いつもの買い物で「もしも」に備え レシートで学べる「防災100のコト」 事業化めざし、クラウドファンディングに挑戦

身近なレシートが、「もしも」への意識を変えてくれるかもしれない。
みまもりレシート
みまもりレシート
Asahi

スーパーやコンビニでの買い物やタクシーに乗る度にもらうレシート。多くの人が1日に何度も手にするレシートを防災に役立てようというのが、「みまもりレシート」だ。広告会社ステッチで働くメンバー6人が集まって考案したもので、クラウドファンディングで事業化を目指している。

みまもりレシートの裏には、さまざまな災害のシーン別に自分たちができる防災手段がプリントしてある。ビビッドな黄色と黒を使ったピクトグラムのイラストと文字で、わかりやすいデザインも特徴だ。キャッチコピーは「もしもの時に覚えトコ? 防災100のコト」。

例えば、地震のとき、百貨店・コンビニ・スーパーでは「商品落下に備えてバッグやかごで頭を守る」という内容を紹介。ほかにも、大雨・台風や武力攻撃・テロなど、さまざまな防災シチュエーションごとに、「こんなときにどうすればいいのか」が、ぱっと見てわかる。

「みまもりレシート」の裏。ピクトグラムのイラストと鮮やかな黄色が目を引く
「みまもりレシート」の裏。ピクトグラムのイラストと鮮やかな黄色が目を引く
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有志メンバー6人で立ち上げたプロジェクト

そもそものきっかけは、同社の三冨敬太さん(32)が2017年の夏に全日空(ANA)が運営する 「WonderFLY」のクリエイティブアワードの募集告知を目にしたことだった。防災をテーマにしたアイデアを募り、入選するとクラウドファンディングで事業化を目指せるという内容に興味を惹かれた。

「防災について自分なりに考えたいな、と思ってはいたのですが、なかなかきっかけがなく、取り組めていなかったので良い機会だと感じ、さっそく社内メールで有志メンバーを募集しました」(三冨さん)

三冨さんのほかに手を挙げたのが、大和田彩果さん(26)、坂本雄吾さん(36)、島川大輝さん(28)、中島健さん(34)、山根朋子さん(42)。いずれも同社で広告デザインや制作物を手がけるディレクターやデザイナーだ。「全員がリーダー、全員がデザイナー」を合言葉に、約1カ月で、アイデアを形にしたという。

仕事の合間に週1〜2回のミーティングを重ねて、プロジェクトを進めてきた
仕事の合間に週1〜2回のミーティングを重ねて、プロジェクトを進めてきた
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「普段はクライアント向けに仕事をしていますが、このプロジェクトは一から自分たちの思う通りに作り上げられるのが魅力でした。日頃、僕らも含めて防災にあまり関心のない人たちに、どうやったら浸透させられるか考えるのが楽しい」と島川さんは語る。

みまもりレシートのベースとなるアイデアを考えた島川さん
みまもりレシートのベースとなるアイデアを考えた島川さん
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持ち寄った50のアイデアから絞り込み

まず、最初のスタートは、「そもそも防災って何だろう?」というところから。ブレーンストーミングで「普段身につけているもの」と「災害で困ること」を洗い出し、各自が掛け合わせてアイデアを持ち寄った。被災時に鍵の先端を折って携帯の充電器や笛として使えるもの、使い捨てのメガネなど、50個ほどのアイデアがあがる中で、「実現可能性」「新規性」「共感性」「拡張性」などの観点から選んだのが、みまもりレシートだった。

「レシートの裏、という空いているスペースを使うというアイデアが面白いとみんなが感じたのも大きかったですね。そこにちょっとした防災の役立ち情報があれば、ついつい読んでしまうはず。僕は1日に10回くらいコンビニで買い物をするのですが、その度に何気なく読んでいれば、自然と頭に残ると思うんです」(三冨さん)。

もらったレシートをきっかけにして、親子や友人で防災について会話が弾む、ということもありそうだ。

広告会社の強みを活かし、チラシなどのデザインにもこだわった
広告会社の強みを活かし、チラシなどのデザインにもこだわった
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防災に関する100のアイデアは内閣府や官公庁の防災情報をもとに、三冨さんたちがシーン別に具体的な行動に落とし込んだ。子どもやお年寄りでもわかりやすいように、ピクトグラムのイラストのバリエーションにもこだわったという。

「見て楽しい絵になるように工夫したので、それぞれのイラストに愛着がありますね」(山根さん)

企業は採用することでCSRのアピールにも

一方で、みまもりレシートを採用する企業や店舗には、どんなメリットがあるのだろうか? 

「防災コンテンツを導入していることで、CSRに積極的な企業として社会にアピールできます。また、店頭に『みまもりレシート取扱店』というマークを制作する予定で、それを設置することで、興味を持った人が新規で来店することもあるかもしれません」と三冨さん。

店の常連客が普段からみまもりレシートの情報を目にしていれば、万が一、店内で被災したときにその知識が役立つかもしれない、ともいう。

実際に導入している店舗はまだ1ヶ所にすぎないが、採用企業の営業を担当する大和田さんによると、プレゼンテーションに対する店側の反応は上々のようだ。

「コンセプトや採用メリットに共感して、お試し無料なら導入してみてもいい、という声が多いですね」(大和田さん)。

写真左から大和田さん、中島さん、三冨さん。ミーティングでは賑やかに意見を交わす
写真左から大和田さん、中島さん、三冨さん。ミーティングでは賑やかに意見を交わす
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みまもりレシートから社会にもっとコミットを

実用化に向けた課題のひとつが価格。通常のレシート用感熱紙ロールは1個200円ほどだが、みまもりシートは750〜1000円と割高になる。企業が消耗品として継続的に使うにはコスト的なハードルが高い。

「企業、例えばコンビニと組んでコンビニ店内での防災に特化する、自治体とコラボしてその地域の防災事情に合わせたものをつくるなどのアレンジも考えていきたい」(坂本さん)。ほかにも、防災週間などのイベントでキャンペーンとして利用する、コストの安いトイレットペーパーやマスキングテープに応用するなどといったことも検討していきたいという。

クラウドファンディングの目標達成に向けて対策を練る坂本さん(左)と山根さん
クラウドファンディングの目標達成に向けて対策を練る坂本さん(左)と山根さん
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「商品コンセプトヘの手応えは感じているので、あとはどれだけ世の中に広げていけるか。みまもりレシートを通して、我々自身も、もっと社会にコミットして防災ヘの関心を高めていきたいですね」(中島さん)

身近なレシートという小さなきっかけが、わたしたちの「もしも」への意識を変えてくれるかもしれない。

みまもりレシートクラウドファウンディングは2月26日まで。詳細は、https://a-port.asahi.com/projects/mimamori/

(工藤千秋)

プロジェクトメンバーの6名。左から後列・中島さん、島川さん、三冨さん、坂本さん、前列・山根さん、大和田さん
プロジェクトメンバーの6名。左から後列・中島さん、島川さん、三冨さん、坂本さん、前列・山根さん、大和田さん
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「あなたの日常に防災をプラスする」をテーマに、A-portとWonderFLYが協力してアイデア防災グッズ8件のクラウドファンディングを実施中。A-portの特設ページは、https://a-port.asahi.com/partners/wonderfly/

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