細菌の量は便座の10倍...?「スマホ細菌」の危険性と、除菌方法とは

インフルエンザやノロウイルスの感染を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか。
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今や普及率は70%を超え、生活になくてはならないスマホ。みなさんは1日に何回スマホに触っていますか? コンサルティング事業大手のデロイト社のアメリカでの調査によると、アメリカ人の場合、1日に約47回も触っているといいます。

便座の10倍?

最近の研究ではスマホにはとんでもない量の細菌が付着していることが分かってきました。サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィーズ大学で2015年に行われた研究によると、105人の医学生のスマホから多くの細菌が検出され、医療行為中のスマホの使用を制限するよう提言しています。

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また、2017年のエストニアのタルトゥ大学での高校生を対象にした調査では、スマホに約1万7000個もの細菌が付着していました。この細菌の量は、便座の約10倍にあたります。

スマホの除菌は必要?

しかし、汚れているからスマホを消毒しなければならないかというと、そうでもないようです。一体なぜでしょうか。医師で「日本うんこ学会」会長の石井洋介先生に話を伺いました。

「手やスマホに付着している菌のほとんどは無害です。人間は常在菌と呼ばれる菌と共生しています。スマホに限らずテーブルやイスなど、日常的に触れるものには人間の常在菌が付着していますが、これらは一般的には毒性をもたないのです」(石井先生)

それでも、外で操作することも多いスマホは、空気中のウイルスが付着したり、汚いものを触った手で操作するなどして危険な菌を付着させる可能性はないのでしょうか?

「確かに、有害な細菌やウイルスが全くいないわけではありません。これからの季節、特に気を付けたいのはインフルエンザウイルスとノロウイルスです。インフルエンザウイルスは、感染者の咳などの飛沫などで感染します。また、ノロウイルスは糞口感染といって、便から感染します。これらが手やスマホに付着しないようにする必要はあるでしょう」(石井先生)

簡単な除菌方法

その場合、どんな対策をとれば良いのでしょうか?

「こうした感染は、インフルエンザ感染者がマスクをしない、ノロウイルス感染者がトイレを使った後に消毒をしないことなどが主な原因になっています。感染予防にはまずは感染者(あるいは感染の可能性がある人)に感染予防策をしてもらうのが一番です。

インフルエンザ患者の場合は、マスクをして、こまめに手洗いやうがいをすること。ノロウイルス患者は、便を流すときはトイレの蓋を閉めて流すことで便に含まれるウイルスの飛散を防ぎ、また流した後にきちんとトイレを掃除することが求められます」(石井先生)

そもそもトイレでスマホを使用しないとか、アルコールで消毒するといった対策は有効なのでしょうか?

「トイレでスマホを使用しないのは良いと思います。しかし、スマホの画面をアルコール除菌して除去できるのは常在菌だけで、ノロウイルスなどには効果がありません。ノロウイルスに対しては次亜塩素酸で消毒をする必要があります」(石井先生)

これからの時季、インフルエンザやノロウイルスの感染を防ぐためにも、トイレでスマホを安易に使用するのは控えた方が良いかもしれませんね。

参考資料など

総務省『平成29年度情報通信白書』2017年/TIME,"Your Cell Phone Is 10 Times Dirtier Than a Toilet Seat. Here's What to Do About It,"2017./Deloitte.,"Global mobile consumer survey: US edition,"2017./Shadi Zakai etc,"Bacterial contamination of cell phones of medical students at King Abdulaziz University,Jeddah,Saudi Arabia,"2015./Siiri Kõljalg etc"High level bacterial contamination of secondary school students' mobilephones,"2017.

(2018年11月25日ウェザーニュース「"スマホ雑菌" ウイルス感染・細菌感染の危険性は?」より転載)

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