金正恩氏の健康問題で臆測広がる 北朝鮮「高度医療施設で治療」説も

北朝鮮の国営メディアが先月初めて、金正恩第1書記が健康上の問題に悩まされていると認めたことで、どんな問題に見舞われているのかをめぐってさまざまな憶測が広がっている。
Reuters

[ソウル 2日 ロイター] - 北朝鮮の国営メディアが先月初めて、金正恩第1書記が健康上の問題に悩まされていると認めたことで、どんな問題に見舞われているのかをめぐってさまざまな憶測が広がっている。金正恩氏は9月3日、夫人とともにコンサートを観覧したと伝えられたのを最後に国営メディアに登場しなくなった。

7月に政府高官らと出席したイベントの記録映画では、足を引きずって歩く姿が見られた。

北朝鮮指導部分析の専門家であるマイケル・マッデン氏は「もしも金正恩氏が医療上の必要から公的な場への出席をやめるよう進言されているとすれば、恐らくは烽火診療所(Ponghwa Clinic)のスタッフの治療を受けているのだろう」と語った。

烽火診療所は首都平壌中心部にあり、指導部とその家族向けにほぼ限定された高度医療施設。周囲を軍の部隊が固めており、化学兵器開発の拠点にもなっているのとの疑いもある。

一方でジョンズ・ホプキンス大学SAIS(スクール・オブ・アドバンスト・インターナショナル・スタディーズ)の研究者であるカーティス・メルビン氏は、金正恩氏が私邸で療養している可能性があるとの見方を示した。

メルビン氏は「北朝鮮メディアが公表した画像をみると、金正恩氏は平壌近郊の江東郡や南部の都市・元山にある個人別荘で多くの時間を費やしている。どちらの施設も適切な医療施設を備え、同氏を支えられる態勢だろう」と述べた。

■体重増加

マッデン氏によると、金正恩氏は2011年に死去した父の金正日と同じく、侍医団を引き連れて国内の定期的な視察を行っている。

この視察旅行は国営メディアが丹念に伝えてきたが、ここ1カ月は金正恩氏の動静に関する報道は鳴りを潜めている。

金正恩氏が公的な場から姿を消したのは初めてではない。全権を掌握してから半年が過ぎた2012年6月には、国営メディアで23日間写真が流れず、翌月になって再登場した。

昨年に叔父の張成沢元国防副委員長を粛清して以降で最も新しい写真では、金正恩氏は体重が増加したように見受けられる。

複数の専門家は、この体重増や家族環境が健康状態に影響を及ぼし、最近の映像で見られたおぼつかない足取りに関係しているとみている。

1993年と2008年に北朝鮮に赴いて金正日を診察し、08年には金正恩氏と会ったことがあるフランスの神経外科医、フランソワ・ザビエル・ルー氏は「身体的な観点からいうと、当時の金正恩氏は現在のような姿ではなかった。彼は若く、やせた人物だった」と話した。

(James Pearson記者)

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