観光客49人で1人の雇用

アメリカの観光業にとって2000年から2009年は「失われた10年」と言われ、各国が海外からの観光客を増やす中でアメリカを訪問する観光客は横ばいにとどまっていました。
Christopher Kimmel via Getty Images

ホノルルで開催されたUS-JAPAN Councilの年次総会に出席しました。

その中で観光に関するセッションがありました。

アメリカの観光業にとって2000年から2009年は「失われた10年」と言われ、各国が海外からの観光客を増やす中でアメリカを訪問する観光客は横ばいにとどまっていました。

この危機感そのものがすごいと思いましたが。

そこでTourism Promotion Act of 2010が成立し、Brand USAと呼ばれる組織が立ち上がりました。

Brand USAの運営資金は、まず観光業界を中心に、民間から1億ドルの拠出金を集め、それにマッチングする形でESTAの手数料から1億ドルを上限に資金が提供されます。

(ESTAとは米国との間でビザが免除された国の国民が申請する電子渡航認証システムで1人につき14ドルの手数料が徴収されます)

日本からアメリカを訪問する観光客の最大の訪問地がハワイ州で過去には年間200万人の日本人観光客がハワイを訪れたこともあります。

2014年の日本からの観光客の見込は155万人、平均滞在日数は5.8日間。日本人観光客がハワイに落とすお金は年間総額で25億ドルにものぼります。

ハワイ州全体で観光客が落とすお金は年間148億ドル、1日当たり4030万ドル。

そして観光業からあがるハワイ州の州税が年間17億ドル。

ハワイを訪れる観光客49人につき1人の割合でハワイの雇用が増える計算になるそうです。

日本からハワイを訪れる観光客の60%が3回以上ハワイを訪れているリピーターに分類されます。このグループは固いようですが、高齢化が少しずつ進行していきます。

そのためハワイ州の観光局HTA--Hawaii Tourism Authorityは、初めてハワイを訪れる新規の観光客に的を絞ったキャンペーンを始めました。

その一つが「ARASHI Blast in Hawaii」と名付けられた嵐のハワイコンサートでした。非常に幅広い年齢層の15000人がハワイを訪れました。

しかし、Brand USAはこれに満足していません。アメリカを訪問する日本人観光客のなかで2つ以上の州を訪問しているのは、わずか10%に過ぎないというデータがあり、いかに日本人観光客を複数の州に訪問させるかというのがBrand USAのテーマです。

そこはHTAとBrand USAの思いが対立するところですが。

当初Brand USAは、2016年にアメリカを訪問する日本人観光客のターゲットを375万人としていましたが、その目標をすでに達成してしまったため、450万人に目標を上方修正しました。

Brand USAの戦略はMICE、つまりMeeting、Incentive Tour、Convention、Exhibitionを積極的に活用してきましたが、今回、アメリカの国立公園を中心にアメリカの自然をプロモーションする戦略を前面に出しています。

特にIMAXのような大画面用の国立公園の映像を作成し、ターゲットとする国で公開する予定です。

資金調達などBrand USAの手法に学ぶところはたくさんあります。

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