【スペイン・サンティアゴ巡礼】 期待は裏切られた。旅の途上の残念な食糧事情

僕たちはまた歩き出した。昨日の反省を活かして、僕はなるべくゆっくりのスピードを心がけ、ときどきは妻と手をつないで歩いた。うん、いい気分だ。

世界でもっとも有名な巡礼地のひとつである、スペイン北西部のキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ。

日本人女性と結婚し、ハネムーン代わりにそのサンティアゴを目指して巡礼路を歩くことにした、ドイツ人のマンフレッド・シュテルツ氏の手記をお届けしています。

巡礼5日目、風邪気味で重たい体、カロリーだけは高い食事......ふたりの修行は続きます。

5th day 〈Zariquiegui → Lorca, 25.8km〉

またまた"いびきナイト"だった。

年配のカップルが5時半から準備を始め、ほかの人たちのアラームも鳴り出した。もうこれ以上は寝ていれられない。僕たちも6時になって起き出してパッキングを始めた。

空には厚い雲がかかっていたが、日がゆっくりと差してきた。階下に準備されていた簡単な朝食をつまんで、さあ出発だ。道ばたには赤いケシの花が揺れている。

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すぐに次の村を行き過ぎた。とここで、ひとりの男性が僕を追い越しながら尋ねた。

「Are you German?」

僕がイエスと答えると「そうだと思った!」だって。長袖長ズボンな上に、帽子をしっかりとかぶった姿がドイツ人っぽいらしい。うーん、そうかな?

気温は涼しく、風も強い。喉は少し良くなったようだけど、まだまだ風邪っぽさを感じる。

小高い峠に差し掛かって、そこに設置してあったモニュメントの写真を撮って、美しい眺めを楽しんだ。雲はいま、山の頂上に少しかかっているだけだ。

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僕たちはまた歩き出した。昨日の反省を活かして、僕はなるべくゆっくりのスピードを心がけ、ときどきは妻と手をつないで歩いた。うん、いい気分だ。

次のオバノスという村で休憩を取ることにした。たいていのカフェやバルには、「ボカディーロ」という、なんのことはない、バゲットにハムをはさんだだけ(気が利いているところでは、チーズやトマトがはさまっていることもある)のシンプルなサンドイッチが用意されている。

サイズだけはしっかりと大きいので、お腹を満たすには十分だけど、味のほうはまあ、見たままだ。残念ながら、僕の中ではドイツのパンとハムに軍配が上がる。

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再び出発し、アップダウンのある道を進んだ。巡礼路は時折、「ローマ人の道」と呼ばれる古い古い道と重なった。2000年の歴史が僕の足元にあると思うと、現実主義な僕もやっぱりロマンティックな気持ちになる。

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山を越えると、気温が上がり、太陽がじりじりと照り付けてきて、僕のイメージするスペインらしい雰囲気になってきた。

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今日の歩行距離が26kmに達するかというところで、ようやく目的地のロルカという小さな町が見えてきた。

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アルベルゲにスペースがあるか尋ねると、25ユーロの個室が空いているという。少し考えた末にここで宿泊することに決めた(なにしろ2晩続けていびきに悩まされた後だもの!)。宿のなかはカラフルで、気持ちのよい風が吹き込んでくる。壁は旅人たちが書いたサインやメッセージで埋め尽くされている。

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洗濯をした後、風邪がひどくなってきたのを感じたので、僕はすぐにベッドに入ることにした。

夜の7時まで妻も一緒に昼寝をして、いったん起きて食事を取りに階下のレストランに降りていった。今日、なんどかその姿を見かけたふたりのアメリカ人の女性が同じテーブルに加わって、僕たちが食べていた「ピルグリムメニュー」と同じものを注文した。

ピルグリムメニューというのは、巡礼路沿いの宿やバルに準備されている、旅人専用のセットメニューのことだ。前菜、メイン、デザート、ときにはまるまるボトル1本のワインがついて10€前後ととてもお手頃で、味や栄養バランスはともかくカロリーはたっぷりと摂れ、この道を歩く人にとって強い味方だ。

この宿のピルグリムメニューは、トマトソースがかかったマカロニと、フライドポテトが添えられたチキン。それにアイスクリームだった。「最高に美味しい」とは言えない食事だったけど(2人の女性も微妙な表情をしていた)、僕たちはとても空腹だったのでおしゃべりを楽しみながら全部を平らげた。

しかし、スペインに来ればさぞかし美味しいタパスやピンチョスを食べられるかと期待していたのに、いまのところ見る影もない。巡礼路を歩きながら美味しいスペイン料理を楽しむ......なんてのはちょっと難しいみたいだ。

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妻は少しあたりを見て回ると言って出かけていった。よかった、彼女の足も今日はだいぶいいらしい。町はなにやらお祭りの最中だったようで、賑やかなライブミュージックの音がここまで届いていたが、僕は疲れていたし、風邪が僕をベッドに押しやった。

すっかり寝入っていたが、妻が途中でベッドに入ってきたのはわかった。外の音楽はいつまでたっても止まず、1時に一度目が覚めてしまった(ので、この日記を書いている)。

やれやれ、今度は音楽か!でも、いびきよりはずっといい。咳が出てきた。もう眠らなきゃ......おやすみ。

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※この手記は、妻で編集者の溝口シュテルツ真帆が翻訳したものです。妻の手記はnoteで公開しています。