SMSを無用化する。チャット・ボット・プラットフォームを分岐させる。友達とオフラインで会うのを助ける。人工知能を強化する。ユーザーを喜ばせる。こういったところが2016年のFacebook Messengerのロードマップのようだ。このチャット・サービスには今や8億人の月間アクティブ・ユーザーがいる。これは昨年6月の7億人から1億人もアップしている。 3月には6億人、2014年11月に5億人だった。
この数字でも明らかだが、Nielsenの調査によると、Facebook Messengerは2015年でもっとも急速な成長を遂げたプラットフォームだった。iOSアプリとしてはFacebook本体のアプリに次ぐ2位のダウンロード数となっている。 やり取りされる写真は月間100億枚以上だという。
一部の市場ではすでに独占的な地位を獲得したFacebookのチャット・アプリは、ライバルを根絶し、デベロッパーを組織して強固なエコシステムを作り、これまでのチャットとは異なる総合的なメッセージング・サービスとなるべく動き始める準備が整ったといえるだろう。
今日(米国時間1/7)発表された公式ブログの記事でMessengerの責任者、 David Marcusは2016年の戦略を概括している一方、私は昨日、Messenggerのプロダクトのトップ、Stan
Chudnovskyを取材する機会があった。下記はMessengerの戦略と私が取材で得た感触をまとめたものだ。
まず2015年のMessengerの実績は―
処理速度の改善
ビデオ通話
絵文字、ハンドルネーム、カラーテーマによる会話のカスタマイズ
Messengerを利用した顧客サポート
Messenger内での支払いと受け取り
コンテンツと表現のためのアプリ制作のプラットフォーム
ロケーション共有の改善
発呼者/メッセンジャー ID
友達でないユーザーとのチャット
Photo Magicによる写真の自動共有
バーチャル・アシスタント、M
交通機関プラットフォームとなるUberアプリ
2016の計画と予測
計画: 電話番号を追放する
Messengerは、アメリカではメッセージアプリとして(Googleには悪いが)圧倒的に優位な地位を築いている。多少とも意味のある競争相手はSMS/iMessageだけだ。FacebookのMarcusは「SMSというのは昔の二つ折り携帯に適合したサービスだ。今やわれわれはスマートフォンの時代のチャットを必要としている。写真、スタンプ、絵文字、GIFアニメ、支払い、ロケーション、交通機関などありとあらゆるコンテンツの処理がチャットには求められている。SMSは多様なコンテンツをうまく処理できない。Messengerは人々にSMSを捨てるよう説得することができるだろう。
MessengerはFacebookのユーザーなら誰でも利用でき、誰とでもどんなメッセージでも交換できるので、相手の電話番号を知る必要さえほとんどなくなっている。 インターネットに接続している人間すべてを一つの巨大なコミュニティーにまとめ上げるのがMessengerにとっての「次の大きな飛躍」となるだろう。
予測:ビデオ・メッセージの時代が来る
モバイル時代に入って最大のヒットはビデオの普及だろう。しかし通話にビデオを用いるのはまだ始まったばかりで問題も多い。Skypeは最低だしFaceTimeはAppleのiOSデバイスでしか動作しない。MessengerはすでにVoIPによるオーディオ通話、ビデオ通話通話を実用化しているが、知名度がまだ低い。私はMessengerが2016年にはグループ・ビデオ会話サービスをスタートさせてこの状態を大きく変えるのではないかと考えている。多人数によるミーティングや会議の処理となればSMSに勝ち目はないだろう。
計画:チャットのスレッドは新しいアプリだ
ユーザーが今まで電話で行っていたさまざまな作業がMessengerのスレッド内でできるようになった。検索がウェブの中心を占めていたのと同じような意味で、今やチャットがモバイル・サービスの中心だといってもいい。
Facebookはその力をもってチャットを通販やコンテンツ流通などのプラットフォームにしようとしている。
Marcusは「Messengerは企業やサービスからアイテムを購入する(おそらく繰り返し購入することになるだろう) 新しい方法だ。ユーザーはFacebook
Messengerを使って、きわめてスムーズかつ快適に、車を呼び、飛行機を予約し、カスタマーサービスと話すことができるようになる」と書いている。
予測:カスタマー・サービスは音声の録音メッセージからテキスト・メニューに変わる
Facebookは企業がカスタマー・サービスをMessenger内で運用し、自社のFacebookページと統合することによって、専用アプルをメンテナンスする必要なしに、はるかに快適で効率的な顧客サポートを可能にするよう望んでいる。ほとんどすべてのビジネスは顧客とのコミュニケーションを必要とする。
Facebook Messengerを利用すれば企業はそうしたコミュニケーションを無料ないし圧倒的な低価格で提供できる。現在Messengerではカスタマー・サービスで利用するための実験を始めたばかりだが、近くFacebookではMessengerのスレッドにメニューを表示するフォーマットを正式に提供するだろう。あの延々と続く録音メッセージに応じて数字キーを押すという不快な体験が追放されることを望むものだ。
計画:Messengerでソーシャル・スペースを作る
われわれは毎日、Messengerでビジネスや私生活の親しい友だちと会話をしている。Facebookの普及率を考えるなら、Messengerを他の種類の会話にも使えるようにしようと考えるのは自然だ。FacebookはWhatsApp,などのチャット専用サービスの例にならって、スレッドのカスタム化、個人化を図っている。チャットの責任者、Marcusは「〔Messengerでの会話は〕個人的な意味として社会における握手に相当する」と書いている。Facebookはユーザーが「第三の場所」、つまり家庭でもなくオフィスでもない、リラックスして息抜きができる社交の場でMessengerが活用されるように方策を講じていく。
予測:オフラインでの集まりにMessengerが使われる
Facebookはユーザーの友達をほとんど全員知っている。Facebookにログインしているユーザーが少々退屈したとき、同時に 友達の誰がオンラインになっているかも分かっている。Facebook「近くの友達」の方式を拡張して、たとえば、付近の友達の誰とオフラインで会えそうか探してくれるようになるだろう。
2015年にGoogleは同好の士を探してくれるソーシャル・アプリ、Who’s Downを発表、Danny TrinhのスタートアップはFreeをリリースした。どちらのアプリもオフラインで会えそうな友達を見つけるのが目的だ。残念ながらどちらのアプリも大きな反響を得ていない。どちらもユーザーベースが普遍的というレベルに届かず、従って実用性も低いままだ。しかしこれをユーザー8億人のMessengerがやれなるなら話はまったく違うものになるだろう。
計画: 人工知能の強化
FacebookはMessengerを他のチャット・サービスとの明確な差別化を図っている。その膨大な資金力とエンジニアリングの資源にものを言わせて、昨年夏、パーソナル・アシスタントのMを作りあげた。人力と人工知能を組み合わせたMは、残念ながら展開が遅く、多くの資源を食うプロジェクトとなった。しかしMの経験からFacebookはユーザーがMessengerに単なるメッセージ交換以上にどういう機能を望んでいるかを教えた。また自然言語についても知るところを増やしたに違いない。こうした経験からFacebookはMessengerのインターフェイスにさらに自然言語、特に音声による自然言語を導入するようになるだろう。コマンドに従って自他のメッセージを音声で読み上げる機能はユーザーに歓迎されるだろう。
予測:チャット・ボット・プラットフォーム
ユーザーがチャット・サービスに対して望む新機能はさまざまだが、そうした個別機能の実現よりも、むしろFacebookはユーザーの希望に沿ったアクティブな応答をするチャット・ボットを制作するるためのプラットフォームの構築に力を注ぐものと思われる。Mはこうしたチャット・ボットのモデルないしフラグシップとしての役割を果たすことになる。今週私はFacebookはデベロッパーに対してチャット開発のSDKへのアクセスを密かに増大させていることを探り出した。このSDKを使うと、テキスト・メッセージでメニューを表示し、ユーザーの応答に対応して自動的にメッセージを返し、また支払い処理を行うボットが簡単に開発できる。サードパーティーのデベロッパーが企業のためにMessengerを用いた効率的な顧客サービス・システムを書けるわけだ、こうしたアプリは企業の顧客にとって便利であるだけなく企業にとってもコスト削減や新たな収益機会の獲得などのメリットがある。
計画: ユーザーを喜ばせる
Facebookは今年、Messengerに思い切って風変わりな機能を持たせる。たとえばスレッド内に雪やハートの絵文字を降らせることができるようになる。一見子供っぽい試みだが、ありきたりの退屈なSMSを使っているのではないことを気づかせる効果がある。またユーザーはMessengerに少し人間らしさを感じ取るだろう。
予測:Facebookは若い世代を惹きつけるために思い切った手を打つ
Facebookには「もうクールなサービスではなくなったのでは?」という懸念が長くつきまとっている。しかし努力の重点がソーシャル・ネットワークによって社会的なつながりの場づくりから、メッセージ・プラットフォームづくりへ移るにつれ、Facebookには陳腐化を防ぐ新しいアプローチが必要になってくる。おそらくMessengerはアジアで圧倒的な人気を得ているメッセージ・サービスのライバル、LineやKakaoTalkから若者に支持されるためのヒントを多く得ているに違いない。
ライバルが提供している機能には、われわれ大人の目からすると、ばかばかしくトリビアルで子供っぱいものも含まれている。しかしこうした機能が遊び心をもつ若い層の支持の重要な源泉となっていることも確かだ。Facebookがスタンプを実装する際、社内には反対の声も強かった。しかし蓋を開けてみればFacebookのスタンプは圧倒的な支持を受けた。ユーザーが特定のプロダクトを毎日長時間使い続けるようになると、単に論理的であり機能性が高いというだけでは飽きてしまう。突拍子もないアイディアが歓迎される理由はそこにあるわけだ。
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(翻訳:滑川海彦@FacebookGoogle+)
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