コンサルティング企業のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)は5月9日、今後数十年間で1270億ドル(約13.8兆円)に相当する労働およびサービスが、ドローンに取って代わられる可能性があるとレポートを発表した。この数字を見れば、ドローンの登場が私たちの仕事を奪うかもしれないと思うかもしれない。
しかし、事実はもう少し複雑だ。
まず、ドローンは、人件費を削減させることによって企業を救うのではない。PwCのレポートによると、荷物をより効率的に配達するなどの新サービスが起こり、必ずしも大量の労働者を追い出すことなく、ドローンによって経費削減できるという。
もちろん、仕事が失われる運命にある業界もある。一方で、それほど深刻な影響を受けない業界もある。例えば、農業分野の大部分はすでに機械化されているが、収穫物の棚卸にドローンを使う場合は、現在同様の目的で使われている人工衛星に取って代わるだけかもしれない。
レポートの著書のひとりであるマイケル・メイザー氏はハフポストUS版に「どの新興技術の場合でも同じですが、現在、人間によって行われている一部の仕事、特に、極めて反復的または危険な作業のニーズは将来的に下がるでしょう」と述べた。「しかし同時に、ますます多くの新しい職業が生まれています」とメイザー氏は語り、ドローンデザイナーやデータアナリストなどが考えられると紹介した。
ドローンによって作物の状況を知ることができるため、農家の人たちは実際に田畑を歩かなくても、問題のエリアを確認することができる。
しかし、だからといってドローンによってどの仕事も奪われないかといえば、そんなことはない。インフラのデータ収集や医療用品の特急配達などの作業は、ドローンの方が効率的に行えるかもしれないとレポートは述べている。また、空中映像の撮影、土地調査、採鉱プロジェクトなども、ドローンを使った方が簡単だ。
総合的に見て、自動化によって、今後数十年の人間の仕事が劇的に変わるという説には少し疑問があるということだ。
コンサルティング企業のマッキンゼーが発表したレポートによると、人間が報酬を得て行っている作業の約半数は、現時点でも、既存の技術で自動化が可能だとされる。失われるのは低賃金の仕事だけではない。なくなるリスクが最も高いのは時給20ドル以下の仕事だが、高給の仕事の中にも自動化が可能な作業があるとレポートは指摘している。
だが、マッキンゼーのレポートでは、特定の仕事の自動化は、職業そのものが差し替えられるということではないと強調している。
「短期から中期的に、完全に自動化される職業はほとんどないでしょう。しかし、一部の作業は自動化される可能性が非常に高いでしょう」
また、技術調査を手がけるフォレスターのアナリスト、J. P. ガウンダー氏によると、ロボットに仕事を奪われた場合でも、それによって新しい仕事が生まれる場合が多いとのことだ。例えば、ロボットを使えば、その修理やメンテナンスをする人間が必要になる。通常ではこれらの作業は、非常に高いスキルやトレーニングが必要だ。
「一部の仕事は失われますが、多くの予言者が考えるほど悲観的なものではないのです」とガウンダーは2015年にレポートで予測している。「実際、自動化によって多くの新しい業界の成長が刺激されます。これまでになかった全く新しい職業も生まれるのです」
自動化によって、物事が変化することは間違いない。だが、実際にどのような変化が訪れるのかが分かるまで、杞憂する必要はないかもしれない。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。