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2018年02月08日 10時50分 JST | 更新 2018年02月08日 10時50分 JST

「相撲」が「Sumo」になれない理由

ジョージア人が優勝したのだから、もっと別の視点から「Sumo」を報道できないか。

先週、ソマリア人の友人がフェイスブックで7年前の思い出写真を一枚載せた。

AOL

私が国連で勤務していたころ、ケニアのソマリア人難民キャンプで「若者フェスティバル」を開催し、その目玉イベントが相撲大会だった。特別な道具も必要なく、ルールも簡単で、地面に線さえ引くことができれば開催可能な相撲大会は、すぐに難民に受け入れられ、フェスティバルは大盛況だった。

私は以前から論じているが、相撲はグローバルなスポーツになる可能性を十分に秘めており、「Ryogoku」が「Sushi」並みの公用語になりえると思っている。今年の初場所は、ジョージア出身の栃ノ心の優勝で相撲のグローバル化が進むだろうと思った。ジョージアの一人当たりの平均年間所得は約50万円。関取になれば一か月足らずでそれくらい稼げるわけだから、ジャパンドリーム以外の何物でもない。今こそ、メディアと政府が一体となって相撲をジョージアや周辺国へ広めるチャンスだ。

しかし、日本のメディアは本当に情けない。どのチャンネルを付けても、相撲のことはやっているのだが、内容が「貴乃花親方が会見で笑いました!」とか「貴乃花親方、理事選立候補へ」とか「貴乃花親方、理事選落選」とかばっかり。彼が笑ったことがそんなに大きなニュースなの?プロのコメンテーターたちが、「笑いましたねー」「いあー、やっぱり笑顔っていいですね」などと真顔で論じれる感覚がちょっと理解できない。すでに長年理事をしていた親方が、また理事になろうがなるまいが、おそらくそこまで相撲界も日本社会も変わらない。彼が当選することで変わるのなら、もうとっくに変わっているはずだからだ。

じゃあ、なんでここまで貴乃花親方の言動に注目が集まるのか。勝手な推測で申し訳ないが、私には一つの理由しか考えられない。年6場所あるうち、最後に日本人力士が4場所以上優勝したのはいつかご存じだろうか?何と、2001年まで遡る。貴乃花親方の全盛期時代であり、つまり、彼は日本人が外国人力士と対等に渡り合えることができていた最後の横綱なのだ。言い換えれば、未だに「ああ、日本人が強かったあの時代が懐かしいな」という想いが相撲ファンの中に根強くあるということではないか。

ジョージア人が優勝したのだから、もっと別の視点から「Sumo」を報道できないか。日本在住のジョージア人留学生、ニニさんに話を聞きに行ってみた。栃ノ心優勝には興奮気味で「もう、ジョージアでは大ニュースよ!」と話した。しかし、ニニさんは、2016年の来日時は、相撲には全く興味がなかったという。

「スポーツって健康なものっていうイメージがありますよね。でも、相撲の力士さんたちは健康的には見えない。だから、どうしてもスポーツって感じがしなかった。日本文化が大好きで来たのだけど、相撲だけはどうしても理解できなかった。ある日、東京を友人らと散策していたら、偶然、両国国技館に行きついて、入ってみたら、大学生の相撲大会がやっていました。最初に衝撃を受けたのが、スポーツ観戦場に、靴を脱いで4人ずつで座る畳席があることです。そこに座って相撲を見てみました。それで、初めて、枠の外に出るか体の一部が地面についたら負けというルールを知り、そしたらだんだんのめり込んでいき、数十分後には大きな声で応援している自分がいました。力士が様々な技を用いることや、力士はただ太っているだけでなく、忍耐力や筋肉を持ち合わせていることがわかりました。ああ、これは立派なスポーツなんだとわかりました。当時、すでに二人のジョージア人力士がいることは知っていましたから、とても誇りに思えるようになりました。ジョージア独立記念日に東京の大使館でレセプションがあって、臥牙丸(ジョージア出身力士)に会いました。栃ノ心は来れなかったけど、臥牙丸から、力士は日常でも普段着を身に付けることができないことなどを教えてもらいました。それでも、毎日相撲を見るようなまでにはなりませんでしたが、栃ノ心の優勝の現実味が帯びてからは毎日テレビに釘付けでした。優勝した瞬間は飛び上がって喜びました。ジョージアという国はあまり日本では知られていなかったから、栃ノ心が祖国の知名度を向上してくれたことを感謝しています。ジョージアでは、各メディアも大々的に取り上げていますし、栃ノ心が日本にいることを知らなかった人も、今は全員知っているでしょう」

Nini
臥牙丸と記念撮影するニニさん(右)

私は口が裂けても言えなかった。日本のメディアでは、昔の横綱が笑ったことがより騒がれているなんて。メディアが、相撲に興味を持ち始めたジョージア人をもっと取り上げ、政府が人材育成の一環で、元力士を講師としてジョージアへ派遣したり、相撲留学枠を作って日本に招待したりすれば、日本の国際的地位向上につながるのは間違いない。日本の高校球児がメジャーリーグを目指すように、世界の若者たちが「Ryogoku」を目指すようになる日がくることを願っている。しかし、私たちが「日本人力士」対「外国人力士」という構図しか描けないようでは、そんな日は永遠に訪れないだろう。

*難民キャンプで相撲大会を開催した話をもっと知りたい方はこちらをクリックしてください。