ミャンマー西部ラカイン州に居住するイスラム系少数派の隣国バングラデシュへの流入が昨年8月下旬に始まって約5ヵ月、この間の避難民の数は約66万人、以前から滞在する避難民と合わせると約87万人に上ります。人々は竹材とビニールで建てた粗末なテントが密集し、衛生状態が劣悪な避難民キャンプで過酷な生活を強いられています。AAR Japan[難民を助ける会]は11月に緊急支援として毛布900枚、子ども服(パーカー)900着を、現地のNGO団体コーストトラスト(COAST Trust)と協力して約450世帯に配付しました。
静かに並んで配付をまつ避難民の方々(2017年11月27日、クトゥパロンキャンプ)
現地のニーズから、越冬支援を実施
バングラデシュは熱帯とはいえ、乾季の12~2月ごろは最低気温が12~13度まで下がり、特に年明けは例年にない寒波に見舞われています。とりわけ避難民は、雨風も満足にしのげない粗末なテントで土間にゴザを敷いて寝ているため、毛布が必需品です。同国南東部コックスバザール県の通称"メガキャンプ"の中心付近に位置するクトゥパロン・キャンプで暮らすジア・ロフマンさん(37歳)一家は11月27日、毛布2枚と子ども服2着を受け取りました。妻と子ども2人とともに9月初旬にラカイン州から避難してきたロフマンさんは、「ミャンマー政府軍に家を焼かれて着の身着のまま逃げてきて、服も買ってやれずにいました。肌寒くなる時季に暖かい毛布と子ども服をもらって助かっています」と話してくれました。
毛布と子ども服を受け取った、ジア・ロフマンさん(右端)一家。縞模様のパーカーを着ている2人が夫婦の子ども(2017年12月23日、クトゥパロンキャンプ)
避難民支援を本格化
現地ではミャンマー、バングラデシュ両国政府の合意に基づく避難民の帰還プロセスが始まろうとしていますが、避難民問題は長期化が予想されます。解決に向けた国際社会の後押しが欠かせません。AARは12月、コックスバザール県に事務所を開設し、駐在員2人を派遣して現地協力団体とともにミャンマー避難民支援を本格化させています。現在、キャンプ内の劣悪な居住・衛生環境を改善するため、公共トイレと水浴び場を併設した施設や井戸の建設、新たな物資配付に向け準備を進めています。引き続き、活動へのご支援を、どうかよろしくお願いいたします。
パーカーを受け取った親子と話す、AAR バングラデシュ・コックスバザール事務所の柿澤福郎(左端)。何が本当に求められているかを知るには、人々から直接聞き取りを重ねるしかありません(2017年12月23日、クトゥパロンキャンプ)
公共トイレと水浴び施設。これまで設置されたトイレの約4割が機能していないため、今後改善していきます(2017年12月23日、クトゥパロンキャンプ)
【報告者】
バングラデシュ・コックスバザール事務所 中坪 央暁
大学卒業後、新聞社で特派員、編集デスクを経験。ジャーナリストとして平和構築支援の現地取材に携わった後、2017年12月にAARへ。栃木県出身