冤(えん)罪事件の再発を防ぐため、布川事件の冤罪被害者、桜井昌司さんがネット署名サイト「change.org」で署名活動をスタートさせた。殺人事件の容疑者として逮捕された桜井さんは、有罪判決を受けて29年間も刑務所に収監され、再審で無罪判決を得るまで44年の月日を要した。桜井さんは9月9日、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で、足利事件冤罪被害者の菅家利和さん、志布志事件冤罪被害者の川畑幸夫さんと揃って会見。自白強要や記録を残さない日本の取調べの実態を明かし、あらためて取調べの可視化と証拠の全面開示の必要性を強く訴えた。
■無罪判決を受けたのに検察官に『犯人』だと言われる
「私は29年ほど刑務所に入れられまして、44年闘って再審を勝利しました。私は無罪判決を受けましたが、検察官が今、この布川事件について何をいっているかというと、『足利事件の菅家さんは無罪だけれども、桜井はたまたま有罪だと立証できなかっただけで犯人だ』と言っているわけです。日本の冤罪は、誰も監視する人がいない。留置所の中で警察官が嘘や脅し、証拠のでっちあげを平気で行って冤罪を作る。それをなくすために、取り調べの全面可視化、証拠の全面開示を求める新たな運動を、署名サイトを立ち上げて開始したいと思いました」
会見でそう口火を切ったのは、桜井さんだ。
女児が殺害された足利事件冤罪被害者、菅家さんも同じ思いを吐露した。
「私は17年半ほど刑務所に入っていました。桜井さんと同様で、私の場合はDNA鑑定で捕まってしまったんですが、当時はインチキな鑑定でした。4年前にDNA鑑定不一致という結果が出て、翌年の再審で無罪を取りました。警察に取調べをした時に、『今は科学捜査だ』と言っていました。でも、私は科学捜査だけでは冤罪を生むような気がする。刑事たちは自分の足で動けと言いたいです。うまく言えませんが、私はまじめに仕事でも何でもやってきた。それなのに、無実の罪で捕まった。絶対に警察を許せない。謝ってもらいたい。謝ってもらっても許せない気持ちです」
■「そういう息子に育てた覚えはない」と書かれた紙を密室で踏まされる
また、警察が捏造した選挙違反事件、志布志事件冤罪被害者の川畑さんは、密室で行われた過酷な取調べの実態を語った。
「朝8時から夜11時まで取り調べを受けて、逮捕されました。色々な方に『やっていないのになんで自白するの?』と言われますが、密室の中に朝8時から夜11時までやられたら頭がおかしくなります」。川畑さんは取調べを担当した警部補に、家族の名前や自白を促す文章を書いた紙を無理やり踏ませられるという精神的な暴行も受けた。「他国では、取調べの全面可視化があるのに、日本でどうしてできないのか不思議に思います。全過程の可視化をしないと冤罪はなくならない」
今回、「change.org」のネット署名サイトでキャペーンを展開する理由について桜井さんは、「日本の中で冤罪と闘ってきて、色々なケースを見聞きして、日本の中でやる限界、残念ながら無実になっても検察官に犯人と言われる日本のシステムに怒りや失望、色々な思いを感じました。日本で起きていることを世界の方たちに伝えたいと思っています」と話している。
キャンペーンでは、「取調べの全過程を録音・録画して欲しいのと同時に、弁護人と裁判員にも、検察官が見るのと同じ証拠を見られるように、『証拠開示法』を実現してください」と求めており、集められた署名は、法務大臣と衆参両議院の法務委員会に提出される予定だ。
取調べの全過程の可視化と全証拠の開示について、あなたはどう考えますか?冤罪を防ぐには何が必要でしょうか?ご意見をお聞かせください。
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