まちの「おいしいパン屋」の冷凍パン、職場や家に配達します。スタートアップ「パンフォーユー」

「きちんと冷凍された冷凍パンなら、むしろ保存料要らずでおいしさが長持ちする」
パンフォーユー代表取締役の矢野健太氏
パンフォーユー代表取締役の矢野健太氏
TechCrunch日本版

冷凍食品というと、手抜き、おいしくない、体に悪いといったイメージを持つ人も多いことだろう。だが、おいしいパンが大好きなパンマニア、パン通の間では「きちんと冷凍された冷凍パンなら、むしろ保存料要らずでおいしさが長持ちする」というのが既に常識らしい。

パンフォーユーはそんな冷凍パンを、独自の基準で選んだパン屋さんからオフィスまたは個人へ宅配するサービスを提供するスタートアップだ。同社は10月2日、F Venturesと複数の個人投資家からの資金調達実施を発表した。第三者割当増資の引受先は以下の通りだ。

  • F Ventures Fund 1号投資事業有限責任組合
  • 紀信邦氏(ゆめみ監査役)
  • 佐藤裕介氏(ヘイ代表取締役社長)
  • 正林真之氏(正林国際特許商標事務所所長)
  • 千葉久義氏(エンジェル投資家)
  • 山口豪志氏(54代表取締役社長)

調達金額は非公開だが、関係者の情報および登記情報から総額約1350万円とみられる。

パンフォーユーは2017年1月の創業。群馬県桐生市で、ホテルやレストランなどのプロ向けに冷凍パンを製造・販売する、スタイルブレッドとの合弁会社として設立された。当初はオーダーメイド生産したパンを個人向けにネット販売していたが、サービスを提供していく中で「パン好きの人は、オーダーメイドできる、というよりは、いろいろな種類のパンを食べたがっている」ということが分かってきたそうだ。

パンフォーユー代表取締役の矢野健太氏は、「そこで1社のみから供給していたパン製造を複数社からの供給に切り替え、セレクトした地域のパン屋さんとユーザーをつなぐプラットフォームへと事業を転換することにした」と振り返る。現在パンフォーユーでは、複数のパンを楽しめる「パンセット」を提供するスタイルとなっている。

また一部の顧客で、個人ではなく法人宛に定期的な購入があったことから、福利厚生の一環としてのオフィス向けサービスを2018年5月から試験的に開始。この9月には「パンフォーユー・オフィス」として正式にリリースした。商品補充から在庫管理までお任せの「冷凍庫貸出プラン」とオフィスに既にある冷蔵庫の冷凍スペースを使う「セルフプラン」の2種のプランがあり、従業員は「オフィスグリコ」などの置き菓子サービスと同様に料金を支払い、電子レンジでパンを温めて食べる。

矢野氏によれば、試験導入した企業の評価は高いとのこと。大手企業やスタートアップ、コワーキングスペースなど、10月からの導入企業も含めると15社が利用する予定になっている。

冒頭にも挙げたが、冷凍パンに対するネガティブなイメージは依然として強い。そうした中で「実際に食べてもらえば『おいしい』ということを実感してもらえる」と矢野氏。「まずは食べてもらうところがスタートだ。そのためにもユーザーが手を出しやすい、オフィス向けサービスにも注力していきたい」と話す。「ユーザーからの評判はよく、ポテンシャルはあると自信を持っている。ぜひ気軽に一度、食べてみてほしい」(矢野氏)

事業モデルの変更に伴い、パンフォーユーでは経営陣によるMBOにより、スタイルブレッドとの資本提携を解消。今回の調達資金であらためて、複数のベーカリーを供給元としたサービスの再構築、運営体制の強化を図る。

「現在は7軒、10月には関東圏を中心とした10軒以上のパン屋との取引がスタートする。世の中に知られていないパンは全国、全世界にあるが、今後はそれを開拓していきたい。同時にオフィス販路を開拓することで、法人以外にも利用が広がっていくことを目指していく」(矢野氏)

矢野氏はまた「パン購入者が増え、購入データが増えることで、消費者の好みや、どういうものを食べたときにおいしいと感じるのか、といったデータの蓄積もできれば」とも話している。

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