BTS問題で専門家が指摘 「ネットには謝罪するか・しないかだけが一人歩きする悪い傾向がある」

K-POPに詳しい松谷創一郎さんはBTSメンバーに「いつか自分たちの言葉で語ってほしい」と期待します。
韓国の音楽グループ「BTS(防弾少年団)」(アメリカ・ニューヨークの国連本部)
韓国の音楽グループ「BTS(防弾少年団)」(アメリカ・ニューヨークの国連本部)

韓国のアイドルグループ「BTS(防弾少年団)」のメンバーが、過去に「原爆Tシャツ」を着用したり「ナチス風パフォーマンス」を披露していたりした問題が、波紋を呼んでいる。

11月15日、韓国エンタメに詳しい広島出身のライター、武蔵大学非常勤講師の松谷創一郎さんがハフポスト日本版のネット番組「ハフトーク」に電話出演。一連の騒動について、「ネットには、謝罪するかしないかだけが一人歩きする悪い傾向がある」と指摘した。謝罪そのものに焦点を置くのではなく、「なぜそれが問題なのか」「今後どうしていくべきなのか」をもっと話し合うべきなのではないかと語った。

「謝罪という形式にこだわらないで」

今回の問題は、メンバーの「原爆Tシャツ」を「反日」的だと批判した一部のネットユーザーから大きな火がついた。

松谷さんは「ネット右翼と見なされる一部の嫌韓層」をおさめるための謝罪は「必要がない」と主張してきたが、その理由を以下のように語った。

「ネットには、謝罪するかしないかということ自体が一人歩きする悪いところがあります。『謝ったら終了』みたいな言い方もある。その反対には『謝らせたら勝ち』という感覚があるんですね。でも、謝罪するかしないかだけを捉えて話が進んでいくのは、重要なことではありません。そうではなく、なぜそれがダメなのかを丁寧に考える必要がある」

BTS側の一連の行為は、確かに間違っていた。しかし、その上でメンバー本人たちも、それを受け止める我々も、「謝罪という形式にこだわるのはよくない」と松谷さんは話す。

一方、13日に所属事務所のBig Hit Entertainment(ビッグヒットエンターテインメント)が公開した謝罪文については一定の評価を見せた。

「謝罪は、することが大事なのではなく中身が伴っていないと意味がない。今回、事務所は、被爆者団体やユダヤ人団体とも連絡をとって会話をした上で、そのプロセスの一つとして謝罪をしている。ただ単に"謝っておけばいい"という態度ではありません」

「被爆者団体側も、『謝罪したら終わり』ということを求めていません。昔から(同様の問題が起きた時にも)そうですが、喧嘩をするのではなく、ちゃんと対話をして理解を深めていくという態度を彼らも求めているんです」

▼事務所が発表した謝罪文の一部

6. Big Hitはこの度、提起された問題を解決するために次のような措置を取っております。

● Big Hitは、日本と韓国の原爆被害者協会の関係者に接触し、現在、提起されている問題に対する説明および傷つき得た方にお詫びをしております。

● Big Hitは現事案について問題を提起した団体であるSimon Wiesenthal Centerに状況を説明し、本問題により傷つき得た方に対するお詫びを込めた書簡を発送しました

メンバーに期待すること

BTSはいまや、名実ともに世界的なアーティストだ。その人気は、韓国や日本だけに止まらず、全米ビルボードチャートで連続1位を獲得するなどグローバルな活躍を見せている。9月には国連で若者に向けて演説し、「肌の色やジェンダー意識は関係ありません。あなたのことを話してください」などと呼びかけ、世界中から大きな賞賛を集めた。

大きな発信力と影響力を持つBTSをめぐって起きた、今回の問題。松谷さんは「いつか自分たちの言葉で語ってほしい」と期待を寄せる。

「(ひとまずは事務所の謝罪ということになっているが)BTSは自分たちの口でメッセージを発することができるグループ。決して急ぐ必要はないが、いつか自分たちの言葉でファンに(気持ちや経緯を)語ってほしい。また今後も、メンバーが被爆者団体と会うなどして理解を深めていってほしいと思います」

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