日本列島の中で新幹線が走っていない、もしくは開通のめどがたっていない唯一のエリアをご存知だろうか?それは四国。1970年代以降、歴代の知事や企業などが再三誘致に動いてきたが「採算が合わない」として計画はストップした。しかし再び「夢を現実に」と四国が動き始めた。
四国4県やJR四国などの経済団体でつくる「四国の鉄道高速化検討準備会」が、四国への新幹線の導入に向けた活動を本格化すると発表。経済効果や建設費などの調査を6月から開始、2013年度中に調査結果をまとめて国へ提言するという。
地元の四国新聞によると、
準備会は、官民が四国の鉄道について議論する「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会」の最終提言を受け、新幹線の早期事業化のため11年に発足した。準備会では今後、フル規格やレール幅の狭い新幹線、フリーゲージトレイン(軌間可変電車)など想定できる高速鉄道の導入のパターンを示し、各パターンごとに時間短縮や経済効果、建設費などを明らかにする予定。
(四国新聞社 2013/06/06 09:41)
■「四国新幹線」大阪〜四国経由〜大分着、総距離480キロ
四国に新幹線を通す構想は田中角栄氏が掲げた「日本列島改造論」の一環として、1973年に基本計画が決定。当時の運輸省が検討すると発表したルートは、(1)大阪を起点に淡路島を通って、徳島、香川、愛媛と経由し、大分市に至る約480キロをつなぐ「四国新幹線」と(2)岡山を起点に香川、愛媛、高知と約150キロを結ぶ「四国横断新幹線」の二つだった。
本州と四国の経済交流を考えれば(1)のルートの方がより望ましいとして、国は「四国新幹線」構想を本格化。80年代から本州ー淡路島間、松山ー大分市間で新幹線を通す海底トンネルの建設調査を始めた。しかし、1973年に起きた「石油ショック」で財政緊縮策が取られたことなどが影響し、計画は遅々として進まず、四国での新幹線建設構想にはスタート段階から赤信号がついてしまった。
その後、長期間にわたる経済不況が続く中、数兆円といわれる建設費が「採算に合わない」とされ、道路特定財源の見直しで公共事業への批判が高まる中、2008年に海底トンネル建設調査が打ち切られた。調査には毎年1億円程度がかかっていた。
■地元からの根強い要望
愛媛県議会は、昨年9月に政府に提出した「四国への新幹線導入に関する意見書」の中で以下のように訴えている。
全国に先駆けて高齢化や人口減少が進む四国の現状に思いを馳せれば、10年後、20年後の次代を担う若者たちが四国に夢と希望を持ってもらえるよう、今こそ、「四国新幹線」及び「四国横断新幹線」を、四国と本州や九州とを広域的に結ぶものとして、しっかりと位置付け、実現に向けた取り組みを開始すべきである。愛媛県議会ホームページより
四国各県からも同じような要望が出されている。「非現実的」と批判されながらも導入を求め続ける背景には、四国の鉄道事業の落ち込みがある。人口減少に加えて、高速道の整備で便利になった高速バスの利用者増加などで、四国内の鉄道利用者は減り続けている。そのため、四国内の鉄道ビジネスを維持するためには主要路線の高速化が必須だというのだ。北陸や九州などで新幹線整備が進んでいることへの焦りもあるだろう。
しかし、「ほかの地域にもあるから四国にも」というのでは説得力がない。新幹線開通に夢や希望を託すというのもなんだか古くさい。投資に見合ったリターンがどれだけ予想されるのか、地に足ついた調査結果を期待したい。
関連記事