DeNA南場会長「キュレーションメディア、再開は全くの白紙」WELQ問題で会見

「『DeNAは儲け主義だよね。だから、こうした問題が起きるんだよ』といった声は本当につらかったですし、深く反省しました」(守安CEO)

ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は3月13日、医療・ヘルスケア情報のキュレーションメディア「WELQ(ウェルク)」の不正確な医療情報や制作体制に端を発した一連の騒動の第三者委員会による調査報告書(全文要約版)を受領したことに加えて、関係者の処分などを含む今後の体制について発表した。(これまでの経緯は以下参照)

TechCrunch Japanでも第三者委員会の調査報告書の概要について報じたが、発表に合わせて同日、東京・渋谷にて第三者委員会およびDeNAによる記者会見が開かれた。冒頭、第三者員会の会見では、第三者委員会委員長の名取勝也弁護士、委員の西川元啓弁護士、岡村久道弁護士、沖田美恵子弁護士が出席した。会見では名取氏の口から第三者委員会の調査報告書の概要が語られたのち、DeNAの会見が行われた。

事業の定義が曖昧、管理体制が不十分だった

DeNAの会見にはDeNA代表取締役CEOの守安功氏のほかDeNAの創業者であり代表取締役会長兼執行役員の南場智子氏(3月13日より代表に復帰)、DeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏の3人が出席。

冒頭、守安氏の口から「当社、キュレーション事業における一連の騒動により、ご迷惑をお掛けしたみなさまに深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ありませんでした」(守安氏)と謝罪し、改めて騒動の経緯とついて見解を述べた。

今回の騒動が起きてしまった原因はどこにあるのか? 守安氏はその原因は3点に集約されると語った。

1. 事業において最も大切な利用者への本質的な価値、世の中への貢献が考えられていなかった

2. キュレーションメディア事業の定義、理解が曖昧なままだった

3. 問題を早期に発見、チェックする管理体制が不十分だった

こうした事実を踏まえ、今後はチェック、管理体制を導入するだけでなく、守安氏を含めた経営陣を筆頭に全従業員の徹底的な意識改革を行っていくとしている。具体的には、カスタマーサービスや運営に届いていることをチェックし事業運営に反映していくだけでなく、新規事業などにおいては、社外の有識者の方からアドバイスをもらうなど、客観的な視点を交えて正しい事業運営がされているかを議論していくそうだ。

「この3カ月間、社内外の多くの方からさまざまな声をいただきました。その中でも『DeNAは儲け主義だよね。だから、こうした問題が起きるんだよ』といった声は本当につらかったですし、深く反省しました。今後はユーザーへの提供価値、世の中にどういった貢献をしていくのか、を事業推進の中枢に据え、全ての意思決定、行動を変えていいきたいと思っています」(守安氏)

また、3月13日開催の取締役会において、取締役会長から代表取締役会長兼執行役員となった南場氏は、「この度は一連の問題により、ご迷惑をお掛けしたみなさんに心から深くお詫び申し上げます。私自身も会長として十分にチェック&バランスの役割を行えなかったことを戒め、今後は私も代表取締役として強い決意を持って守安とともに会社全体の変革に取り組んでいきます」(南場氏)と語り、守安氏と代表取締役2人体制でコンプライアンスや管理体制の強化を図っていくとした。

キュレーションメディアの再開予定は白紙

また、記者会見では質疑応答も行われた。その一部の内容をお伝えする。

-- 今回の騒動の根本的な問題は何だったのでしょうか?

守安氏:先ほどと少し被ってしまいますが、キュレーション事業自体、どんな価値をユーザーに提供していくのか、そしてそれが社会的にどういった意義をもたらすのかが徹底的に議論されていなかった。それ故に事業運営がちぐはぐになってしまったと思います。

また、企業買収からPMI( Post Merger Integration:合併後の統合)、そして事業拡大とフェーズが進むにつれて"攻めの体制"は出来上がっていたのですが、"守りの体制"が出来上がっていなかった。そのため、このような騒動が起きてしまったのかな、と思います。

-- 南場さんにお伺いしたいのですが、キュレーション事業は今後も続けていく予定はあるのでしょうか?仮に続けていくとするならば、事業と柱の1つとして考えますか?

南場:キュレーション事業の継続に関しては全く目処が立っていません。白紙です。

この3カ月間、事業として継続することが可能か、また再開ありきではなく、どのような形であれば、問題を起こさないサービスになるか検討は進めてきました。事実として、多くのユーザーが楽しんでいたサービスもありましたし、「復旧をしないのか?」という声もたくさんいただきました。サービス事業者としてはすごくありがたいですし、バーティカルに情報を提供するサービスへのニーズはあるな、と思いました。

ただし、同じ形で再開することはあり得ず、どのような形であればありえるのか。メディア型にしても、編集体制、校閲体制、教育体制など社外の専門家に話を聞くと、非常に奥が深く、経験のない我々が形だけ整えてできるものではない。そのため全く再開の目処が立っていない。いわんや、収益の柱などとするのはあり得ません。

-- また南場さんが代表取締役に戻られましたが、具体的に何が変わるのでしょうか?

南場:「DeNAイコール創業社長」のイメージが強くなってしまうのを避けるため、これまでは「社会の公器として発展させていきたい」という思いから若い世代にバトンタッチすること、最終的な意思決定者をはっきりさせるために代表取締役は1人にすることを重視してきましたが、そのような形にこだわってはいられない事態になってきた。この問題は私も会長という立場でありながら見過ごしてしまった。

代表取締役に戻ったからといって問題が解決するわけではありませんが、守安と力を合わせて複眼的に意思決定を行っていきたいと思います。

守安氏、事業責任者2人の責任の違いは?

-- 事業責任者の対応について、村田マリさん(執行役員メディア統括部長兼Palette事業推進統括部長)は辞任意向、中川綾太郎氏(ペロリ代表取締役)は辞任となっていますが、この違いは何でしょうか?

守安:辞任意向と辞任の違いに関してですが、書類としてもらっているか、メールベースでもらっているかの差です。村田マリは海外在住ということもあって、メールでのやり取りが基本なので違いが出ています。

-- 今回、事業担当者の2人に関しては厳しい対応をとられていると思うのですが、一方で大企業として本来、買収した会社を社会の公器として導くことも重要だったんじゃないかな、と思います。そもそも、DeNA自体がベンチャーの雄として成長されてきたことも踏まえて、会社の代表の責任について守安さんと南場さんにお伺いしたいです。

守安:この3カ月間、私自身すごく反省しましたし、いろいろ悩みました。これだけ大きな社会問題となり、さまざまな方にご迷惑をお掛けしてしまったことを自分が先頭に立ってリカバリーしていきたい。その思いはずっと持ち続けていた一方で、自分が先頭に立ってやっていくのはベストなのかは迷い、南場にも相談しました。また取締役会でもたくさん議論を重ねた結果、この決定に至りました。

南場:守安が申した通り、私にも相談されましたし、私自身も今後のDeNAを作っていくにはどうやっていくのが一番良いのか、随分と悩みました。もちろん守安が代表取締役社長として継続するのが良いことなのかどうか、取締役会でも重点的に議論を重ねました。

本件に関して、守安は事業を推進する立場として責任は重いけれど、違法である実態を認識した時点で自制するように指示を適切にしたこと、他の事業に対する責任を全うする必要性があることから、守安を除く全員一致の見解で継続してやってもらうことになりました。

過去どうだったかよりも、今後のDeNAを作っていくことが大事ですので、そういう意味では代表取締役の2人は厳しく監視されることになります。

-- 失礼な言い方になるかもしれませんが、今回の対応はベンチャーの尻尾切りをしているような感じもします。かつてベンチャーの創業者だった南場さんは、その点どのようにお考えでしょうか?

南場:キュレーション事業において、相当なコンプライアンス違反があったことについては直接の事業責任者の責任は重い。そこを甘くなってしまっては、今後のDeNAは作れない、というも思いから取締役会の総意で今回の決断に至りました。

この2人の事業責任者は一生懸命、誠心誠意、事業に打ち込んでいましたし、このような事態になった後も第三者委員会の調査にも誠実に協力してくれた。なにか悪徳なことを企んでいる2人ではありません。そういう意味では、有能な2人の若者を正しく導けなかったDeNAの責任は重いと捉えています。これはずっと私たちが背負っていかなければいけないことだと思っています。

-- 代表取締役を辞任後、2人はDeNAに籍は残るのでしょうか?もし残る場合は、どこの所属になるのでしょうか?

守安:両名とも籍に関しては、DeNA本体の人事付けになります。今後、どういった役割を担ってもらうかは現時点で未定です。

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