3年間、不妊治療しました。おんなふたりで子育てするまで。

「小さい頃から、子供を持たない人生は考えていませんでした。レズビアンだと気づいてからもそうです」
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「ずっと夢だったんだけど。子供が欲しいの。一緒に育ててもらえないかな?」

10年前、青山さんは、パートナーである大月さん(仮名)に切り出した。大月さんはその場で快諾し、おんなふたりの子作りがスタートした。

今では7歳の息子を育てるママとなったふたりだが、子供を授かるのは簡単なことではなかった。

家族の説得、精子提供者探し。そして、3年におよぶ妊活が待っていた。「子供を持たない人生は考えていませんでした」と話すふたりに、子育てまでの歩みを聞いた。

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Kaori Sasagawa
(左から)青山さんと大月さん。腕にはおそろいのApple Watch

最初の試練は、母の説得

ーーおふたりの出会いは?

青山さん(以降:青山):オフ会で出会ったんですよね。実はそれより10年前に一度面識があったんで、「久しぶり、覚えてる?」から始まって、気がついたら3次会までずっと盛りあがって話し続けました。最初は恋愛というよりは、ものすごく話が合う友達に出会った! という感じでした。それから、少しずつパートナーシップに変化していきましたね。

大月さん(以降:大月):彼女と付き合う前の20代のころは、私は男性と結婚していました。一応、恋愛結婚だったので、厳密にはバイだったのかな? でも、結婚生活を送る間に、女性と人生を送りたいと思うようになって。離婚後、彼女と出会って、ふたりでいることが誰といるよりも自然なかたちになりました。

――女性が恋愛対象だと気づいたきっかけは?

青山:私の場合、中学から女子校だったんですけど。じつは自覚より先に、周りの友達から、「青山ってレズなんじゃない?」って言われていました(笑)。私はまったく自覚がなく、むしろ初めて聞いたときは「レズって何?」と思ったくらいです。

その後、15歳のときに、恋愛的に好きな女性ができて、ようやく腑に落ちました。相手に好きですと告白したら、ラッキーなことに、そのまま付き合うことになって。だから、気がついたらレズビアンだったし、セクシュアリティを隠したことがなかったし、自覚の前と後で、周りの反応も変わらなかったです。

ーーかなり珍しいパターンですよね。ということはカミングアウトに悩んだこともほとんどなかったと。

青山:一番、乗り越えるのが難しく感じたのは、母でしたね。

高校を卒業するころに初めて「実は、私は女性が好きなんだよね。だから、バイかレズビアンだと思う」と伝えたら、「大学に入ったら、男性とお付き合いしてほしい。ありのままのあなたを受け入れるべきだと頭では理解しているけど、正直、ゴキブリくらい気持ち悪い」と言われましたね。今思いだしても、あれはヒドイ!(笑)。

思わず、「え⁉︎ どういうこと、最後の一言、明らかにいらなくない?」って言いましたよ。その後も何度か、「もうその話題は聞きたくない、止めて」と言われました。娘の人生の話なのに、止めろってどういうこと(怒)って感じですけど。

でも、ときどき暴言があっても、母は、自分の思考の過程を隠さずすべて話してくれる人。論理的でもあり、フェアネス(平等性)を重視する人でもありました。だから、私も我慢せずに、「自分はこういう人間だ!」とどんどんぶつけて、戦っていけたのかもしれません。

ーーハッキリしたお母さんですね。理解してもらえるタイミングはあったんですか?

青山:私が30歳の頃に、やっと「私は、仕事が大好きで、一生続けていきたい。彼女は私を心身ともに支えてくれる人なんだよ」と言ったとき、やっと納得したみたいです。その後、母が彼女(大月さん)とふたりきりになるタイミングのときに「あなたが娘の側にいてくれることをうれしく思う」と伝えてくれて。それからはスムーズでした。

ゲイ男性の精子提供で子供を作ろうと思うと伝えたときは、さすがにどんな反応をするだろうと不安だったんですが、むしろ、それには大賛成で、意外でした。

大月:精子提供者と、青山のお母さんと、4人で旅行もしましたね。本来は精子提供者と私たちが、お互いの人間性を見きわめようという趣旨の旅行だったんですが、お母さんも一緒に行きたいと言いだして(笑)。

どうやって精子提供者と出会ったのか

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Urupong via Getty Images
(写真はイメージ)

ーー精子提供者の方とお母さんと旅行、いきなり距離がかなり近いですね。おふたりが子供を作りたいと思ったのはいつから?

青山:小さい頃から、子供を持たない人生は考えていませんでした。レズビアンだと気づいてからもそうです。中学時代、ウニの卵子と精子を受精させるという実験をやったことがあって、そのとき「子供を作るというのは、究極的にはこういうことだな」と思ったことを覚えています。

それよりも、子供を育てられるだけの経済力が持てるかのほうが心配でした。20代はずっと非正規雇用だったんですが、30代になって正社員登用の道が拓けて。大月さんに「経済的に安定したら、子供が欲しい。一緒に育ててもらえないか?」と聞いたんです。そうしたら、「いいよ」とすぐにOKしてくれて。むしろ驚きました。

ーーそこからふたりで精子提供者を探した。精子バンクは選択しなかったんですよね?

大月さん:はい。海外の精子バンクから取り寄せた精子で妊娠した方のブログも見ましたが、私は、子供を授かるなら、人となりがわかる相手から精子を提供してもらいたいという思いがありました。

子供のアイデンティティ形成に、自分のルーツを知ることができるかどうかが影響するような気がしたんです。実際に会える会えないは別として、子供に「お父さんはこういう人だよ」と教えてあげたかった。

青山:正直、私は最初、精子バンクがいいんじゃないかと思ってたんですよ。最優先すべきなのは、彼女(大月さん)の権利だと思っていましたから。同性婚のない今の日本では、パートナーである私が子供を産んでも、彼女が子の親だとは認められません。法律的には、他人なんです。

だから仮に、精子提供者が、子の父親としての権利を主張してきたら、彼女の立場は、精子提供者よりも弱くなる可能性もあるわけです。それを避けるためにも、精子バンクがいいのかなって。それでも彼女は、精子提供者を自分で探すことを望んだので、じゃあそうしようと私も同意しました。

もし、ピンとくる提供者と出会えなければ、そのときもう一度、精子バンクを検討しようと話し合いました。

ーー精子提供者はどのように探したんですか?

青山:「子供が欲しい ゲイ」で検索してみたら、ゲイとレズビアンが交流するBBS(掲示板)がヒットしました。そこに「婚姻はしたくないけれど、子供を持ちたいと考えています。精子提供をして、一緒に親になることに興味はありませんか」と書き込みました。

大月:私はインターネットで募集するのは危険じゃないかと、心配もしていたんですけどね......。個人情報は極力出さないようにしながら、何度かメールをやりとりして、相手の人柄を見極めてから、やっと会う約束をしました。会うときも必ずふたりで行って、常に警戒心を持って面会していました。実際、5人ほどに会いましたが、変な人には出会わなかったのは幸いでしたね。

ーー精子提供者を選ぶ上で、どんなことを考えていましたか?

青山:学歴や外見はまったく気にしませんでした。経済的な負担も望んでいなかったし。強いて言えば、重視したのは、「コミュニケーション力」ですかね。おたがいに違う意見を持っていても、それを会話ですりあわせていける方がいいな、と。

興味本位で連絡してくる人もいたので、必ず会う前に、何故子供が欲しいと思ったのか、子供に何を期待するかを、きくようにしていました。普段、言葉にしたことがない感情をどう言語化するかに、その方の人柄が見える気がしたんです。

ーー精子提供をしようと考える男性の気持ちは、どのようなものなのでしょう?

青山:私が聞いた声では、「ゲイである自分は遺伝子は残せないと思ってきたから、子供が欲しいという自分の欲望も意識しないようにして生きてきた。でも私の投稿を見たとき、全く注目してこなかった場所に光が差した気がした」とか、印象に残っています。すごく伝わる表現だなと思いましたね。

大月:色んな人と会いましたが、子供と遊ぶのが好きだからという人もいれば、遠くから時々、見守れるだけでいいという人もいました。

青山:この世に自分の子供がいると思えたら、それだけで、これからの人生が変わりそうな気がするとか。

実際に、私の子供の父親になった方とは、出会ってから妊活を始めるまでに、数年以上、友達付き合いをしました。本当に素敵な人ですよ。「この人の血の繋がった子供がほしい」と思えたから、妊活に踏み切りましたね。

3年間の妊活。

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venuestock via Getty Images
(写真はイメージ)

ーー実際に妊活を始められて、いかがでしたか?

青山:妊活中、精子提供者の気持ちの変化は、興味深かったですね。

それまで深く考えたことがない「ただの体液」だったものが、生命の元なのだと気付いて、敬虔(けいけん)な気持ちになったと言っていました。

また、子供って、「こんなに授かろうと強く念じて手を尽くしても、なかなか授かれないんだ」と気付いたとか。それは、私も本当に同感でした。ゲイなので、それまで女性にはまったく興味がなかったけれど、女性の体の仕組みにも詳しくなっていましたね。

ーー実際に妊活を始めてから、子供を授かるまでにはどれくらいの時間が?

青山:丸3年かかりました。最初の8カ月は提供してもらった精子を自分で膣内に注入していました。その後は、病院に通いました。不妊治療の経験者なら共感してもらえるとおもうのですが、かなりメンタルに堪えましたね。

私たちの妊活の様子をmixi上に日記として公開していたおかげで、妊活に興味のなかった友人たちにも、すごく応援してもらいました。

ーー養子を考えたりもしましたか?

青山:人口受精で授からなかった段階で、もう産めないかもしれないと海外養子や里親なども調べました。でも国際養子縁組は、婚姻している夫婦でなければ受け入れることができなさそうで。自分で産めない限り、子供を育てることは難しいのだと思って、絶望しかかったこともあります。

今のように、セクシュアルマイノリティのカップルが里親になるための活動をするRFC(一般社団法人レインボーフォスターケア)さんのような取り組みが、当時あったら、はやめに妊娠は諦め、その活動に注力していたかもしれません。

ゲイが子供をつくってはいけないの?

ーー出産後、精子提供者の方は、お子さんと会っていますか?

青山:いえ、出産した翌日に、一度だけです。妊活していたころは、彼も「一緒に暮らさなくても、週末パパをやれたらいいね」と楽しそうに話していたんですが、妊娠がわかったとき、彼が、ゲイの友人にその話をすると「ゲイが子供を持つなんて、いけないことだ。子供にとって、ゲイの父親なんてかわいそうだ」と言われたんだそうです。

そのせいだけではなく、子供が実際に産まれてくると想像したときに、父親として、ゲイである自分に、肯定的なイメージがどうしても持てない。自分が内在化している差別意識が伝わったら、子供が自分の出自を否定的に感じるかもしれない。だから自分は、子供には関わらないほうがいいと思う、と言われました。私と大月さんには、ネガティブなセルフイメージが全くないので、安心して任せられる、と。

大月:彼が、切実な気持ちで言っていることは伝わったので、それで承諾しました。

でも、「子供が成長して、日本でのLGBTが置かれている状況や、父親母親がLGBTであることをちゃんと理解しても、お父さんに会いたいと子供が望んだら、会ってほしい」と説得しました。すると、「そのときは会います」と約束してくれました。

青山さん:彼は、出産の翌日に病院にきてくれて、子供を抱っこしてくれました。

抱っこしているとき、彼、すごく愛にあふれた、見ていても胸が熱くなるような表情をしていたんですよ。それで、やっと納得できたんです。彼は我が子を愛しているからこそ、「そばにいない」という選択をしたんだと。私はやっぱり、その選択は間違っていると思うけれど、彼の意志を尊重したいと思いました。

子供と最初で最後に会ったときの、彼の表情を見ていなかったら、彼のことを嫌いになっていたかもしれませんね。

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(写真はイメージ)

ーーその後、やりとりは続いているんですか?

青山:定期的に子供の成長を写真で送っています。ひらがなが書けるようになりましたとか、こんなことをしゃべり始めましたとか。そしたら、「僕の子供だから、語学が得意なはず」とか、ちょっと夢見がちなことを返してきます(笑)。

大月:ロマンチストですよね。

青山:2歳の誕生日には、優しい子供になって欲しいからと、生き物をいきなり送ってきたんです。生き物と、水槽と砂。あれには驚いたなあ。

子供はまだ2歳。しばらくは大人が育てていたんですけど、子供の世話で、ただでさえドタバタしている中、なぜ私がペットのフンの処理までしないといけないんだと怒って、申し訳ないけど、送り返しましたね。「子供が5歳になったら受け取るから、それまで育てておいて」と言って(笑)。

大月:イヤイヤ期の子供を抱えた生活がわかってませんでしたね。そういえばその後、ペットのことは音沙汰がないなあ(笑)。

青山:翌年からは、子供への誕生日プレゼントには、毎年工夫してくれてます。ちょっとトンチンカンだけど、愛していることは伝わってきますし、子供もすごく喜んでいます。

大月:子供に会うまで健康でいて欲しいな。きっと、体を鍛えてるんじゃないかな(笑)。

家族と子供の処世術

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Kaori Sasagawa

ーーお子さんは現在7歳。自分たちの家族のことを伝えたりしていますか?

青山:すでに彼なりに理解していますし、処世術を身につけています。

本人にとっては生まれたときからの普通の環境でも、ごく小さい頃から、周りに「なぜパパがいないの?」と聞かれていたので、彼もその対応に慣れていて。「お父さんはいないおうちも、あるんだよ。代わりに、うちにはヒロちゃんがいるんだよー」って。

大月:基本的には彼女のことを「ママ」と呼んで、私のことは「ヒロちゃん」ですが、私とふたりで出歩いている時などは、私のことをママと呼んだりもしています。彼なりに「説明が面倒な時にはそう言ってもいい」というルールがあるらしいです。

青山:彼の将来の夢は「ママと結婚すること」らしいんですが、「ママはもう、ヒロちゃんと結婚しているんだよ」と言うと「日本では、女同士は結婚できないでしょ。できる国もあるのは知ってるけど、できないでしょ。だから、ママはぼくと結婚して」と切り返してきました(笑)。けっこうちゃんと理解していますよね(笑)。

「ママは結婚していないのに、なぜ子供ができたの?」と聞かれたこともありました。その時は、結婚と子供ができることは必ずしもイコールではないと、性教育的な側面からも丁寧に説明しました。

大月:異性愛の夫婦で、両方と血縁のある子供を育てている場合は、我が子にわざわざ自分たちのパートナーシップについての説明ってしませんよね。「ママとパパが結婚して、君ができた」という説明から、家族というのは自然発生的なものだと思うし、疑問も生まれないんじゃないかな。

そういう意味では、私たちも、子供自身も、「家族ってなんだろう?」と考える機会は多いかもしれません。婚姻や血縁によって保証されていないからこそ、しっかり結ばれていようと思えているかも。

ーー学校など周りの対応はいかがですか?

青山:法律的には、私がシングルマザーということになっていますが、育児はふたりで分担しています。お迎えなども交互に行くんですけど、この数年の間に、保護者の方や学校の理解が進んでいる印象があります。ひとり親や、様々なかたちの家族にも、配慮されるようになっていますね。個人的には、PTA活動や地域の活動にもどんどん参加して、悪口を言われにくい雰囲気を作ろうと思っています。

小学校の提出書類に、「父親・母親」を記入する欄があったんですが、そこに敢えて罫線を引いて、「毋1・母2」と書きました。書類の担当者からは、「母の欄にお母さん(青山)の名前を書き、その他の関係者として大月さんの名前を書くのはどうか」と提案されました。でも、そうすると、どうしても子供について、私が主になり、彼女が従になる。

「私たちはふつうの父母と同じように、どちらも主として扱ってもらいたい。だからこそ、本当の関係を表明していかなければならないんです」と伝えたら、教育委員会から「事実婚の夫婦として扱います」と回答が得られました。

大月:法的な部分で、事実婚の夫婦とはぜんぜん違うんですけどね。社会保障、税金周りなどまったくありませんから。それについては、これからも伝えていくしかないですね。

ーー最後に、おふたりにとって「家族」とは?

大月:「共同生活をおくる、1つの"群れ"」です。子供が自立して、群れを離れても、私とパートナーは、群れとして残ります。

青山:野生動物みたいなイメージですよね。今、子供は、私たちふたりの群れに生まれた、小さな個体。食事を分け与えるし、獲物をとる方法を教えます。でも、子供が一人立ちするのに十分なくらい大きくなったら、お尻に噛みついて、群れから追い出すつもりです。

大月:でも、あの子、「ママと結婚する」って言ってるよね? いずれ家族から追い出されると思って、それがイヤだからママと結婚したいんじゃない?(笑)

青山:あ、そういうことか! 群れから追い出しても、ママはママだよって伝えないとね(笑)。

我が子がヘテロかゲイかはわかりませんが、将来、彼なりの家族観を持って、自分の家族を作っていってくれたらいいな、と。新しい群れを作るのか、それとも、一匹オオカミとしてやっていくのでも、かまわない。誰とつがってもいいし、つがわなくてもいいんだよと伝えています。私たちは、家族ですから。

.........

娘を理解できないと受け入れ難く思っていた母、ゲイの父は子を悲しませると思ってしまった精子提供者。おんなふたりの子作りは決して楽ではなかったはずだ。しかし、どんな困難も笑いながら語り合うふたりに気づけばこちらまで笑っていた。

どんな時でも真正面から気持ちを突き合わせ、笑いあえる彼女たちだからこそ、法的な繋がりでもなければ、血縁の繋がりだけでもない家族という群れを作れたのではないだろうか。

いま7歳の彼が、いつか自分のルーツを知る頃には、誰かの不安も「そんなの気にしなくていいよ、ありがとう」と笑い飛ばせる社会になっていることを願いたい。

(取材・文:西本美沙 編集:笹川かおり)

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