失われた消費税250億円、外国企業に課税はできるのか

AmazonやGoogleなど、外国企業に対して消費税を課税できないために、昨年1年間で約250億円の税収が失われているとの調査結果が出た…
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AmazonやGoogleなど、外国企業に対して消費税を課税できないために、昨年1年間で約250億円の税収が失われているとの調査結果が出た。インターネット広告やネットで配信される音楽・電子書籍などの取引については、たとえ日本国内の取引であっても、取引を行った相手が海外の企業であれば、消費税を課税できない仕組みになっているためだ。

NHKニュースによると、外国企業とのインターネットでの取引において、去年1年間で247億円の税収が失われていたということが、民間シンクタンクの大和総研の調査でわかったという。なかでもGoogleがインターネット広告で得た2,669億円以上の売上に対する、133億円あまりの税収推定額が最も大きかったとのことだ。

■外国企業に消費税を課すことが出来ないのは何故か

日本では、消費税は国内での取引が課税の対象となり、国外で行われる取引は課税の対象ではない。サービス提供企業が国内にあり、かつ、国内にあるデータ配信拠点から、音楽や電子書籍、パソコンのソフトウェアなどを配信しているのであれば国内取引として課税される。しかし、外国企業が、海外にデータ配信拠点を設置してサービスを提供する場合には、国外取引とみなされ課税を行うことが出来ない。

そのため、外国企業は消費税を設定せずに、より安く商品価格を設定することも可能となる。

例えば、1,000円の電子書籍を販売する場合、紀伊国屋書店などの国内の電子書籍ストアでは、消費税込みで1,050円で販売する。しかし、日本のAmazonでは、Kindle版の電子書籍を消費税を抜いて1,000円で販売している。これは、「Amazon.co.jp」というサイトがAmazon.com Int’l Sales, Inc.およびAmazon Services International, Incという海外企業による運用であり、課税対象とはならないためである。

これでは国内企業はたまったものではない。楽天は電子書籍に参入する際に、Koboというカナダの子会社による販売とし、データ配信用のサーバもカナダに置く方法をとった。Googleのインターネット広告も同様に、サービス提供企業と、配信拠点を海外に置いているため、外国企業との取引とみなされる。

■グローバル企業への国際的な課税への取り組み

このような状態を打開するため、国際的な枠組み作りが始まっている。経済協力開発機構(OECD)は、電子商取引への課税強化などを明記した行動計画を、7月19日に発表。この行動計画には、インターネット上の電子商取引に限らず、なるべく税金が安い国に拠点を置くことで節税を行なっているグローバル企業の「課税逃れ」を防ぐための内容も盛り込まれた。7月20日に開かれた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、OECDの課税ルールの抜本的見直し案を支持している。

EUでは付加価値税(VAT)を導入し、EU外からのデータ配信にも、サービス提供企業が所在する国ではなく、消費者がいる国において課税されるルールを採用している。EU外の事業者が、EU内の消費者に対してサービスを提供する場合は、EU内に事業所等を設立するかEU加盟国のいずれかの国に事業者として登録し、その国に消費税を一括納付するという仕組みとなっている。

日本においては、今後、政府の税制調査会において、グローバル企業へのインターネットでのデータ配信に対する課税について議論すると報じられている。

ITmediaの記事によると、ICT総研の分析では、電子書籍の市場規模は、12年度の729億円から13年度は1010億円に成長すると予測される。また、電通の調査によると、インターネット広告についても、日本の市場だけでも2012年度は8,680億円となり、13年には1兆円突破も視野に入っているという。

今後ますます伸びると期待される分野だけに、課税が出来ないのは問題であるとも考えられる。日本でも付加価値税などの仕組みを導入するべきではないだろうか。たとえ消費者が負担するものであってもーー。

あなたはこの問題をどう考えますか?ご意見をお寄せください。

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