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2018年08月20日 15時57分 JST | 更新 2018年08月20日 15時57分 JST

3万年の航海 徹底再現プロジェクト

2013年にはじまったこのプロジェクトは、2016年、2017年に実験航海を行い、いよいよ「本番」に向けて動き出しています。

時事通信社
「3万年前の航海徹底再現プロジェクト」の草舟進水式で行われた笛、太鼓などによる魔よけの儀式=2016年07月11日、沖縄県与那国町 

「3万年の航海 徹底再現プロジェクト」をご存知でしょうか? 国立科学博物館による、日本人の祖先による大航海を再現しようというチャレンジです。

海を渡ってやってきた日本人の祖先

私たち日本人の祖先は、およそ3万年前に大陸から渡来したと考えられています。これまで、その経路は朝鮮半島から九州へのルート、サハリンから北海道へのルートが知られていました。この2つのルートは、日本列島が大陸と地続きだった頃に陸路で入ってきたものです。

しかし、最近になって、人類の移動に関する考古学的分析から、もうひとつのルートがあることがわかってきました。それは、台湾のあたりから南西諸島を島伝いに海を渡って入るルートです。どのようにしてこの南回りルートの存在が明らかになったのかは、このプロジェクトリーダーの海部陽介さんが「日本人はどこから来たのか?」(文藝春秋)に詳しく記しています。

海洋ルートの不思議

しかし、このルートにはさまざまな不思議があります。まず、3万年前の人に海を渡る技術があったのでしょうか? 彼らは単に漂着したのではないかと考えるのが自然です。

しかし、台湾と南西諸島の間には流れの早い海流が流れているため、単に流されるだけで南西諸島に漂着する可能性は極めて低いのです。海部さんたちは、台湾からブイを流して実際にそれを確かめました。よって、彼らは何らかの航海術を用いて、海流を乗り越えてやってきたに違いないのです。

そこで、彼らの航海術を知りたくなります。しかし、当時の遺跡も記録も残っていません。石器時代の技術では大きな丸太を切り倒しくり抜いて船をつくるなどとても無理です。また、GPSはおろか羅針盤もない時代に大海原で方角を知るのも至難の業です。太陽の動きから推測したとしても、文字をもたない彼らにはそれを記録するすべもありません。

わからないなら、やってみよう!

この謎を解き明かすには、もう自分たちがやってみるしかない、というのが、「3万年の航海 徹底再現プロジェクト」です。当時の知識と技術だけを用いて、はたして大陸から日本列島にたどり着けるものなのか、知恵を振り絞って考え、実際にやってみようというわけです。

2013年にはじまったこのプロジェクトは、2016年、2017年に実験航海を行い、いよいよ「本番」に向けて動き出しています。

見えない未来を目指して

じつは、台湾からは南西諸島は見えません。つまり、私たちの祖先は、大陸から大海原を眺め、水平線のむこうに未踏の地があると信じ、そこで未来を切り開こうと海に繰り出したチャレンジャーだったのです。「3万年の航海 徹底再現プロジェクト」は学術活動であると同時に、祖先の見た夢を追体験するプロジェクトでもあります。

クラウドファンディング

このプロジェクトには、新しい試みとしてクラウドファンディングが用いられています。日本において、これほど大掛かりな学術調査がクラウドファンディングで行われるのは他に例がありません。しかも、実施するのは日本を代表する国立研究機関である国立科学博物館です。

これまで、日本の学術研究は主に国からの助成金によって推進されてきました。しかし、近年、国による助成金は、「選択と集中」の考え方にもとづき、日本の経済発展により直接的に貢献する研究、成果の出る確実性の高い研究を重視するようになっています。

そうした政策の是非はさておき、科博はこの夢のある研究プロジェクトを市民とともに行おうと考え、あえてクラウドファンディングを導入したのでしょう。興味のある方はぜひ参加してみてください。

「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」クラウドファンディングページ