中国当局がテレビ局に圧力「胸の谷間を隠すように」 "文化大革命のようだ"と懸念の声

西洋的な価値観を称賛するようなコンテンツを控えるよう指示も。

2015年に一時放送休止となったドラマ「武則天」

中国国内のメディアを規制・監督する「国家新聞出版広電総局(SAPPRFT)」は8月29日、中国の伝統や古典を冒涜するような内容のテレビ、ラジオ、インターネット番組などを放送禁止にする態勢を整えたと発表。西洋的な価値観を称賛するようなコンテンツを控えるよう求めた。国営新華社通信(英字版)が伝えた。

新華社通信によると、SAPPRFTは「スターや億万長者、セレブなどをアイドル化して登場させたり、プライベートや家族の争いをセンセーショナルに取り上げることは避けなければならない」と、テレビ局の報道内容に注文をつけた。

ウォールストリート・ジャーナルによると、中国のエンタメ業界では高視聴率や映画の興行的成功を狙うため、有名女優や若いアイドルの起用が求められており、演者の出演料が高騰しているという。製作費の半分以上を数人のスターの出演料が占めてしまう例もあり、「近年の国内作品の品質低下の一因となっているとCCTV(中国中央テレビ)は述べた」と報じている。

SAPPRFTは「一晩で名声を得ることや、富の誇示、快楽主義や利己主義を助長する」と批判する一方、「前向きなエネルギー」や「主要な話題」を含むニュースを伝えるように要請。共産主義・社会主義の理想や政府の方針に沿ったコンテンツ製作を改めて命じるかたちとなった。

■過去には当局が「胸の谷間を隠せ」と、ドラマの編集を指示

CNNによると、これまでも中国当局はテレビ番組などに度々締め付けを図ってきた。

2011年3月には、SFドラマが「軽々しく神話をでっち上げ、恐ろしく、奇妙な脚本で、馬鹿げた手段で封建主義や迷信、運命論、生まれ変わりを賛美している」との理由で、SFドラマが放送禁止になった。

2015年1月には、中国史上唯一の女帝・武則天(則天武后)の生涯を描いたテレビドラマが、「技術的な理由」で放送が一時休止された。このドラマは唐王朝(618-907年)の頃の華やかな衣装や、女優の肌の露出が多いことで人気を集め、高い視聴率を獲得していた。ところが検閲当局は制作側に、「女優の胸の谷間を隠すように」と編集を指示したという

ドラマ「武則天」の制作発表会に登場した女優ファン・ビンビン

同性愛についても、当局は2016年に公表したガイドラインで「異常な性的行為」と分類。テレビ番組には不適切なテーマだとした。なお中国では、2001年まで同性愛は「精神疾患」と規定されていた。

共産党の中枢も、メディアに対して強権的な姿勢を強めようとしている。共同通信によると、日本の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)は、海外の映画会社の活動を制限し、当局が国家の安全を損なうと判断すれば製作を認めないとする「映画産業促進法案」を審議しているという。

規制の背景には、中国の映画産業の急成長があるようだ。市場規模は2014年時点で650億元(9880億円)にまで成長。「西側の価値観」の流入に神経をとがらせているようだ。こうした共産党指導部の動きを警戒する声も出ている。

■メディアに圧力、西洋批判、個人崇拝…… 「文化大革命の頃と似た空気に恐怖」

2016年は「文化大革命」から50年となる節目の年だが、中国では習近平・国家主席の個人崇拝を思わせる場面が見られるようになった。5月には北京・人民大会堂では、アイドルが文化大革命の頃の歌を披露、習近平国家主席を礼賛し話題となった

こうした動きから、毛沢東の個人崇拝が推められた文化大革命の頃に空気が似ていると懸念する声も出ている。

文化大革命で「毛沢東語録」を掲げ、デモ行進する「紅衛兵」たち(1966年06月01日)

1989年の天安門事件の当時、民主化を求めた学生リーダーの1人だった王丹氏は6月に来日した際の記者会見で、「習近平氏は社会を壊している。第2の文化大革命が起こりうる」と中国共産党の指導部を強く批判した

王丹氏

また、2014年に天安門事件の追悼会に参加したことで当局に拘束され、15年にアメリカへ渡った徐友漁・ニュースクール大学客員研究員は朝日新聞に対し、こう語っている。

「人民大会堂で文革を思い出させるスローガンのもと革命歌をうたうコンサートが開かれたり、習氏のバッジを胸につけて会議に出席したり。個人崇拝や権力をトップに高度に集中させようとする動きがあります。

そして、外国との領土問題をめぐる中国の官製メディアの報道を思い出してみて下さい。『政権を転覆しようとする西側帝国主義という敵に包囲されている』などと叫んでいた文革時代の言いぶりに似ている。私的な会食の場で毛批判をした中央テレビの司会者が放送界から姿を消しました。異論を封じ込める、当時に似た空気に恐怖を感じる知識人は、私だけではありません」

(インタビュー)文化大革命50年 米ニュースクール大学客員研究員・徐友漁さん:朝日新聞デジタルより 2016年8月31日05時00分)


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