【美味しんぼ】福島住民に海原雄山がメッセージ「危ないところから逃げる勇気を」 "福島の真実編"が完結

人気漫画「美味しんぼ」の「福島の真実編」最終話が、5月19日発売の「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に掲載された。福島第一原発事故の放射線によって「鼻血が出た」などとする前号までの描写が、福島県や同県双葉町から抗議を受けていたが、今号でも登場人物が「危ないところから逃げる勇気を」と福島の住民に呼びかける内容となっている。

人気漫画「美味しんぼ」の「福島の真実編」最終話が、5月19日発売の「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に掲載された。福島第一原発事故の放射線によって「鼻血が出た」などとする前号までの描写が、福島県や同県双葉町から抗議を受けていたが、今号でも登場人物が「危ないところから逃げる勇気を」と福島の住民に呼びかける内容となっている。

この回では、主人公の山岡士郎と父親の海原雄山らが福島県の飯舘村から北海道に移住して畜産を営む家族を訪ねる場面などが描かれた。

海原雄山は「井戸川前双葉町町長と福島大学の荒木田先生は、福島には住めないとおっしゃる…だが、放射能に対する認識、郷土愛、経済的な問題など、千差万別の事情で福島を離れられない人も大勢いる」「私は一人の人間として、福島の人たちに、危ないところから逃げる勇気を持ってほしいと言いたいのだ」と語った。山岡士郎も、自分達にできることは「福島を出たいという人たちに対して全力を挙げて協力することだ」と言い切った。

■各地の自治体が抗議、安倍首相も釘を刺す

「福島の真実編」では、福島第一原発を訪れた主人公たちが鼻血を出すなどの描写が議論を呼び、その翌週に発売された号では、実名で登場した双葉町福島県双葉町の井戸川克隆・前町長が、鼻血の原因を「被ばくしたから」と語る場面があった。これに対し、双葉町福島県が抗議や反論を行った。

また、岐阜県環境医学研究所所長の松井英介氏が、大阪市が受け入れた震災がれきの焼却場の近くで眼や呼吸器系の症状が出ていると話す場面もあり、大阪府市も抗議していた

福島県を視察していた安倍晋三首相が「根拠のない風評には国として全力を挙げて対応する必要がある」と釘を刺したほか、菅義偉官房長官など閣僚からもこの問題に対する言及があった。

原作者の雁屋哲氏は自身のブログで「当然ある程度の反発は折り込み済みだったが、ここまで騒ぎになるとは思わなかった」と記した上で、「『福島は安全』『福島は大丈夫』『福島の復興は前進している』などと書けばみんな喜んだのかも知れない」「私は真実しか書けない」としていた。

■スピリッツ編集長「表現のあり方を見直す」

「福島の真実編」最終話を掲載した「週刊ビッグコミックスピリッツ」では、漫画本編のあとに「『美味しんぼ』福島の真実編に寄せられたご批判とご意見」という10ページに渡る特集が掲載された。末尾に「編集部の見解」として、「週刊ビッグコミックスピリッツ」の村山広編集長のコメントが載っている。

編集部の見解

このたびの「美味しんぼ」の一連の内容には多くのご批判とご抗議を頂戴しました。多くの方々が不快な思いをされたことについて、編集長としての責任を痛感しております。掲載にあたっては、福島に住んでいらっしゃる方が不愉快な思いを抱かれるであろうと予測されるため、掲載すべきか検討致しました。

震災から三年が経過しましたが、避難指示区域にふるさとを持つ方々の苦しみや、健康に不安を抱えていても「気のせい」と片付けられて自身の症状を口に出すことさえできなくなっている方々、自主避難に際し「福島の風評被害をあおる、神経質な人たち」というレッテルを貼られてバッシングを受けている方々の声を聞きます。人が住めないような危険な地区が一部存在していること、残留放射性物質による健康不安を訴える方々がいらっしゃることは事実です。

その状況を鑑みるにつけ、「少数の声だから」「因果関係がないとされているから」「他人を不安にさせるのはよくないから」といって、取材対象者の声を取り上げないのは誤りであるという雁屋哲氏の考えかたは、世に問う意義があると編集責任者として考えました。「福島産」であることを理由に検査で安全とされた食材を買ってもらえない風評被害を、小誌で繰り返し批判してきた雁屋氏にしか、この声はあげられないだろうと思い、掲載すべきと考えました。事故直後盛んになされた残留放射性物質や低線量被曝の影響についての議論や報道が激減しているなか、あらためて問題提起をしたいという思いもありました。

(中略)

識者の方々、自治体の皆様、読者の皆様からいただいたご批判、お叱りは真摯に受け止め、表現のあり方について今一度見直して参ります。

(後略)

「週刊ビッグコミックスピリッツ」編集長 村山広

(「『美味しんぼ』福島の真実編に寄せられたご批判とご意見、編集部の見解」より 2014/05/19)

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