2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故で発生し、海水を汚染した放射性物質が、数週間中にもアメリカ西海岸に達する可能性があるとする報告書が、2月24日に発表された。ただし、汚染レベルは低く、環境や人体に影響を及ぼすことはないだろうと、研究者らは予測している。
この調査結果を発表したのは、マサチューセッツ州にある有名な非営利研究法人、ウッズホール海洋研究所の海洋化学学者ケン・ベッセラー氏。同氏は、ハワイで開催されたアメリカ地球物理学連合の海洋科学部門の部会で発表を行った。
今回の報告は、2013年に行われた報告に続くものだ。その報告では、2011年3月に福島第一原子力発電所が津波と地震によってメルトダウンを起こしたことで発生した放射性汚染水が、2014年4月までにアメリカ西海岸に達する可能性がある、と予測していた。
ベッセラー氏の調査結果は、2013年の予測が正しかったことを示している。ただし同氏は、カリフォルニア州の公衆衛生当局の見解と同じく、その放射性物質がアメリカの人々に対して悪影響を及ぼすことはないと考えている。「放射性物質は、海を渡ってくるまでに相当程度希薄化されている」と同氏は指摘する。
ベッセラー氏は、「Our Radioactive Ocean」という民間主導の研究プロジェクトを立ち上げた。その目的は、西海岸沿岸の海水をサンプルとして採取し、その放射線量を調査することだ。
同氏がこのプロジェクトを始めた理由は、連邦レベルでも州レベルでも、水質調査が計画されていないことを知ったためだという。
「われわれは働きかけを行ってきた。ワシントンDCに赴き、アメリカ海洋大気庁とも話をしたのだが、彼らは放射線の調査を行わない。米エネルギー省は、放射線の調査に最適な施設を持っているが、彼らも海を調査しない。そのため、調査をやり遂げるには、自分たちが出かけて行って実行するしかなかった」
「われわれは、調査結果が出るたびにサイト上で発表するつもりだ」とベッセラー氏は述べ、毎週2、3個のサンプルを解析することになるとの見通しを示した。
ネット上に出回る動画や一部のサイトでは、カリフォルニア州の放射線レベルが上昇しているという報告を行うものもあるが、ベッセラー氏は情報の真偽に注意すべきだと指摘する。同氏が紹介したある動画には、サンフランシスコ南部の海岸で、ガイガーカウンター(放射線量測定機器)が高い数値を示した様子が映し出されている。だがベッセラー氏は、「あの辺りには、天然の放射線を発生するトリウムが多く、その影響だ」と述べる。
ベッセラー氏らも放射性パーティクルを発見したことがあるが、それは福島由来ではなかったという。半減期約2年のセシウム134が一緒に発見されなかったからだ。
同氏によれば、これまで見つかってきたのは、昔の核実験で発生し、長い半減期(約30年)がまだ終わっていない「セシウム137」だという(セシウム137は1940年代~1960年代のアメリカ・ソ連の核実験等で高濃度に放出され、その影響はまだ残っている)。
以下は、「Our Radioactive Ocean」の公式動画。なお、同サイトには、2008年時点の世界各地の海におけるセシウム137の汚染レベルがわかる地図が掲載されている。それによると、当時の日本近海は1.9Bq/m。最も汚染度が高いのは、イギリスの再処理工場があるアイリッシュ海(61Bq/m)、次いでバルト海(40Bq/m)となっている。福島県が発表した近海の汚染度が時系列でわかる地図はこちら(PDF:なお、福島県資料の単位はリットルあたりなので、m3あたりにすると1000倍の数値になる)。
[Robin Wilkey(English) 日本語版:佐藤卓、合原弘子/ガリレオ]
ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています。
ハフィントンポスト日本版はTwitterでも情報発信しています。@HuffPostJapan をフォロー