世界銀行は、エネルギーや金属をはじめとする工業用原材料の価格が2017年と2018年に上昇すると予測する。
世界銀行は、「一次産品市場の見通し」2017年4月版の中で、2017年の原油価格見通しを1バレル当たり55ドルに据え置き、2018年には平均60ドルに上昇すると予測している。石油輸出国機構(OPEC)加盟国および非加盟国の減産により原油価格は上昇し、市場は緩やかなリバランスの兆しを見せるだろう。ただし、米国のシェールオイル業界が予測を上回るペースで回復した場合、これらの原油価格見通しは下振れするリスクがある。
天然ガスや石炭も含めたエネルギー価格は、2017年に26%急騰し、2018年にはさらに8%上昇すると見られる。原油価格と同様、2017年の天然ガス価格は、米国での価格急騰に牽引されて15%上昇する見込みである。2017年の石炭価格は、世界の石炭消費量の半分を占める中国が行っている生産制限により、6%上昇すると見られる。
農産物、肥料、金属、鉱物資源など、エネルギーを除く一次産品の2017年の価格は、5年ぶりに上昇が予測される。2017年の金属価格は、中国での堅調な需要に加え、チリ、インドネシア、ペルーでの鉱山操業停止による供給制約のため16%急騰すると見込まれる。
大規模鉱山での労働者によるストライキや契約紛争が、銅価格上昇の一因となっている。一方、貴金属価格は、ベンチマーク金利の上昇と安全資産としての購入の減退に伴い、2017年は1%、2018年もさらに1%下落すると予測される。
エネルギーを除く一次産品のうち農産物価格は、2017年には、穀物価格の下落が食用油、油粕、原料農産物価格の上昇で相殺されるため、全体としてはほぼ横ばいになると予測される。
「小麦、メイズ(白トウモロコシ)、コメの在消比率は、好況により、15年ぶりの高水準に押し上げられた。2017年と2018年の主要穀物は分析の結果、世界的に供給過剰になると見られる。」と、同報告書の主席執筆者であるジョン・バフェス上級エコノミストは述べている。
コーヒー、ココア、茶などの飲料価格は、供給量が予想を上回るため、2017年は6%以上の下落が予測される。一方で、原料農産物価格は4%上昇するだろう。エルニーニョ及びラニーニャ現象の終息により、2017~2018年の農産物価格の見通しが上昇するリスクは限定的となる。
世界銀行が発表する「一次産品市場の見通し」は、エネルギー、金属、農産物、貴金属、肥料などの主要一次産品についての詳細な市場分析を行っており、46品目を対象に2030年までの価格見通しと過去の価格データを掲載している。