多くのネットベンチャーにとって、経営面では10億ドル・クラブへの入会が大きな目標となる。どのようなスタートアップ企業が10億ドルの評価を得ているかを見ておけば、ハイテク産業の動向を探ることもできる。
バリュエーションが10億ドルを突破したスタートアップの一覧表は、時々、メディアで掲載される。そこでまず、今月22日(2014年1月22日)にWSJのブログ(Digit)にリストアップされていた、評価額10億ドル突破のスタートアップ36社の一覧表を掲げておく。オンライン分野だけではなくて、アパレル分野、医療分野、モバイルメーカーさらにロケットなどの宇宙分野も含まれている。国別では、米国が25社、中国が8社、欧州が3社である。
今年中にこのうちの何社がIPOするかが楽しみだ。米国のスタートアップには、Dropbox、Pinterest、Uber、Square、Airbnb、Snapchat、Evernoteなど、日本でも知られている企業が顔を並べている。オンライン(クラウド)・ストレージ・サービス分野ではDropboxの他に評価額20億ドルでBoxも選ばれている。決済系では、日本でもサービスを開始したSquareに加えて、18億ドルの評価を得ているStripeがTwitterとの提携も噂されており、PayPalを追う台風の目となってきた。90億ドルもの評価を得ているPalantirは、NSA、FBI、CIAも顧客とするビッグデータ分析サービス会社で、テロリストネットワークを調べるための最も効果的なツールを提供していると言われている。最近話題になってきたFabは、ゲイ専門のSNSを止めて、デザイン商品に特化したオンラインショップで頭角を現し、12億ドルの評価を得るようになった。
中国のスタートアップも気になるので、ザッと見ておく。100億ドル評価のBeijing Xiaomi Technology(小米、シャオミ)は、急成長しているスマホメーカーである。73億ドルのJingdongはオンライン通販サイト360buy.comを運営し、30億ドルのVANCL(凡客)は低価格のカジュアルウェアを中心にしたアパレル通販サイトである。捜狗(Sogou、ソゥゴゥ)はポータルサイトSohuが運営する中国検索エンジン会社。
欧州からはスエーデンのSpotify。40億ドルの評価を得ている。ストリーム系音楽配信サービス会社で、日本でも間もなくサービスが始まる予定である。またゲーム"Angry Birds"で有名なRovioや、人気沸騰中のメッセージサービスを提供するWhatsAppが漏れているのは、最近資金調達を実施していないため。
少し古いが、2013年10月30日にSilicon Valley Business Journalも評価10億ドル突破のスタートアップをリストアップしていたので、以下に示す。それ以降に上場したzulilyとTwitterも含まれていた。WSJのリストに載っていない5社を太字で示しておく。
- Fab
- Coupons.com
- Theranos
- zulily(既に上場)
- Good Technology
- MongoDB
- Pure Storage
- Evernote
- Automattic
- LivingSocial
- Lending Club
- Sapphire Energy
- Woodman Labs (GoPro)
- Airbnb
- Bloom Energy
- Fanatics
- Square
- Uber
- Dropbox
- Space Exploration Technologies(SpaceX)
- Box
- Palantir Technologies
- Twitter(既に上場)
Theranosは、薬局チェーンWalgreensで短時間で血液の分析結果が得られる血液検査サービスを提供している。AutomatticはWordPress.comの親会社で、ファイル共有サービスも提供している。LivingSocialはクーポン共同購入サイトを運用している。Lending Clubはオンライン上で個人間での資金の貸し借りを実現する消費者金融サイト。Sapphire Energyは 工業微生物を使ったGreen Crudeを開発している。
- Introducing WSJ's 'Billion-Dollar Startup Club' Interactive(WSJ)
- 24 billion-dollar startups:70% from Silicon Valley, San Francisco(Silicon Valley Business Journal)
(この記事は「media pub」2014年1月26日付記事の転載です)