「エリザベス王女が成長する姿を描いた」映画「ロイヤル・ナイト」のジャロルド監督

エリザベス女王が19歳の王女時代にお忍びの一夜を過ごした実話を基にした映画「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」が14日から公開される。ジャロルド監督にインタビューした。

映画『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』より

19歳のエリザベス王女が宮殿を抜け出してお忍びの一夜を過ごした実話を基にした映画『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』が、2016年6月から全国で順次公開される。ジュリアン・ジャロルド監督(56)はハフポスト日本版のスカイプ・インタビューに応じ、「王女が一国の王女として成長する姿を感じてもらえれば」と語った。

ストーリー:1945年5月8日、6年間続いたドイツとの戦争に終止符が打たれたロンドンでは、人々が戦勝記念日を祝っていた。この機会を逃せば二度とチャンスはないと思った19歳のエリザベス王女(サラ・ガドン)は、父である国王ジョージ6世(ルパート・エヴェレット)の許しを得て、妹マーガレット(ベル・パウリー)と共に、オシャレして生まれて初めてお忍びでバッキンガム宮殿の外に出る。付き添いが目を離した隙に、シャンパンに勢いづいてバスに飛び乗ったマーガレットを追い掛けるエリザベス。彼女の人生を変える、そんな一夜が幕を開ける。

作品は、エリザベスが宮殿の外に出て、“英国王のスピーチ”に耳を傾け、リッツ・ホテルでワルツを踊ったという実話を映画化した。庶民の生活に初めて接したエリザベス王女が、数々の出会いを通じて次期女王としての自覚と覚悟を決めるようになっていく姿を、史実を織り交ぜつつ描いている。王女を演じるのは『アンチヴァイラル』などのサラ・ガドンだ。

ジュリアン・ジャロルド 1960年、イギリス東部ノーフォーク生まれ。2005年の『キンキーブーツ』を監督し、ブリティッシュ・インディペンデント・フィルム賞にノミネートされる。その後は、アン・ハサウェイ主演の『ジェイン・オースティン 秘められた恋』(07)、アンドリュー・ガーフィールド主演のTV映画「レッド・ライディングⅠ:1974」(09)などを監督する。

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映画『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』より

映画『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』より

――この作品を作ったきっかけはなんですか。

王女がお忍びで宮殿の外に出たという出来事は、歴史の本に1行くらい書いてあったと覚えていました。ただ、「VEデー」(第2次世界大戦でドイツが降伏した5月8日のヨーロッパ戦勝記念日)の夜はとても特別な夜で、作られた話かもしれないと疑っていたので、調べてみました。そうしたら、実際にあったと確認できました。

女王になる前のエリザベスがオシャレをしてお忍びで出かけたとなると、では、何があったんだろうと思いを巡らせました。そう考えると、これは非常にユーモアのあるお話になるかもしれないと思いました。というのも、彼女たちは普通の人たちとは違い、宮殿の中にいて、外の庶民に会ったことがないんです。特別な教育や躾を受けている彼女たちがいきなり宮殿から出て、普通の人たちが盛り上がっているパーティーに加わる。とても楽しい映画にできると思いました。いわば、「逆さまのシンデレラストーリー」になると思ったんです。

――イギリスでの公開は2015年ですね。どんな反応でしたか。

おおむねとても良い反応だったと思います。イギリスの人はロイヤルファミリーに魅惑を感じています。確かに、ロイヤルファミリーの描き方について、ちょっと過剰ではないかとか、こんな作品を作ることは生意気じゃないかと心配する声もあったんですけど、多くの人は楽しんで見てくれました。

――脚本は、ケヴィン・フッドさんと一緒に作ったのですか。

そうです。以前、ドラマで一緒に仕事をしたことがありました。今回は、彼と一緒にリサーチをして、面白い作品にしようと作り上げていきました。

――苦労した点は。

作るのは大変でした。VEデーは世紀のパーティーのような大騒ぎで、その夜を再現するというのはとても大変な作業でした。戦争で肉親や友人を失った人もいましたが、戦争がようやく終わったと何百万人もの人々が陶酔感に浸ったのです。パブではビールが品切れし、普段は慎み深いイギリス人が見知らぬ人にもキスをし、あちらこちらでプロポーズがされました。

当時のロンドンの街並みを再現するのは大変でした。バッキンガム宮殿に近いトラファルガー広場での撮影は、普段は閉鎖できないので、日曜日の夜から月曜日の朝の一晩で撮り終えました。

――他の場面では、街並みを再現したのですか。

そうです。ロンドンで撮った部分は多いんですけど、戦時中爆撃を受けた北東部「ハル」という街でも撮りました。地元の人がとても協力的で、古い大通りでの撮影ではエキストラをやってくれました。楽しかったですよ。トラファルガー広場でもエキストラをやるといって、大勢が寒い中、バスに乗ってやってくれたんです。

――イギリス王室は日本人にも人気があります。どういう点を強調しますか。

女王になる前の若い10代のプリンセスが宮殿から逃げ出して、群衆に逃げていった。王女が一国の王女として成長する姿を描きましたが、戦争直後の様子もわかってもらえると思います。基本的には軽いお楽しみの映画で、イギリスのこのフレーバーは、ほかのいろんな国の人にも楽しんで頂けると思っています。

『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』

原題:『ROYAL NIGHT OUT』(2015)/イギリス/97分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:寺尾 次郎/© GNO Productions Limited

配給:ギャガ

監督:ジュリアン・ジャロルド 『キンキーブーツ』

公開日:2016年6月より、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開

出演:サラ・ガドン、ベル・パウリー、エミリー・ワトソン『奇跡の海』、ルパート・エヴェレッ『アナザー・カントリー』、ジャック・レイナー『トランスフォーマー/ロストエイジ』ほか

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