シリアの化学兵器の全廃を目指し、化学兵器禁止機関(OPCW 本部オランダ・ハーグ)による査察団の先遣隊が10月1日、シリア入りした。アサド政権は無条件で査察を受け入れる姿勢だが、査察がスムーズに行われるかは不透明だ。
今回、先遣隊がシリア入りしたのは、9月14日にアメリカとロシアの間でシリアの化学兵器を2014年半ばまでに全廃するという合意が成立したことを受けてのものだ。
シリアのアサド政権はこれまでサリンなど化学兵器を政府が所有していることを認めていなかったが、9月9日、ロシアが化学兵器を国際管理下に置き、廃棄する提案を行ったところ、一転して所有を認めた経緯がある。
MSN産経ニュースは次のように伝えている。
査察は、化学兵器の保管場所や製造施設などの申告内容に偽りがないか検証するとともに、その使用や移動を禁じる措置を講じるのが目的で、査察団は約100人に増員される。計画では10月末までに全施設の査察を終え、11月1日までに製造施設を無力化させる。
(MSN産経ニュース 2013/10/01 21:31「査察団、化学兵器全廃に異例任務…短期間、初の内戦下で道険し」)
シリアのアサド政権側は化学兵器の全廃に同意し、査察にも条件をつけない姿勢を見せているが、全廃のプロセスが順調に進むかどうかは予断を許さない状況だ。
時事ドットコムは、次のような専門家の意見を紹介している。
アルアハラム政治戦略研究所(エジプト)のシリア専門家、ラブハ・アラム氏は「兵器の一部を隠したり、イラクやレバノンに移転したりする可能性がある」と指摘する。
(時事ドットコム 2013/10/01 22:44「アサド政権に「お墨付き」=シリア化学兵器、廃棄遅れ延命も-国際機関が査察着手」)
また、結果的に政権の延命につながりかねないとも指摘している。
アラム氏は「実際(殺害に)使われているのは通常兵器が大半だ」と指摘し、国際社会が化学兵器問題に目を奪われ、内戦を収拾できないアサド政権を結果的に支えている現状を批判した。
(時事ドットコム 2013/10/01 22:44「アサド政権に「お墨付き」=シリア化学兵器、廃棄遅れ延命も-国際機関が査察着手」)
査察を妨害する動きが出ることも懸念材料の一つだ。先遣隊がシリア入りした1日、滞在先のホテル付近に迫撃砲が打ち込まれた。朝日新聞デジタルは次のように伝えている。
1日朝の迫撃砲は午前8時15分ごろ、ホテルから十数メートルの場所で爆発。ホテルの正面玄関のガラスが破損した。8月には、国連の調査団がダマスカス郊外の化学兵器が使われたとされる現場に向かう途中、狙撃される事件も起きている。
(朝日新聞デジタル 2013/10/02 02:21「化学兵器査察団がシリア入り 拠点のホテル付近に迫撃砲」)
※シリアの化学兵器全廃のプロセスは順調に進むのか。政権の延命に手を貸すことになりかねないか。みなさまのご意見をお寄せください。
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