活躍しろと言われる一方で、入試では入り口でふるい落とされる。女性にどうしてほしいというのか?

どんだけーなメッセージしか、もはや伝わってこない2018年夏......。
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いったい女性にどうしてほしいというのか。

政府も言ってるけど、少子化と生産年齢人口の減少が進む中で、女性の活躍の推進は喫緊の課題」だから、キラキラ輝いて働いてね。

でも、同じ職場にいたら、彼氏がいるかも知りたいし、飲んだら場合によっては口説きたくなるかもしれないし、なんなら体も触りたくなることもあるかもしれないけど、もし気を悪くしても、うまくかわして忘れてね。

でも、若いうちに結婚もせず、子供も作らないなんて女を捨てている感じでコワいし、「生産性」が大切だから子供たくさん産んでね。

え。子供ができたのか。育休とか、子供が熱出したとか、男性なみにフルタイムで働けないよね。困るなあ。

まあ、女性は子供をたくさん産んで、キラキラ家事、子育てしながら、職場や仕事に影響が出ないようにしてくれたらありがたい。

という、どんだけーなメッセージしか、もはや伝わってこない2018年夏......。

現在発売中の女性誌「Oggi 9月号」が多くの紙面を割いて「セクハラって結局なに?」という特集を組んでいる。その中で私も「セクハラ×仕事」というテーマでインタビューを受けた。

私の書いたブログ(85年、私はアナウンサーになった。 セクハラ発言「乗り越えてきた」世代が感じる責任)を読んでくれていた担当記者は、「あのブログ、若い女子の間でもすごく読まれているんですよね。なぜだかわかります?今もまったく同じだからですよ」と言う。

男女雇用機会均等法が施行された80年代、「だから女は面倒くさい」と思われるのが嫌で、セクハラをされても文句も言わずやり過ごしてきたことが今につながっているのならやりきれない、という思いを書いたのだが、担当記者は「今回、Oggiが読者300人に緊急アンケートをとったところ、82%がセクハラを受けた経験があると答えています。その中で、笑って受け流した、と答えたのが71%」と、教えてくれた。

あれから30年以上の歳月が流れても、何も変わっていない。私は「少なくとも、声をあげる女性が増え、こういう問題が表だって議論されるようになった。女性が働くことが当たり前になったからこその、80年代からの変化ですよね」と答えたものの、結局のところ男性が圧倒的な数を占める政治の世界や職場では、いくら「女性活躍」と口で音頭をとっても、何一つ本質的なところは変わらないのかと暗澹たる気持ちになる。

そんな中、「女性は年齢を重ねると、医師としてのアクティビティが下がる」から、入り口で事前にふるい落としましょう、という東京医科大学の驚愕の入試実態が明るみになった。文科省前局長が、その立場を利用して東京医大に働きかけ、我が息子の点数にゲタを履かせて合格させたというとんでもない所業も論外だが、「女性は結婚出産で育児をし、その場合勤務時間も長くできない」から、一律に女子学生の得点を減点して合格をしないように操作していたという事実は、もはや憲法違反ともいえる行為である。

女性医師が増えたら外科医が減るとか、実際フルタイムで働けない女医が増えたら患者に影響がでるという意見もあるけど、そうした事情や大学の要望は事前に受験生に告知すべきことだし、そもそも働き方の制度を変えず、医師を取り巻く過剰労働の環境整備もしないまま、入り口で不公正に女性をふるい落とす行為は、「女性活躍」と言いながら、抜本的な制度改革からは逃げる社会の写し鏡のようにも見える。これは医学界のみならず、一般企業の就職でも起きていることで、このまま男性中心社会の認識で女性を入り口で制限するようなことが続けば、政府の掲げる「女性活躍推進法」も、「仏造って魂入れず」、「絵に描いた餅」にしかならないだろう。

身内の話で恐縮ではあるが、ハフポストがスタートして5年が経った今、25人のメンバーのうち、女性は14人である。「採用のとき、性別、年齢、学歴は問わないので、意識的に女性を採ることはありません」と竹下隆一郎編集長。結果として女性が男性の数を上回ったわけだが、「育児で忙しかったら、身体の調子が悪かったら、みんなでサポートして乗り切ります。ここには多様性があり、弱さがあり、一時的な熱狂より、長続きするための仕組みづくりにつながっています」

ハフポストでは最近、こんな光景も普通になっている。

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女性が半数近くなると、自分たちの最大のパフォーマンスがどのような環境で発揮できるのか、前向きで活発なアイデアがどんどん生まれ現実化する。ハフポストの男性陣はワークライフバランスについて意識が高いこともあり、一般の男性中心の職場なら抵抗の強い試みに懐が深いということもあるだろうが、結果として、男性にとっても働きやすく持続性のある職場環境づくりにつながっていくというのが竹下編集長の強い思いだ。実際、今の時代に生きる女性発信の様々な企画も生まれ、今年はネットメディア初の黒字化に至るという組織にとっても大きな成果につながった。

こういうことを言うと、「なんでもかんでも増やせばいいのか」と言われるのだけど、じゃあ点数加算されて合格している男性はどうなのよと思ってしまう。女性が一定数を占めることでそれまでの景色は必ず変わる。政府も本気で女性活躍を推進するのならば、すでにノルウェーやフランス、イタリア、韓国他多くの国が実施している「クオータ制(政治、大企業の取締役会などの一定数を女性とすることを義務付ける法律)」など、優先すべき思いきった政策はまだまだ他にあるのではないかと思うのである。

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