ベトナム人を連れて「ハローワーク」に行ってみたら「ハロー」なんて一度も言われなかった

「これでは『ハローワーク』ではなく、『グッバイワーク』じゃないか」と言い、3人で笑った。
(写真はイメージ)
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Yuriko Nakao / Reuters

ベトナム人留学生の友人のトゥさんから「妻の今やっているバイトがホテルのシーツを大量に洗う仕事で、かなりきついから他の仕事を探している」という相談を受けた。トゥさん夫婦は来日してまだ1年未満で日本語があまりできない。私は、最寄りの「ハローワーク南魚沼」に電話してみた。そしたら、日本語ができない方も相談窓口で対応していただけるということだった。

ハローワークでは、番号札で呼ばれ、トゥさんの妻、バナインさんが窓口に座り、私とトゥさんは後ろに座った。担当の男性が自分の名前も名乗らず、短刀直入に「えーと、日本語は?」と聞き、バナインさんは「少しだけ」と伝えた。男性は「じゃあ、まず、就労許可証を見せてもらえますか?」と英語で言い、トゥさんがバックからすぐに取り出し、それを手渡した。

男性はそれをゆっくり記入し、バナインさんに最終学歴や連絡先などをたずねた。一連の質問を終え、男性はバナインさんに登録カードを手渡した。そして、英語で、「言語の問題がありますので、仕事を見つけるのは難しいと思います。あったとしてもブルーカラーのものでしょう。とりあえず、メールアドレスを頂きましたので、何かありましたら、連絡いたします。それでは今日はこれで」と男性は立ち上がろうとした。

え、もう終わり?バナインさんがどんな仕事をしたいと思っているかとか、職歴とか全く聞かないの?「何か質問などありますか?」も聞いていない。

私はすかさず、バナインさんに「何か聞きたいことは?」と尋ねたが、下を向いたままだ。私は、「日本語ができなくてもできる就職口のリストなどはありませんか?」と尋ねた。そしたら、男性は「すべて日本語ができるという前提でやっておりますので」と言う。「外国の方の専用窓口はないのですか?」と聞くと、「ホームページを見てくれたらいいのですが、大きな都市でないとないと思いますね」と言う。私が「各事業所に就職口を紹介してもらう際に、『日本語ができなくてもできる仕事の場合は、記載をお願いします?』とお願いするだけの事だから、そんなに手間はかからないのではないでしょうか?」と尋ねると、男性は「ここで、私とあなたがそんなことを議論しても仕方ないでしょ」と言った。私は「利用者の意見を聞いた上でサービス向上につなげていこうとは思わないのですか?」と尋ねると、「ここは市役所ではありませんから」と言った。

最後に男性は私に「あなたはどこの国の人ですか?日本語がうまいですね」と言い、私が「日本人です」と言うと、「え?じゃあ、英語ができるのですね。へえ」と言葉を詰まらせた。

私は一連のやりとりをバナインさんに説明し、退室した。

家に帰って、厚労省のホームページに行くと、「ハローワーク憲章」というものを見つけた。

窓口サービスの基本方針

  • 皆さまの立場に立ち、親身になって対応します。
  • 皆さまのご希望に応じたサービスを的確にご案内し、各種の制度をわかりやすく説明します。
  • 仕事をお探しの方の就職の可能性を広げるため、一人ひとりに最適なサービスを提供します。
  • 仕事をお探しの方が何にお困りか気を配り、関係機関と協力し、仕事と生活の両面から支援します。
  • 仕事をお探しの方のニーズに応じた求人の確保に努めます。
  • 皆さまのご意見、ご要望をサービス改善につなげます。

この憲章をあの男性は読んだことがあるのだろうか?帰りの車の中で、私は、「これでは『ハローワーク』ではなく、『グッバイワーク』じゃないか」と言い、3人で笑った。

日本政府は外国人労働者の受け入れを本格化させるようだが、改善点は山ほどありそうだ。

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