アメリカ・ノースダコタ州とイリノイ州を結ぶ石油パイプライン「ダコタ・アクセス・パイプライン」の建設をめぐり、建設ルート近くの居留地に住むアメリカ先住民スタンディングロック・スー族が抗議デモを続けている中、デモに参加していた女性に警察が使用した衝撃手榴弾が命中し負傷した。女性は腕切断の可能性もある重傷を負った。
ジャーナリストのライアン・ビジョンズ氏は11月21日、負傷した21歳のソフィア・ウィランスキーさんが腕から血を流し、折れた骨が露出している衝撃的な写真をFacebookに投稿した。20日夜、気温氷点下の中警察はパイプライン建設に反対する人々に対して催涙ガスやゴム弾を使用し、放水した。その混乱の中、ウィランスキーさんに「衝撃手榴弾」が直撃したと、ビジョンズ氏は記した。
衝撃手榴弾は通常、近接戦闘で使用される武器で、従来の手榴弾とは違い爆発時に破片が飛び散らない仕組みとなっている。
氷点下の中、デモ隊に放水する警察の治安部隊
スタンディングロックの医療チーム「メディック・アンド・ヒーラー・カウンシル」は、警察当局が衝撃手榴弾を投げていたことを「複数の目撃者」が報告したと述べ、ビジョンズ氏の報告を裏付けた。ウィランスキーさんの傷口からは複数の有害な破片が見つかったと、メディック・アンド・ヒーラー・カウンシルのリンダ・ブラック・エルク氏はハフィントンポストUS版に語った。
ソフィアさんの父、ウェイン・ウィランスキーさんはガーディアン紙に対し、21日に行われたソフィアさんの手術は8時間におよび、腕を切断しなければならない可能性もあると語った。
「最善の場合でも、痛覚がなくなり、機能も10〜20%くらいしか残らないかもしれません」と、ウェインさんは語った。
ウェインさんは22日の会見で、意識ははっきりしていたソフィアさんが、警察が「彼女に向かって直接」手榴弾を投げたのを見たと語った。
しかし、ダコタ・パイプライン建設の抗議活動に関与していない警察当局や元軍事関係者らの話では、破片を飛散させない衝撃手榴弾がソフィアさんの負傷の原因になったとは考えにくいという。
モートン郡保安局の広報担当者はロサンゼルス・タイムズ紙に対し、当局関係者は20日夜に衝撃手榴弾を使用しておらず、ソフィアさんの負傷の原因は分からないと述べた。
ハフィントンポストUS版は同保安局にコメントを求めたが、回答はなかった。
11月20日、ノースダコタ州のスタンディングロック先住民居留地付近で、デモ隊に向けて催涙ガスを使用する警察。
メディック・アンド・ヒーラー・カウンシルのコーディネーターを務めるマイケル・クヌーセン氏はハフィントンポストUS版に、「20日夜から21日早朝にかけての負傷者は少なくとも300人にのぼるとみられる。ソフィアさんもそのうちの1人だ」と語った。クヌーセン氏によると、26人が「鈍器の殴打による負傷で傷口が開くような負傷」で救急救命室に運ばれた。その原因の大半は、警察が至近距離から発砲したゴム弾や催涙ガスによるものだという。
その数字には含まれていないが、気温マイナス5度の中で警察が放水し、多くの人が低体温症の症状を訴え医師の治療を受けた。クヌーセン氏はその人数を500〜600人と見ている。
映像には保安官らがデモ隊に向かって大量の水を噴射する場面が映っているが(活動家らは放水銃だったと述べているが、保安局は消防用ホースを使用したと説明している)、カイル・カークマイアー保安官は、水は単なる「霧」だったと発言した。
「水は霧状に噴射されたもので、彼らに直接当てたくはありませんでしたが、全員の安全を確保するための手段として実行しました」と、カークマイアー保安官は21日の会見で述べた。保安局の広報は、放水はパイプライン反対派が放ったとされる火事の消火に必要な行動であり、警察は「"水の守り手"と称する非常に攻撃的な抗議者たちの暴動を鎮圧するため、非殺傷兵器を使用した」と語った。
アメリカ先住民の支援団体「先住民環境ネットワーク」のダラス・ゴールドトゥース氏はAP通信に、20日夜の衝突は、スタンディングロック・スー族と支援者たちが、当局が抗議デモの現場付近にあるバックウォーター橋の封鎖を突破しようとして起きたと語った。
ダコタ・アクセス・パイプラインの反対派は、パイプラインから漏れ出る石油が貴重な水資源であるミズーリ川を汚染し、水の安全性を大きく脅かすと述べている。同パイプライン建設を請け負うエネルギー・トランスファー・パートナーズの最高責任者は、「パイプラインの経路を変更するつもりはない」と述べた。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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