東日本大震災の復興予算が地方自治体などの「基金」を通して、被災地の復興とは関係が薄い事業に使われていた問題で、未執行だった1000億円について政府が返還を求める方針であることがわかった。時事通信によると、政府が一度配分した予算の返還を求めることは極めて異例のことだという。朝日新聞が以下のように報じている。
2011~12年度の復興予算約17兆円のうち、被災地や被災者以外にも使えるお金として、政府は16の基金に計1兆1570億円を配っていた。財務省や復興庁が調べたところ、今年5月末までに計1兆142億円がすでに使われたり業者と契約済みだったりして、返還できなくなっていた。
残りの約1400億円について、基金を運営する自治体や公益法人に返還を求めたところ、約1千億円は戻ってくる見通しになった。ただ、約400億円については「被災地や被災者のために使える」(財務省幹部)とし、当面は返還を求めない方針だ。
(朝日新聞デジタル「流用の復興予算、返還1千億円どまり 大半は執行済み」より。 2013/06/22 16:14)
毎日新聞によると、基金を通じた流用では、厚生労働省の「震災等緊急雇用対応事業」をもとに、山口県の観光PRのためのゆるキャラ「ちょるる」を運用するために、11年度に約1400万円を支出して男女20人、12年度には2300万円を支出し男女74人、のべ94人を雇用したが、うち被災者は一人もいなかった。
復興予算については、昨年11月、民主党政権時代にも、捕鯨団体対策費などに流用されていたことが発覚し、各省庁の復興予算事業の見直しを行い、まだ実施されていなかった35事業168億円を被災地とは関連性が薄いとして凍結していたが、今回問題になった基金は国の管理を離れていたため、当時は凍結の対象とはならなかったという。
Twitterでは今回の異例とも言われる政府の対応を評価する声がある一方で、基金全体の1兆1570億円のうち、返還される見通しなのが未執行分の1000億円にとどまることに対して批判の声も上がっている。
すでに執行されていた残りの1兆円を超える予算の扱いはどうなるのか。1000億円の返還でうやむやにならないよう、今後も注視していかなければならないだろう。
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