加害者への怒り、乗り越え笑顔 性暴力被害者らが交流会
「魂の殺人」と言われる性暴力。その被害女性たちが定期的に集い、生き抜いてきたことを喜び合ってきた。活動開始から5年以上が過ぎ、今後は広く、様々な苦難を乗り越えたサバイバー(生還者)たちとの交流を目指す。
9月のある夕方、大阪の街が一望できる飲食店で、性暴力被害を受けた経験がある30~50代の女性4人が集まった。自分や家族の写真を見せ合い、身の上話で盛り上がった。交流会「サバイバルサロン ぷれぜんと」。代表で30代の石田郁恵(いくみ)さん=大阪府=は「しんどかった時期を乗り越えて今がある。何年も闘ってきた自分たちをほめ合うご褒美の場です」と話す。
「ヤマトミライ」の名で活動する石田さんは、こうした交流会を2012年3月から大阪、東京、神戸などで計12回開き、性暴力被害者のべ約40人を迎えてきた。「苦しむ人に『幸せになれる』とのメッセージを送りたい」との思いがある。
短大生だった20歳の時、19歳の少年3人に乱暴された。3人は逮捕されたが、心の痛みも怒りも消えなかった。だれかに死なせてほしいと道路に横たわったことも。日常の小さな出来事に幸せを感じるように心掛けると、しだいに回復したという。
加害者への考え方も変わった。自分も被害直後、周囲に冷たく当たり、傷つけた。「『どんな理由でも人を傷つけたらあかん』のなら自分も同じ。加害者にも怒れなくなった」と話す。
11年、性暴力被害者たちの会合で、幸せだと感じ、加害者に怒りを感じなくなった自分について話した。それ以来、講演で各地に出向く。「かつて夢見たバスガイドにはなれなかったけれど、今は被害前に描いた幸せよりも幸せ」と笑う。
交流会に当初から参加する1人が柳谷和美さん(49)=大阪府吹田市=だ。5歳と7歳のときに性暴力を受けた。意味が理解できたのは中学生のころ。「私は汚い」と自暴自棄になり、30年近く苦しんだ。湿っぽくない交流会で解放された気がしたという。
交流会の様子は、石田さんがブログにつづる。明るい雰囲気だけに「性暴力が軽くとらえられる」との声がある一方、「笑えて希望になった」との反応もあるという。
石田さんは、性暴力被害者だけの交流会は今回で最後にするつもりだ。病気や事故、家庭内暴力(DV)など様々な苦難を克服した人たちもいる。「そうした人たちと『生きてきて幸せになって良かったね』と言い合いたい」と言う。(小池暢)