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2018年03月09日 10時10分 JST | 更新 2018年03月12日 16時05分 JST

なぜ日本のジェンダーギャップ指数はこんなに低いのか。“男女平等”の社会は男性も生きやすい?

「国際女性デー」特別対談 大崎麻子さん×長野智子「ハフポスト日本版」編集主幹

Ryan Takeshita

ダボス会議を主催する「世界経済フォーラム」は、男女格差の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」を毎年発表している。

日本は世界144カ国中114位。2016年より順位を落とした。

そもそも、ジェンダーギャップ指数とは?

なぜこんなに低いの? どうしたら上がるの?

日本で女性の国会議員が増えないのはなぜ?

3月8日の「国際女性デー」を機に、元国連職員で、女性のエンパワーメントの専門家の大崎麻子さんと、20年来の友人であるハフポスト日本版編集主幹の長野智子がディスカッションした。

「ジェンダー問題って、本当は男女の問題なんです」と大崎さんは語る。男女平等の社会は、実は日本の男性も生きやすいのかもしれないーー。

Arisa Ido / HuffPost Japan
主要国の順位

対談》「入学辞退します、子どもができたから」ジェンダーの第一人者が、それでもキャリアを諦めずに済んだ理由

ジェンダーギャップ指数って何なの?

長野:ジェンダーギャップ指数、114位。なぜ、日本はこんなに低いの?

Ryan Takeshita

大崎:ジェンダーギャップ指数は、「健康と生存率」、「教育」、「経済活動への参加と機会」、「政治への参加」の4つの領域で、男女間の格差がどれくらいあるかを見ています。

日本の順位が低いのは、「経済」と「政治」の分野。「経済」では、男女間の賃金格差が大きい。「経済」でも「政治」でも、方針決定に関わるポジションに占める女性割合が著しく低い。

Arisa Ido / HuffPost Japan
指数を図に落とすと、日本が経済や政治の分野での格差が深刻なことがよく分かる

両方、女性の決定権に関する部分ですよ。

男も女も、みんな労働しています。専業主婦家庭でも同じ。夫は報酬のある有償労働。妻は、家事、育児、介護、看護などの人のお世話、ケアの労働。すごく重要な、家族の生存や幸せのための労働だけど、お金が入らないんですよね。

男がやるべきとされる労働はお金が入り、女がやるべきとされる労働は無報酬。

これが男女の不平等の根源的な問題の一つです。しかも、働いても、男女間の賃金格差は大きい。(ジェンダーギャップ指数は)そこら辺の男女間の差を見るんですよね。

政治は、国の法律、制度、予算分配を通じて「社会のありよう」を決める場。経済は今の資本主義の世界だと、「生きる力 イコール 経済力」なんですよね。

Kaori Sasagawa

長野:あえて聞くんだけど、私はそんなに働きたくないと思う人もいっぱいいて、夫のお金で生活したい。女性活躍とか自分が働かないことを責められてる気がするっていう人もいると思うんですよ。

そういう人に対してどう思う? それでも経済力を持つのは大切なの?

大崎:一生、夫が元気で、稼いで、企業の終身雇用に守られる。DVの問題もなく、お互いを尊重し合っている。そういう前提なら、妻が家庭内の無償のケア労働を担うという選択はアリでしょう。

戦後の製造業を産業の基盤とした経済成長の時は、その分業のあり方が効率的でした。若い時は給料が少なくても、終身雇用の給与体系で、ちゃんと報酬も増えていく。

ところが、産業構造も人口動態も大きく変わりました。

今の若い人たちは、これからはそういう時代じゃないってわかってるから。

長野:男性の仕事も不安定化してきて、急に職を失うこともある時代になったから、女性が経済力を持って社会参加することが以前にも増して必要になってきたということか。

大崎:ジェンダーギャップ指数って、その社会が、男女で「権利と機会と責任」を分かち合えるようなシステムなのかどうかを見てるんですよね。

根底にあるのは、どれだけ男性も女性も選択肢を持って生きていける社会かどうか。

政治の場も男女半々くらいになれば、社会のリアリティを反映した議論や、多くの人たちのニーズをすくい上げた意思決定ができる。社会は男女半々なんだから。

企業も、男性も女性も同じように方針決定に関わっていれば、男性も女性も働きやすい環境。つまり、男女ともに能力を伸ばし、発揮できる環境を作りやすいだろうと。

男女が同じように方針決定に関われるような経済や社会が、持続的に成長するという認識が国際的に共有されているから、毎年、このような指数が発表されるわけです。

出しているのは、世界経済フォーラム。世界中のグローバル企業のCEOや投資家が名を連ねている非営利の組織です。

Ryan Takeshita

日本の順位が上がらない理由

長野:他の国が(順位が)上がっているのは? エクアドルとか、日本が途上国支援していた国が(日本より)上がっちゃったって言ってましたよね。

大崎:途上国は、国連や国際NGOなどが入って、国際社会共通の目標である「ジェンダー平等と女性のエンパワーメント」を実現できるような支援をしますからね。

国連開発計画(UNDP)がアドバイザーとして入って、その国の政府や女性団体と協力して、ジェンダー平等の基本法や女性に対する暴力の防止法を整備したり、ある一定の議席や候補者数を女性に割り当てるクオータ制を導入するのを手伝ったりします。

だけど日本は先進国だから、お助けがこない。

長野:そうなると自力で上げていくしかない。自力で意思決定の場に行くしかない。

大崎:だけど、どこの国もそうなんですけど、途上国も国連の支援が入っているとはいえ、主体は必ず市民社会。その国の一般の女性たちですよ。女性たちが連帯して、声を上げて、女性に不平等な社会の仕組みを変えてもいるんです。

婚活のプロフィール問題

長野:スウェーデンの漫画家のオーサ・イエークストロムさんが、朝日新聞のインタビューで「日本は、スウェーデンの50年くらい前の状況」って話をしてね。

婚活パーティに行ったら、プロフィールに(女性は)「得意料理」を書く欄があって、同じ欄に男性は「年収」を記入するようになっていて驚愕したって。

スウェーデンでは福祉がしっかりしているから、経済力で男性を選ぶことがまずないと。女性が結婚で男性を選ぶ条件は、家事・育児が得意であるかがポイント、という話をしていたの。

男性はこういう話をすると引き気味になるし、ともすれば「女性が自分より経済力を持つことが頭にくる」という人もいるけど、逆にそういう考え方が男性の生き方を縛り付けているのではと思う。

大崎:ジェンダー問題って、本当は男女の問題なんです。

日本では、「男が有償労働で家計を支える、女が家事育児、介護看護を無償でやる」という性別役割分担で来たけど、それがしんどい男性だってたくさんいる。

長野:彼らにとってもしんどい、呪いという名の古い社会規範よね。

大崎:男性のジェンダー規範も、日本はすごく強いですよね。

南米はマッチョ礼賛だから力が強くないと。モンゴルも男が就くべき仕事は力仕事。だから、日本では女性が著しく少ない医者とか大学教授とかの職種にすごく女性が多い。女性の国会議員も多いですね。

日本は特に、男性は、とにかく、稼いで家族を養って、辛いことがあっても「男は黙って黒ラベル」。

長野:男は黙って黒ラベル。みんなわかんないよ(笑)。

Ryan Takeshita

責任の分かち合い、男性の生き方も豊かになる

大崎:ジェンダー平等社会というのは、機会、権利、あと責任を男女間で分かち合える環境が整った社会。それが国連の定義です。

ジェンダー平等って権利、機会って見られがちなんだけど、それだけじゃないんです。権利、機会は女性の方が圧倒的に少なかったから、女性の問題に見られるんだけど、実は、これまで男性が担ってきた家計責任を、女性も担うよねっていう側面も。

お互い、家計責任と家庭責任を分かち合いながら生きていける社会を作りましょう、っていうのがジェンダー平等の議論の大前提としてあるんですね。

女性にも新しい責任がある。一緒にやるのはどうすればいいか。

やはり、子どもを安心して預けられる質の高い保育園が必要になるし、男性の長時間労働をなんとかしないといけない。そういう環境整備をするのは政治の仕事です。

法律、政策、さらに予算分配も必要。そうした意思決定にどれだけ女性が関わっているか。ジェンダーギャップ指数は、そこを見ているんです。

長野:男の人を解放する話でもあるわけだよね。

大崎:1998年に日本の自殺者数が急激に増加し、3万人を超えました。その大半が40〜50代の男性でした。その前年に山一證券が自主廃業し、バブル崩壊の影響が中小企業を含め、日本中に広がった頃です。

今は、自殺対策基本法もできて、これが社会問題であるという認識が広がり、総数は減少傾向にありますが、やはり、女性よりも男性が多い。

男性のジェンダー規範、つまり、「男は稼いで家族を養って一人前」「弱音を吐いたり助けを求めたりするのは男らしくない」という規範が男性を縛っているなと思います。

今は年齢とともに給料が上がっていくわけではない。でも、家のローンもあるし、子どもたちの教育費もかかる。妻が働いてもローンなんて払えないから、うつ病になったとしてもパワハラに遭っても、会社を辞められない。

長野:意思決定に女性が半分いることに抵抗を感じる男性も多いと思うけど、むしろ、男性は賛成したほうがいいのではとも思う。なんでも男の責任、って大変だよね。「同等に責任を分かち合いましょう」って、男性が主張してもいいくらい。

大崎:それは本当にそうなんだけど、そのためには、家計責任と家庭責任を男女で分かち合えるような仕組みや環境がまず必要です。

そういう環境があった上で、実際にどう分担するかは、それぞれのカップルが自分たちで、その時その時の家族の状況で決めればいいんですよ。

長野:私も「(フジテレビを)辞めるという決断、男だったらできたかな?」というのはすごく考える。

私がリスクを取れたのも、やはりそのときに結婚が頭にあって、私がしくじっても夫がいてくれるというのはあった。逆に結婚を目前にした男性が、私の立場でフリーになるかなって。その辺の選択は男の人は縛られるよね。

大崎:男子学生に聞くと、「専業主婦になりたいっていう子は、無理ですね〜」っていう子が多いんですよ。

自分ひとりで家族を一生養うのは難しいと思っているから。自分は子育てにも関わりたいし、やっぱり家庭責任と家計責任を分かち合える人がいいと。

Ryan Takeshita

長野:本当にそうだと思う。

女性活躍という言葉は、ともすれば誤解を招く。上から活躍しなさいと命じられているような気がする。活躍しないといけないの? という疑問も抱く。だけど実は責任の分割っていうことだから、男女がもっと自由になれるということなのね。

男性も立ち止まって妻に、「こういうこと本当はやりたかったんだ」って言えるし、実現の可能性も増えて生き方も豊かになるよね。

大崎:日本は男性の「弱音吐いちゃいけない」「経済の大黒柱であらねばならぬ」っていう規範がものすごく強いから、そこをもう少し分かち合っていこうと。

長野:国会でも「働き方改革」が紛糾してるけど、こうした基本概念の共有ができてない気がする。

どうして女性議員は少ないのか

長野:なんで女性の国会議員って増えないんだろう?

大崎:色々ありますけれども、まずは女の人にとっては参入障壁が著しく高い。

「政治は男の仕事」というカルチャー。24時間オンコールだと、育児との両立は難しい。それでも頑張ると、「子どもはどうした?」と言われる。男性議員はそんなこと言われないのにね。

選挙に出るための供託金もすごい高いですよね。

今、衆議院に占める女性の割合は10.1%です。クリティカルマスという理論がありますが、ある場で意思決定するときに、同じ属性を代表する人が3割いないと、全体の意思決定に影響を及ぼすことはできないと言われています。

3割以上いると、いろんな女性の声が反映されるようになる。

長野:全く景色が変わってくるんだろうね。

大崎:だから、最低3割いないといけない。世界中の多くの国がクオータ制(ある一定のパーセンテージを議席や、政党からの候補者数に割り当てる一時的なアクション)を導入し、まず、女性の数を増やしています。

1割程度では、全体の意思決定に女性の意思を反映させられないし、特別な人しかなれないから。

クオータ制の話をすると、世界中で「能力のない女が入ってくる」っていう話になるんだけど、女性たちは「は? 男はみんな能力あるのか」と言い返してますね(笑)。

長野:たしかに、なぜか女が入ってくると、メディアも含めて、能力、能力ってなる。

大崎:日本でもクオータ制に関連した動きが加速しています。

選挙の候補者数を男女で「均等」にするよう各政党に促す「政治分野における男女共同参画推進法案」については2016年に自民党も了承しています

2017年に、超党派の議連がこの法案を国会に提出しましたが、9月の解散で廃案となりました。本当に残念でした。今国会では成立するよう、願っています。

そのためには、私たち女性が応援しないといけないし、メディアにも報道してほしい。

ぜひ、注目していただきたいですね。

......

3月8日は国際女性デー。女性が生きやすい社会は、男性も生きやすいはず。社会の仕組みも生き方も、そういう視点でアップデートしていきたい。#女性のホンネ2018 でみなさんの考えやアイデアを聞かせてください。ハフポストも一緒に考えます。

大崎麻子(おおさき・あさこ)
女性のエンパワーメント専門家。元国連職員。1971年生まれ。上智大学卒業。米国コロンビア大学で国際関係修士号取得後、国連開発画(UNDP)ニューヨーク本部に入局。世界各地で女性のための教育、雇用・起業支援、政治参加の推進、紛争・災害復興などのプロジェクトを手がけた。大学院在学中に長男を、国連在職中に長女を出産し、子連れ出張も経験。現在はフリーの専門家として、大学、NGO、メディアなどで幅広く活動中。G20、APEC(アジア太平洋経済協力)、ASEM(アジア欧州会合)、国際女性会議WAW! (国際女性会議)など、国際会合への出席や国際調査を通じて世界の動きに精通すると同時に、国内のジェンダー問題や女性・ガールズのエンパワーメント・リーダーシップ教育にも取り組んでいる。
関西学院大学客員教授、聖心女子大学非常勤講師、公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン理事、NPO法人Gender Action Platform理事、内閣府男女共同参画推進連携会議有識者議員、国連安保理決議第1325号「女性、平和、安全保障」に関する日本政府による行動計画評価委員会(外務省)、国際女性会議WAW! 国内アドバイザー(外務省)。TBS系「サンデーモーニング」レギュラー・コメンテーター。著書『女の子の幸福論 もっと輝く、明日からの生き方』(講談社)。最新刊は『エンパワーメント 働くミレニアル女子が身につけたい力』(経済界)。