ベトナムで欠かすことができない行事のひとつに中秋節があります。
日本ではあまり馴染みのないイベントですが、ベトナムでは中秋節が近づくと街の様子が段々と変わるのを感じます。
では、ベトナム人にとって中秋節とはどのような行事なのでしょうか?
今回は私がハノイ留学中にお世話になり、その後も訪れる度に部屋を提供してくれている、グエン・ティ・トゥオンさんに中秋節について教えてもらいました!
(以下からの文章は彼女の語り口調で書かせていただいています)
ベトナム人が語る中秋節「秋という季節を楽しむためのお祭り」
中秋節は陰暦の9月15日(2016年の陽暦では9月15日)に行われる、季節を楽しむ行事のこ
陰暦では7〜9月が秋なので、8月15日はちょうど真ん中の日に当たります。
▶ハノイの旧市街ドンスアン市場
秋は一番天気が良くて景色も綺麗な季節で、月はいつもより丸くて白く見えるのよ!
そのため、中秋節は別名「月見節(tết trông trăng テッチョンチャン)」とも言います。
もともと中秋節は、中国文化の影響を受けたもの。
月餅や果物、そしてお菓子などを用意してまずはご先祖様にお供えし、中秋節の夜にみんなでお供えものをいただくのです。
子どもの日としての中秋節
▶ 様々なタイプの月餅
月を眺めるだけではなく、中秋節は子どもを大切にする日でもあります。
そのため親は準備で大忙し!
星やまん丸の形をした提灯、お面のおもちゃなど、子どもが喜びそうなものを買ってあげるのです。
最近は少なくなってしまったけれど、米粉で作った人形(tò heトーヘー)も準備するもののひとつ。
それぞれの家で親が子どものために準備をするだけでなく、小さな自治体や、最近ではマンション単位で月餅やお菓子や果物を用意し、子どもを集めて振舞うこともあります。
その時は獅子舞や太鼓の演奏が行われ、とても楽しいのよ。
また中秋節に合わせて、多くの慈善活動団体が貧しい地域の子どもを支援する活動を行っています。
少しずつ変わりながらも生き続ける中秋節の文化
▶おもちゃを買ってもらう子どもたち
昔は伝統行事としての意味合いが強かった中秋節ですが、8月革命後から少し変わった気がします。
9月革命とは、1945年9月17日に始まった革命のこと。
その後9月2日にホー・チ・ミンがベトナム民主共和国の独立を宣言しました。
新政権が子どもを大切にしているという姿勢を示すために、次第と中秋節はこどもの日として意味合いがより強調されるようになりました。
ホー・チ・ミンが子どもたちに宛てたメッセージを発表するようになり、それからは歴代の国家主席も同じようにしています。
現在の国家主席であるチャン・ダイ・クアンも、つい先日子どもたちに宛てたメッセージを発表したのよ。
何十年経っても忘れられない思い出
中秋節にまつわる思い出で忘れられないものが、ふたつあります。
ひとつ目は、私が6歳か7歳の頃の出来事。
庭に大きなゴザを2枚敷いて、兄弟たちでそこに寝転がって月を眺めていました。
その頃はまだ電気がなく、明かりはランプしかありません。
月が本当にまん丸で綺麗に輝いていたのを今でも覚えています。きび砂糖で作ったお菓子や果物を食べながら、月を眺めました。
今とは違って、当時は家と家の間が自由に行き来できたので、近所の友達が私たちのところにやってきて、一緒に遊んだのがとても楽しかった!
ふたつ目は小学6年生の頃。
学校で仲が良かった子たちとダンスのグループを作って、中秋節に踊りました。
色々な曲を踊ったけれど、chiếc đèn ông sao(チエックデンオンサオ「お星さまの光」)を踊ったのをはっきりと覚えています。
一緒に踊った子の中でまだ元気にしている人とは、今でも連絡を取り合っているの!
あとがき:インタビューを通して感じた「ベトナム人にとっての中秋節」
今回ベトナム人にインタビューをしてみて、改めて中秋節はベトナムの人たちから切っても切り離せないものなのだなと私は感じました。
特に印象的だったのは、中秋節にまつわる思い出を伺った時。
もともとおしゃべり好きで笑顔を絶やさないおばあちゃんですが、自身の思い出を語っていただいた時は、更に素敵な笑顔で楽しそうに話してくれました!
中秋のお月様には、ベトナム人一人ひとりの特別な思い出が詰まっているようです。
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ライター
さぬっふぃー/Sanuffy
1991年生まれ。小さい頃の夢は魔法使い。小学6年生の時に「外国語って新しい世界に行く魔法みたい!」と思い、外国語を学ぶことを決意。大学でベトナム語を専攻し、現在は大学院でベトナム語を研究中。「人生という旅の途中の面白い寄り道を発信する」ことを目的に、ブログ「旅の寄り道」を更新しています。
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