来年4月に予定されている3%の消費増税の影響について、民間調査機関では家計負担が9兆円にのぼるとの試算や、14年度成長率がほぼゼロとなるなどの見通しが相次いで公表された。
景気の落ち込みは相当大きく、補正予算で5兆円規模が必要との見方や、金融緩和の一層の強化などにより、新規の対策を求める声が浮上しつつある。
JPモルガン証券は、政府や日銀が考えているより景気は大きく落ち込む可能性は高いとみている。
消費税率3%分の8.1 兆円と厚生・国民年金保険料の引き上げ0.8 兆円を合わせると9兆円(対GDP対比1.9%)の負担が家計に生じると試算した。
ただ、影響は大きいものの「土壇場での消費税引き上げの見直しは、財政健全化の観点からも、痛みを伴う改革推進の観点からも、安倍政権に対する悪い印象を与える」と指摘する。
このため増税にあたっては、安倍政権から新機軸の政策が打ち出される必要性を指摘する。具体的には金融緩和のさらなる強化や、補正予算編成、成長戦略などを挙げている。
中でも財政健全化と経済成長を同時に促進させるための税制改革(特に法人税率の引き下げと資産課税の拡大・消費税率の更なる引き上げ)と、社会保障改革に本格的に取り掛かることが望ましいとしている。
他方、SMBC日興証券は、予定通り3%増税で何らの対策も打たれない場合、14年度成長率が前年比プラス0.1%になると試算した。
民間消費の駆け込み需要の反動減が3.3兆円、所得低下による消費減少が2.3兆円とみている。
また、13年度からの政府純支出の減少分が約4兆円程度、耐久財の買い控えなどが0.95兆円と試算する。住宅投資に4750億円程度、反動減が生じる見通し。
こうした景気の落ち込みに対し、約5兆円規模の補正予算が必要とし、その場合には予定通りの増税実施でも成長率は1%程度を確保できるとみている。
毎年小刻みに増税する場合には14年度成長率は0.6%と、落ち込みは緩和すると見ているが、予定通り3%実施したうえで5兆円規模の財政出動を行う場合の1%成長には及ばないとみている。
また、大和総研では、予定通りの増税実施により14年度はGDPを0.9%押し下げると試算。真水ベースで3兆円規模の補正予算を前提とするなら14年度1.2%程度の成長が実現できると見ている。
毎年1%ずつ増税する場合には、14年度は0.2%の押し下げにとどまるとするが、5%分全ての増税が終了した段階の19年度には、予定通りの実施でも小刻み増税でも、成長率への下押し圧力は変わらなくなるとしている。
日銀は14年度GDP成長率を1.3%、政府は1.0%との見通しを公表している。
一方で民間調査機関の平均(フォーキャスト調査)では0.5%程度と見ており、増税の影響やいわゆる財政の崖の影響の大きさへの認識にギャップが見て取れる。
このため政府部内にも、予定通りの消費増税実施なら何らかの財政的な手当が必要になると見解が根強くあるほか、日銀に対して追加的な金融緩和対応を求めるべきだとの声もくすぶっている。
消費増税をめぐり、どのような実施方法を選択するかで、その後の政府・日銀の対応にも大きな差が出てきそうだ。
(ロイターニュース 中川 泉 編集;田巻 一彦)
[東京 19日 ロイター]
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