットの払い戻しがないように全部を覆う屋根が必要だ、国民の税金で建てる前提なのに、富裕層のためのVIP席が必要だ、もっとVIP席が必要だ、VIPマシマシでお願いします!
とやってしまった結果。
こうなりました。
地上70メートルです。
お椀からはみだしました。
ラーメンだったら、まだ頑張って食べればなんとかなったんでしょうけど、巨大なキールアーチは、スパン400メートル、一本で重さ3万トン以上。
3万トンといえば、自衛隊の護衛艦くらいの重量です。
これが二隻、なんの用途もなく空中に浮かべてあるのが、今のザハデザインから一連の新国立競技場計画なんです。
バカバカしいでしょう?
このことが周知徹底されるまで1年かかったわけです。
それまで槇先生を支持する100名の、審査員の内藤廣さんから「諸氏」と十派一からげされた建築家の先生や、JIA(日本建築家協会)の先生方が必死の訴えでJSCと議論を重ねたりした結果、やっと一昨日、政治家の先生方にもその意味が伝わったんです。
それでも、まだザハ案を支持するという建築家たちというのが存在するそうです。どんなご意見をお持ちなのか、この際ぜひ見に行ってあげてください。
契約解除間近のザハ案を支持する建築専門家たちのツイート - まとめ http://togetter.com/li/831630
と、また血圧が上がってきましたので、これくらいにしておいて真国立競技場計画に戻ります。
あわてて設計やデザインすると碌なことにならないし、目的が利用する方々と共有できていなければなりませんからね。
真国立競技場を再生した後、現地は1年のイベント使用しているさなかに設計を詰めていくと仮定した場合、この施設に必要とされるであろう機能をわかりやすく以下のチャートにまとめてみました。
これが、検討すべき課題の道筋です。
まず①番のサブトラック、これはですね、外苑西通り側と思ったんですが、今回は敷地が明治公園が地続きなので素直にそのまま置きます。
続いて、観客席。
観客席はですねえ、悩みますね。
なぜか?といいますと、芝生席で4万人強入るからなんですよ。
現在でも芝生席のスタジアムはあります。諸外国でも。
英語ではLawn seatといいますね。
天気さへ良ければ、最高。のんびりしてて
「フィールド・オブ・ドリームス」という映画がありました。
"If you build it, he will come." 「それを造れば、彼が帰って来る」
90年前のスタジアムです。
「それを造れば、彼が帰って来る」
今のグダグダの新国立競技場の経過を見ていると、もうそういうのでいいんじゃないかとすら思えてきます。
90年前の日本人は、建築家はもっとこういう公共工事に真摯だった気がします。
少なくとも、責任ある立場の人が雲隠れしたまま2年近くも潜伏しながら、講演会しまくる等、岸田日出刀が絶対にゆるさなかったと思います。
また、前章でも書きましたが、この場所で何があったか。
この辺読むとですね、今の新国立競技場のグダグダとか本当に申し訳ない気持ちになります。この出陣学徒の中には将来建築家になることを夢みていた建築学科の方もいたことでしょう。
雨の神宮外苑「学徒出陣」56年目の証言
学徒出陣の壮行会から70年 慰霊碑前で"最後の"追悼会
「~元学徒や見送った女子学生たちにとって、この国立競技場に慰霊碑があることが、学徒出陣の証しなのです。~」
「~いったん撤去されても、再び、この場所に慰霊碑が戻ってくることを願っています。~」
この場所でですね。
毒薬仁太郎みたいなマインドになってしまった建築家連中が好き勝手やっていいのか!ってことです。
だから、どうしてもですね、手が止まりますね。
が、やはり日本では雨も多いし冬の管理も大変だし、この初代芝生復元は、1年間の限定使用イベントまでとし、ラグビーワールドカップやオリンピックには観客席を構築した方がいいんでしょうね。
(2015年6月7日「建築エコノミスト 森山のブログ」より転載)