イエメンの首都サヌア、5月13日。アフメド・アルゴバリーさんの9歳の弟ハムザくんは目を覚ました。激しい下痢と耐え難い腹痛に襲われたためだ。アルゴバリーさんは、弟がただの風邪ではないと分かった。
アルゴバリーさんは急いで弟をサビーン病院へ連れて行った。内戦で荒廃したイエメンにあるこの施設は、国際救援団体セーブ・ザ・チルドレンの支援を受けている。すぐに、兄の恐れていた通りだったと分かった。ハムザくんはコレラと診断された。救急病棟は他にも多くのコレラ患者で混みあっていた。病院のベッドには空きがなく、アルゴバリーさんは点滴の管を持って床に座り、弟を膝に抱きかかえた。
この週末だけで、首都では少なくとも184人がコレラで死亡している。赤十字国際委員会(ICRC)によると、1万1000人に感染の疑いがあるという。過去3年間、シーア派の反政府武装組織フーシが首都を支配してきた。サヌア市当局は14日に非常事態宣言を出し、この危機的状況に対処するための国際的な援助を求めた。フーシ派が運営するイエメンの衛生省は国営サバ通信に、「今回は前例のない大量感染で、食い止めるのは不可能になった」と述べた。他の主要都市、フダイダ、タイズ、アデンなどでもコレラの発症例が報告されている。
サヌアでは、1年足らずで2回目のコレラの感染拡大が起きた。MOHAMMED HUWAIS VIA GETTY IMAGES
「ここには患者が大勢います」。アルゴバリーさんはハフポストUS版に、病院の状況を電話越しに語った。「患者の多くは、サナア市とその近くの村々から来ています。恐ろしい事態です。病院の廊下を歩いて通り抜けることもできません」
サヌアでは、1年足らずで2回目のコレラの感染拡大が起きた。 イエメンのムハメド・ビン・ハフィズ保健大臣と世界保健機関(WHO)によると、2016年10月の最初の流行では、100人以上の市民が死亡した。
コレラは急性の下痢性疾患であり、適切な治療を受けないと死に至る場合がある。 この病気は汚染された食物や水の摂取によって引き起こされる。 イエメンの国民の3分の2は清潔な水が手に入らない。 人口移動、過密状態、そして、特にゴミが未収集で放置されているサヌアのような大都市での不十分な衛生状態などが原因で、病気が急速に広がっている。
多くの場合、村の人々はこの症状を重い下痢だと思い込み、治療しないまま放置し手遅れになる、とアルゴバリーさんは言う。
医療施設の半分以上が閉鎖しているか、部分的にしか機能していない。AFP VIA GETTY IMAGES
サウジアラビア主導の有志連合の支援を受けたアブド・ラッボ・マンスール・ハディ大統領派の軍と、イランに支援されたフーシとの間で3年にわたって内戦が続き、医療状況は大幅に悪化しており、コレラの流行は深刻な影響を与えている。
イエメンの医療施設の半分以上は、医薬品、インフラ、設備、スタッフが大幅に不足しているため閉鎖されているか、部分的にしか機能していない。 サウジアラビアによる事実上の封鎖も、鎮痛剤、抗生物質、ワクチンそして手術用機器が不足する原因になっていると、2017年に国際NGO「ウォッチリスト・オン・チルドレン&アームド・コンフリクト」が発表した人道・医療インフラへの攻撃に関する報告書に記されている。
国境なき医師団のスタッフはこの3カ月間で780人のコレラ患者を治療している。AFP VIA GETTY IMAGES
この感染拡大に対応して、国境なき医師団(MSF)は、イエメン国内の5つの病院にコレラ治療センターを設置した。 国境なき医師団は、国内のいくつかのイエメン医療センターの支援もしている。 MSFチームは、過去3ヵ月間に780人以上のコレラ患者を受け入れ治療してきた。 MSFはまた、過去2週間のコレラ症例の急激な増加を報告した。
イエメンで活動する国境なき医師団の村田慎二郎代表は声明で、「何十キロも離れた地区からも患者が運ばれてきます。コレラ流行が拡大し、感染制御が不可能になるのではないかと強く懸念しています」と述べた。
約2700万人のイエメン国民のうち、1900万人が人道的支援を必要としている。 この数字には、食料が不足している1700万人が含まれている。
国連は4月25日、ジュネーブで開かれた国際会合で、21億ドル(約2300億円)の拠出を求めた。しかし、支援の約束は半分強の11億ドル(約1150億円)に留まっている。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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