中国・上海市は、成人した子供たちが実家を訪れることを条例で義務化しようとしている。
違反した場合、親は子供を訴えることができるようになる。その場合、子供は裁判所から、実家に戻ったり、老人ホームを訪れたりするよう命じられるだろう、と上海市・法務課のルオ・ペイシン副課長は語った。
裁判所の命令に応じない場合、「ブラックリスト」に入れられる可能性がある。ブラックリスト入りすると、銀行口座を開設したりローンを組んだりするのが難しくなると、中国の国営メディア「新華社通信」が運営するリファレンスニュースは伝えている。
中国メディアの中には、「実家を訪れない子供は、ひき逃げや地下鉄で無賃乗車をする人と同じ」と書かれているものもある。
この「上海の高齢者を守るための規制」と呼ばれる条例は、1月29日に「上海市人民代表大会」で採決され、5月1日より実施される。
ニュースサイト「澎湃新聞」は実家を訪ねることは、子供がモラル上の義務を果たすだけではなく、親に精神的な安らぎを与えることになる、と伝えている。
親孝行や目上の者を敬うことは、儒教の重要な思想の一つだ。何世紀にもわたって中国社会で受け継がれていて、それは現代でも変わらない。
条例を制定した別の理由として考えられるのは、上海の高齢化だ。子供たちが頻繁に実家を訪ねて親を助けることで、年金費用を補いたいという考えがある、とリファレンスニュースは書いている。上海市では60歳以上の人が市の人口の約30%を占めていて、この数値は今後数年で増えるだろうと考えられている。
中国の人気SNS「ウェイボー」では、幸せでない生い立ちを持つ子供にも、この条例を義務づけることに対して、懸念の声が上がっている。
「良い両親でなかったら? 我が子を虐待したり、女の子より男の子を大事にしていたら? 差別行為をしていたら? それでも子供たちはなお頻繁に実家を訪ねるよう義務付けられるのだろうか。罰金を払わなくちゃいけないのだろうか」
「実家を訪ねることでさえ、法で決める問題になってしまったのか。ため息が出る」
「実家を訪ねるかどうかは、生い立ちに関係している。なぜそれを法律で決めなければいけないのだろう」
中国政府はこれまでにも、家族の問題に関与してきた。1979年には増え続ける人口を抑えるために一人っ子政策を発表。しかし高齢者を支える若者が減ってきたため、2015年10月に廃止した。
ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。
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