[ドバイ 15日 ロイター] - イランと欧米など6カ国はイラン核問題をめぐり最終合意にこぎつけたが、石油輸出国機構(OPEC)は、イランの原油生産が完全に復活するには時間がかかる、と見ており、年内は生産枠を据え置く見通しだ。
ただ来年にはイラン制裁が緩和され、イランの原油生産と輸出が増加する公算が大きいことから、OPECは難しい判断を迫られそうだ。
イランはOPEC第2位の生産国としてのかつての地位を取り戻すことに意欲を示しており、OPEC内の競争が激化する可能性がある。
しかしサウジアラビアなど他のOPEC諸国は、来年は世界の原油需要が拡大すると予想、イランの輸出増加分は吸収可能と考えている。
サウジなど主要生産国は、少なくとも目先は、自身の市場シェアがイラン復帰によって脅威を受けることはないと楽観しているようだ。
OPEC筋は、ロイターに対して「OPEC非加盟国の生産が想定通りに鈍化し、同時に需要の伸びが来年も続くなどの条件が満たされれば、市場はイラン産原油を吸収することができる」と述べた。
OPECは、16年の世界の石油需要が日量134万バレル増加すると予想。今年の同128万バレル増から伸びが加速すると見ている。
イランのザンギャネ石油相は6月のOPEC総会で、制裁緩和後6─7カ月以内に、原油生産は日量100万バレル増加すると述べた。
ただし、OPEC加盟国やアナリストは、対イラン制裁が解除されるのは2016年以降であり、イランが目指している日量100万バレル増産が早期に実現される可能性は小さい、との見方で一致している。
対イラン制裁が解除されるまで、どの程度の時間がかかるのかは不明だ。制裁解除は核合意の実行が確認されてからになるため、イランが制裁解除の恩恵をフルに受けるのは来年以降になる、と見られている。
<年内の減産はない>
OPECは昨年11月総会で減産見送りを決定、今年6月総会でも生産枠を据え置いた。次の定例総会は12月4日に予定されている。
OPEC筋は、OPECが12月総会で減産する可能性は低いと指摘。当面は、イラン産原油が及ぼす影響を見極めようとする、という。
OPEC筋は「減産はない。年内の減産がないことは確実」と述べ、イランの増産時期について判断するのは時期尚早、と話している。
イランの2012年の原油輸出量は日量250万バレルだったが、制裁の影響により、今では日量100万バレル程度に落ち込んでいる。
イランは今後、シェア回復に向け攻勢をかけると見られ、アジア市場をめぐりサウジなど他のOPEC諸国との競争が激化するのは必至。
生産国がアジアの買い手獲得に向け積極的なマーケティングを繰り広げるなか、イランの輸出が増加し始めれば、原油安に拍車がかかる。
コメルツバンクのシニア石油アナリスト、カールステン・フリッシュ氏は「価格戦争になるリスクが大きい。宿敵に市場シェアを奪われるのを、サウジが指をくわえて見ているはずがない」と述べた。
(Rania El Gamal記者 翻訳:吉川彩 編集:吉瀬邦彦)