新聞紙上を賑わせているTPAやTAAって何?TPPがアメリカ国内で揉めている点を分かりやすく解説します。そして不透明すぎて誰も明かせなかった日本のTPP署名までのスケジュールを大胆に予想します。
まず、私は著作権の非親告罪化、食の安全が担保されていないなど内容が分からない現状のTPPには反対です。ただ、現実的に可決される可能性が高いことを踏まえると、前もってやるべき内容と期限を考えスケジューリングしておくことも、議員として必要なことだと思っています。
「TPP」とその関連法案「TPA」「TAA」それぞれの内容は?
6月18日、米議会下院において、TPP妥結の前提となるTPA(貿易促進権限)法案が可決しました。今後は、上院での採決に移る予定です。本来は7月末までにTAA(貿易調整援助)法案を下院で再採決の方針でしたが、ここに来て、TPA,TAAを分離して再採決し、TPAを優先して成立させる方針に転換しました。
そこで、TPPと国内法国会承認までのスケジュールをお話する前に、まずはTPPとその関連法案であるTPA、TAAの関係と内容について整理してみましょう。
TPPは、多国間の経済の自由化を目的とした経済連携協定(EPA)のことですが、このTPP締結のカギとなるのがTPAで、大統領に交渉についての権限を与える法案のことです。
アメリカの場合、議会が外国との貿易交渉に関する取り決めに関する権限を持っています。これを一時的に大統領に委任するのがTPA法案です。これがないと、米大統領と合意したTPP条約自体が議会から修正を要求される可能性があります。しかし、TPA法案が通ると、大統領にTPP交渉妥結に関する権限が一任され、TPPを巡る動きが早まります。
また、TPPによる影響で職を失った国内の労働者に対して一時的に支援などをするのがTAAです。ここで問題なのは、オバマ大統領は現時点ではTPPの交渉の前提として「TAAも必要」としていることです。この点は方針転換をして、TPA法案のみで進めて行く可能性もあり、予断を許しません。
TPP締結に向けたスケジュール
今問題となっているのは、日本、アメリカともに、TPP締結までに残された時間が限られているということです。アメリカの場合、来年秋に大統領選挙が行われますので、オバマ大統領の任期中にTPPに関する全てを整える必要があります。同様に日本も来年7月に参議院選挙がありますので、通常国会会期末(来年6月)までに、TPP署名を目指すことになるでしょう。
そこで、TPPが署名されてしまうまでの予想スケジュールを公開します。
「TAA法案成立」は7月末、「最終合意」については、著作権の非親告罪化、関税、知的財産に関する閣僚級会談が残っているため、8月末までかかると予想されます。
最終合意後は、「リーガルスクラビング(法的洗い出し)」を行いますが、国際法との調整、国内法との整合性など確認、調整するための作業を行うため、多くの時間を要します。著作権の非親告罪化による著作権法改正に伴う議論で大混乱となる可能性もありますが、期限を考えると、「英語条文確定」を含めて、年末までに急ピッチで行う必要があるでしょう。
さらに、来年1月に翻訳が完了し、このタイミングで日本語条文を公開されることになるのではないでしょうか。正本への「署名」を来年2月までに行います。そして来年の通常国会で「TPPの条約と国内法国会承認」、遅くとも通常国会会期末の6月までには「批准」という内容が、妥当ではないかと思っています。
おそらく、これがぎりぎりのスケジュールですので、少しでもずれると、アメリカの大統領選挙があるため、TPPの締結自体ができなくなる可能性もまだあります。
この件、引き続き注視をし、最悪のケースに備えて準備をしておきたいと思います。
(2015年6月20日「山田太郎ボイス」より転載)