アミューズミュージアムのBORO展を眺める辰巳清館長=朝日新聞社撮影
縫い合わせて、代々使い続けられてきたボロ布。
これが「BORO」として2013年春夏のルイ・ヴィトンをはじめとした世界的コレクションに毎年なんらかの形で取り上げられているという。
極寒や厳しい暑さから体を守ってくれる布は、代々引き継がれていた。
着物を分解する時、布をとぎ汁につけておくと糸が抜けやすく再利用できる知恵を使ったり、一寸(三㌢)四方の布も家々でとりまとめられていたり、大事に使われた。
貧しい農村生活の中でも人々は、おしゃれの工夫をこらしてきた。
ちらりと見えるすそに凝った柄を縫い付けたり、固い麻布に木綿糸で無数の刺し縫いを着物全体にしたり。ぼろ布でも、人々の「技」を布の中に読み解くのもBOROの魅力だ。
「おしゃれをすることは生きること。生き物としての本能です」というのは日本でBOROなど布の展示をする東京・浅草にある「アミューズミュージアム」館長の辰巳清さん(47)だ。
「自分を少しでもよく見せて、自分の遺伝子を残していこう、という本能に近い」という。
同館は、青森生まれの民族学者田中忠三郎さんの衣服や民具などのコレクションを中心に展示。津軽・南部の刺し子着786点は国の重要有形民俗文化財に登録されている。
「本物のエコとは『人を愛する気持ち』 」 田中忠三郎著 (アミューズ エデュテインメント)から
青森では、麻布や木綿布を継ぎ足した敷布を「ボド」、あるいは「ボドコ」と呼んだ。稲藁や枯れ草の上にこれを
敷いて寝るという用途以外に、お産にも使われた。「ボド」の上に座ってする「座産」。人々は、羊水にまみれな
がら何代にも渡って大切にされる生命の布に、産まれ来る子供の力をと、願いを託す。
「あなたは決して独りではない。このボドのように家族の絆があなたをきっと守ってくれる。だからあなたもその絆を深めていってほしい」という思いがあるのではないか、と辰巳さん。ボロ布を通じて見えるのは、無名の人の手仕事が放つメッセージだ。
一つとして同じものはない美術性だけではなく、世界が注目するのもそこに理由がある。美術館には、著名な世界的デザイナーも訪れているという。
このぼろ布を世界のBOROと思わせるスタイリッシュな展示をするため、クラウドファンディングサイトA-portで資金を集めている。