時代の寵児と呼ばれる人たちがいる。流行の波に乗り、新しい理論や方法で大きな富と力を得る。しかし、ほとんどは短命に終わる。
1960年代、バフェットのパートナーシップは素晴らしい成果をあげていたが、フレッド・カー率いるファンドは、それを上回る好成績をあげていた。急成長を遂げる未公開株に大量投資して、短期間で利益を得る。高いリターンを求めてトレンドを乗り換えていくのだ。
バフェットとは対極的だが、カーは「全米一のファンド・マネージャー」「新時代のヒーロー」ともてはやされる。
しかしバフェットは浮つかず、自分のやり方を変えることもなかった。
「新しいやり方が大きな利益を生み出すことができ、同時にこれまでのやり方の効力が失せ、大きな損失を出す可能性があるとしても、私はこれまでのやり方を変えるつもりはない」
ほどなくバフェットの正しさが証明された。カーが廃業に追い込まれたのである。
1990年代後半に活躍したITバブル時代の寵児も同様の運命をたどる。流行に追随する投資は、長期で見れば"ヘマ"なのだ。それは企業についても同様だった。
時代の寵児アマゾン(1994年創業、97年に株式公開)もITバブル崩壊の影響を受け、株価が急降下した企業の一つだが、創業者のジェフ・ベゾスは当時、動揺する社員に「株式市場は短期的には投票計、長期的には重量計です」というバフェットの言葉を借りて、日々の株価の変動に慌てふためくのではなく、顧客のために最高のサービスを提供することの大切さを説いている。
結果、アマゾンはバブル崩壊を生き延びたばかりか、その後、Kindleなどの開発でさらなる成長を遂げることになった。ベゾスはバフェットについてこんな言葉を口にした。
「だいたいウォーレンの言うことには耳を傾けないといけないんだ」
バフェットの「原則」はベゾスの信念の支えでもあった。いつの時代も基本原則を堅持することの大切さを、バフェットはこう言っている。
「時代遅れになるような原則は、原則ではありません」
執筆:桑原 晃弥
本記事は書籍「1分間バフェット」(SBクリエイティブ刊)を再構成したものです。