過剰供給の解消に伴い、原油価格に上昇の兆し
市場心理の改善とドル安基調の中、世界銀行は、報告書「一次産品市場の見通し」最新版の中で、市場の過剰供給解消が見込まれるとして、2016年の原油価格予測を当初の1バレル当たり37ドルから41ドルに上方修正している。
原油市場は、1月中旬、1バレル当たり25ドルの低水準だったが、イラクとナイジェリアにおける減産、ならびに米国のシェールオイルなど、石油輸出国機構(OPEC)の非加盟国の減産を背景に、4月は1バレル当たり40ドルに回復した。主要産油国が提案した増産凍結に向けた4月中旬の協議では、結論が先送りされている。
「エネルギー価格は、過剰供給の解消により市場がバランスを取り戻す中、この1年を通じてわずかに上昇すると見られる。ただし、OPEC加盟国が大幅な増産に踏み切り、OPEC非加盟国の減産が予想ほど進まない場合、エネルギー価格はさらに下落する可能性がある。」と、本報告書の主席執筆者であるジョン・バフェス・シニア・エコノミストは述べている。
世界銀行が取り上げている主要一次産品価格指数は、2016年、いずれも前年よりも下落すると予測される。その背景には、長引く供給過剰や、工業用原材料(エネルギー、金属、動植物由来の工業原料など)については、新興国や途上国の低成長見通しがある。
原油、天然ガス、石炭などエネルギーの2016年価格見通しは、前年比24.7%の下落とした1月の予想から、19.3%のより緩やかな下落に修正された。金属や鉱物、農産物、肥料など、エネルギーを除く一次産品の今年の価格見通しは、1月の3.7%の下落という予想から5.1%の下落に下方修正された。
今年の金属価格は、1月に10.2%未満の下落見通しとされたが、中国による需要拡大予想を反映して、8.2%の下落に修正された。農産物価格は今年、大半の穀物や油糧種子作物が今年も豊作となると見られるため、1月の予想よりも大幅に下落するだろう。農産物価格は、エネルギー・コストの下落にも連動している。
資源国では、2000年代の商品相場急騰の際に、採掘、投資、生産が一気に進んだが、その多くで、一次産品価格下落により成長見通しが脅かされている。成長加速を期待して多額の資金を借り入れ、投資した国々は、一次産品価格の下落により予想通りの成長が見られない場合、債務返済や投資継続が困難になる可能性がある、と同報告の特集は指摘している。
現在、原油価格と金属価格が、2011年初頭のピーク時と比べ50~70%下落しており、天然資源開発プロジェクトは、複数の新興国や途上国で、既に保留または延期となっている。
世界銀行の「一次産品市場の見通し」は、1月、4月、7月、10月の年に4回発表される報告書であり、エネルギー、金属、農産物、貴金属、肥料などの主要一次産品について、詳細な市場分析を行っている。46品目について2026年までの価格見通しが、過去の価格データと共に掲載されている。
関連リンク
報告書「一次産品市場の見通し」