[バンコク 20日 ロイター] - タイは約6カ月にわたる政権不在で政府が正常な機能を失い、いまだに来年度予算編成のめどが立たないといった弊害が露わになり始めている。
タクシン元首相派と反政府派は10年近くも権力争いを続けているが、今回の政治危機でタイ経済は既にリセッション(景気後退)間際の状態に陥っている。
10月から始まる来年度予算が成立しなければ、事態はさらに悪化する恐れがある。
タイ財務省のManas Jamveha会計検査局長は「来年度予算の手続きは一部にとどまっており、給与など固定的な支出が中心だ」と説明。「過去の予算で持ちこされた案件を除くと、新規の投資は行われないだろう」と話した。
政府は5月に予算案を議会に提出するはずだった。しかしインラック前首相は昨年末に総選挙の実施を唱えて議会を解散。今年2月に行われた総選挙は混乱し、憲法裁判所が無効の判断を下した。
現行の予算が成立したのは昨年の8月23日。今年は8月に議会が成立していれば満足しなければならない状態だ。
<不透明な選挙日程>
Manas会計検査局長は、次期政権が新たな予算に基づいて裁量的な支出を開始するには5カ月ないし6カ月を要するとみている。
しかし選挙管理委員会は7月20日に設定されたやり直し総選挙の日程を見直しており、新政権の誕生が近づいている気配はほとんど感じられない。
憲法裁判所は今月、インラック前首相が国家安全保障会議の事務局長人事をめぐり職権を乱用したと認定し、インラック氏は失職。反政府派は首相府に立ち入り、インラック前首相政権を一掃するため「最後の一押し」をすると宣言した。
財務相の職務も完全ではない。キティラット氏がインラック氏とともに失職した後、ニワットタムロン首相代行が、本来の商業相とともに掛け持ちしている状態だ。
一方、外交政策はまひ状態。首相代行は外交面での政策判断や外遊を行う権限が与えられておらず、タイは国際外交の舞台から姿を消した。
<産業にも悪影響>
法律によると、暫定政権は選挙管理委員会の承認を受けて初めて新たな歳出の実行が可能で、次の政権に託す形でプロジェクトに着手することはできない。
ゴムの業界団体ラバー・エステート・オーガニゼーションのChanachai Plengsiriwat会長は「何もできない。今の政府には資金を調達し、予算を配分して市場に介入する権限を持っていない」と話す。
国営タイ石油会社(PTT)
PTTは政府に調理用と自動車用のガス価格の引き上げを求めている。Surong氏は「責任者がいない。判断を下す新しい政府が必要だ」と述べた。
(Alan Raybould記者)
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