村上春樹の新作短編集「タバコポイ捨て」表現で抗議受けた箇所はどうなった?

作家・村上春樹さんの短編小説集『女のいない男たち』が4月18日、発売された。雑誌掲載時に表現をめぐって抗議を受けた箇所は、どのように修正されたのだろうか?
時事通信社

作家・村上春樹さんの短編小説集『女のいない男たち』が4月18日、発売された。先行して雑誌に掲載された5本と書きおろし1本を含む、著者9年ぶりの短編集だが、作品中に含まれている短編『ドライブ・マイ・カー』の一部が、単行本化にあたって、表現が改められている。同作品が文藝春秋に掲載された際、その表現をめぐって、北海道・中頓別町の町会議員、宮崎泰宗氏から抗議を受けたためだ。

文藝春秋掲載時の表現は、以下のとおり。

小さく短く息をつき、火のついた煙草をそのまま窓の外に弾いて捨てた。たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう。

この部分について、宮崎氏は「偏見と誤解が広がる」と抗議した。

ノーベル文学賞候補となる作家が事実と異なることを小説にしたことが町のイメージダウンにつながり、このまま放置すれば、本町への偏見と誤解が広がる訳ですから、作家に遺憾の意を伝え、なんらかの対処を求めることの緊急性は高いと思います。

活字化の事実を知りながら公式には何もしないということは、不本意な表現を認めることになります。環境美化や交通安全に励む町の代表である議員や首長は、こうした問題に敏感に反応すべきでしょう。

(「TEAM中頓別〜今そして未来の青空へ〜」より 2014/01/30)

宮崎氏は2月、町議会でこの問題を議題とするよう求めたが、却下されたという。

この抗議を受け、村上さんは「単行本にする時には別の名前に」とのコメントを発表した。

僕は北海道という土地が好きで、これまでに何度も訪れています。小説の舞台としても何度か使わせていただきましたし、サロマ湖ウルトラ・マラソンも走りました。ですから僕としてはあくまで親近感をもって今回の小説を書いたつもりなのですが、その結果として、そこに住んでおられる人々を不快な気持ちにさせたとしたら、それは僕にとってまことに心苦しいことであり、残念なことです。中頓別町という名前の響きが昔から好きで、今回小説の中で使わせていただいたのですが、これ以上の御迷惑をかけないよう、単行本にするときには別の名前に変えたいと思っています。

(スポニチ「村上春樹氏 作中の「中頓別」変更へ “たばこポイ捨て”抗議受け」より 2014/02/08 05:30)

単行本では、架空の「北海道※※郡上十二滝町」(原文ママ)とされ、問題となった「ポイ捨て」の表現は、以下のように改められている。

小さく短く息をつき、火のついた煙草をそのまま窓の外に弾いて捨てた。たぶん上十二滝町ではみんなが普通にやっていることなのだろう。

(『女のいない男たち』 60頁より)

村上さんは1982年発表の長編小説『羊をめぐる冒険』において、北海道の架空の地名として「十二滝町」を使用しており、これを連想させる名前だ。

抗議を受けたことについて単行本のまえがきに、以下のように書いている。

『ドライブ・マイ・カー』は実際の地名について、地元の方から苦情が寄せられ、それを受けて別の名前に差し替えた。

(中略)

小説の本質とはそれほど関係のない箇所なので、テクニカルな処理によって問題がまずは円満に解消してよかったと思っている。ご了承いただきたい。

(『女のいない男たち』 12頁より)

※小説内の表現が引き起こす問題について、どう思いますか。ご意見をお寄せください。

ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています

注目記事